政経講義52 パレスチナ問題をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ どんな対立構図になっているか
⑵ 対立が生じている背景
⑶ 現在起こっている問題

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

今回は時事的な話題でもあるパレスチナ問題について扱います。とはいえ、2023年度の共通テスト政経で出題された内容であり、入試対策としても基礎的な内容は抑えておきたいところです。実際に出題された問題は以下の通りです。

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なぜこのような対立が生まれているのか、背景を知ることによって今のニュースが理解できるようになるはずです。話せば1つの記事にまとめられない量になってしまうので、ここではできるだけシンプルに、わかりやすく説明していきますね。詳しい内容が知りたい場合は、別のサイトを検索していくとさまざまな記事が掲載されています。

▼パレスチナ問題とは

どんな対立が起こっている?

まず一言で対立構図を説明すると、「イスラエルVSパレスチナ」という争い。エルサレムという都市を中心に、エジプト付近にある領土を争っているが、領土問題だけの単純な話ではありません。そこには数千年の歴史や宗教、民族の対立も含まれていることから、根強く複雑な争いとなっています。

上の図にあるように、イスラエルを建国したのはユダヤ人であり、基盤となる宗教はユダヤ教。それに対してパレスチナに住んでいる人はアラブ人であり、基盤となる宗教はイスラム教となります。まずは人種も宗教も異なるという関係性を頭に入れておきましょう。

対立の歴史

では、対立に至るまでの歴史をぎゅっとまとめていきます。遡ること2000年前…そもそも、元々この地に住んでいたユダヤ人でした。しかし、2世紀ごろにローマ帝国によって追放されたユダヤ人は、各地に離散してしまうことになります。空いた地域にパレスチナ人が根付き、パレスチナ人による国家形成を目指していきます

各地に離散したユダヤ人は、特にヨーロッパ地域を中心に差別被害を受けていきます。イエス・キリストを処刑した人たちと考えられたユダヤ人は、キリスト教文化が根付くヨーロッパ人には受入れられなかったのでしょう。最も有名な迫害と言えば、ドイツ・ナチスによる大虐殺が有名ですが、それ以前から迫害され続けた歴史をもっていたんです。

そんなユダヤ人が、「迫害から逃れるためにも、自分たちの国家を建設したい!」という運動を起こします。(シオニズム運動) 20世紀初めごろから本格化し、第二次世界大戦後の1947年に新しい国家建設を国連が認めることになりました。その場所こそ、もともとユダヤ人が暮らしていたパレスチナ地域であったわけです。

領土分割の推移 (画像:NHK「就活ニュースゼミ」参照)

国連は上の図(左側)のような分割案を提示し、パレスチナ地域をパレスチナ人とイスラエル人で分けて住んでいきましょうと提案しました。これが可決されたのが1947年、翌年の1948年イスラエルが誕生します。ユダヤ人にとっては長年待ちわびた自国誕生の瞬間でした。

しかし、これで一件落着…とはいかないですね。パレスチナ人の気持ちを考えてみてください。彼らは長年この場所に住んできたわけで、それを急に半分以上の土地が奪われ「仲良く分けましょう」なんて言われても、納得いく訳がありません。私たちで例えれば、「日本には元々○○人が住んでいたので、明日から本州全土が○○の領土になります」と言われているようなものです。つまり、イスラエル誕生の代わりに、今度はパレスチナ人が祖国を追われることになりました。

アラブ諸国ではイスラエル建国に対する不満が高まり、建国翌日からイスラエルへ攻め込みます。これを第1次中東戦争といいます。この戦争は第4次まで続くことになりました。

▼パレスチナ問題の激化

対立の背景は理解していただけたでしょうか。この両国の争いがなぜここまで根強く、現在まで続いているかについて、もう少しだけ説明を加えていきます。

中東戦争

対立の構図はイスラエルVSパレスチナという形でしたね。宗教の違いや人種の違い、加えて歴史的背景も相まっている戦いとはいえ、小さな地域での争いではあります。なぜここまで世界を巻き込んでいるのかというと、それぞれの国のバックにつく勢力が関わってきます。

中東戦争の対立

実はユダヤ人はアメリカと関係が深い人種です。祖国を追われたユダヤ人の中には、アメリカに逃れる人も多くいました。そこで彼らは、人がやりたがらない仕事に励んでいきます。当時キリスト教で「悪い仕事」と考えられた金融業に尽力していくと、事業が成功し、富を得るユダヤ人が増加しました。そして、ユダヤ人の資金力がアメリカ社会で大きな影響力をもつようになったのです。

現在においても、アメリカ金融業界の主要人物、大企業のトップなどで活躍するアメリカ系ユダヤ人は数多く存在します。皆さんの知っている人物で言えば、ジュラシックパークやインディージョーンズを手掛けた映画監督スティーブン・スピルバーグや、Googleの創業者ラリー・ペイジなどが有名です。

