問1 知をめぐるソクラテスの思想についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 対話を通して,相手が真なる知を探求することを手助けする問答法を用