つまり、世界屈指の大国アメリカはイスラエル寄りの立場をとり、アラブ系民族やイスラ―ム教関係の国々はパレスチナ側の立場をとります。世界屈指の戦力を誇るアメリカからの支援も受け、イスラエルはパレスチナとの闘いに勝利を重ねていきました。

領土分割の推移 (画像:NHK「就活ニュースゼミ」参照)

こうして、当初半々に分けられていた領土は、現在90%がイスラエル自治・10%がパレスチナ自治という配分になっています。

和平へ向けての動き

多くの命が失われる戦いを停止し、和平の道を目指す動きもありました。歴史的な動きとしては、1993年にオスロ合意が調印され、それぞれがそれぞれの自治を相互に認め合い、イスラエル軍の撤退などを約束しました。この時から、ヨルダン川西岸地区やガザ地区は「パレスチナ暫定自治区」と呼ばれるようになり、パレスチナ人による統治が認められ、いずれパレスチナの独立を果たす場所という認識になりました。

しかし、長年和平交渉を続けた両国も、結局はまとまらず、イスラエルは入植地(パレスチナ側の土地を占領下に置く地域)を広げました。ヨルダン川西岸には分離壁を建設し、パレスチナ人の孤立を生むことになります。それに対して、パレスチナの過激派はテロを再開しただけでなく、和平交渉を目指す立場と、解放を訴え戦う立場とでパレスチナ内でも分裂が進むことになりました。仲間割れした状態では、和平交渉も進む訳なく、現在まで未解決状態…ということになります。

パレスチナ問題が世界に与える影響

1991年にイラクに対抗して多くの国連加盟国が参戦した湾岸戦争では、イラクが突然「アラブの正義のためにやっている」とパレスチナ問題を持ち出した経緯がありました。また、2001年のアメリカ同時多発テロの際にも、首謀者がパレスチナ問題の解決を目的の1つに掲げたといいます。近年のテロ事件や地域紛争の中には、パレスチナ問題が背景にあるものが少なくないということです。さらに大きな戦いを引き起こすきっかけになる危険は常に存在し、私たち日本も影響を受ける可能性は十分にあります。他人事ではありません。

▼パレスチナ問題の現在

パレスチナ難民

この一連の争いにより、多くのパレスチナの人々が祖国を追われました。現在ガザ地区には狭い領土に多くのパレスチナ人が暮らしています。空爆を受け、水道や電気を破壊されることもあれば、分断された領土で、十分な食料や居住環境が与えられないことも日常です。国連による援助を始め、国際的な援助をもってしても最低限の生活ができていない状態です。

そんなガザ地区を支配しているのが、ハマスと呼ばれる組織。パレスチナ解放を目的としてイスラエルとの武装闘争を繰り広げることもあります。

ガザ地区での軍事衝突

時事的な内容としても抑えて欲しい大規模な軍事衝突が、2023年に発生しました。同年10月7日に、ハマスがイスラエルを奇襲攻撃。イスラエル側も激しい空爆で反撃し、1週間で4000人規模の死者を出す戦いとなりました。

この規模の戦争は50年前の第4次中東戦争以来のことであり、国際的にも大きな衝撃が広がりました。11月23日から4日間の停戦合意がなされ、人質の解放を認めているものの、お互いの関係回復には程遠い状況となっています。被害者の多くは女性や子どもとなっており、今ガザ地区に置かれている難民たちをどのように救っていくのか、両国の和平交渉をどのように進展させていくかを、改めて検討していくことが求められています。

▼まとめ

この問題は簡単に解決できるものではありません。イスラエルからしてみれば、長年欲しくて仕方なかった自分たちの国を、絶対に失いたくないという思いや、過去のような迫害を絶対に受けたくない強い思いがあるでしょう。パレスチナの人々にとっても、祖国を追われ、厳しい生活を余儀なくされる人や、空爆によって家族を失った人がイスラエルに対して憎しみを抱くのは当然のことです。しかし、このまま争いを続けることで生まれるものは憎しみしかありません。

日本はどちらの立場にも属さず、両国の歴史にとらわれることもありません。また、いい意味で宗教に寛大な国でもあり、中立な思考ができる稀な存在です。遠い国での出来事ではありますが、「自分の家族が戦争で失われたら?」「ガザ地区で生活することになったら?」と自分のことのように想像してみてください。どうしたら解決できるかを少しでも考えてみてください。私にできることは微力ですが、この問題について考える人を増やし、機会を増やし、両国の共生のために行動を起こす人を少しでも増やすことが、教育者としての使命と考えています。読んでいただきありがとうございました。

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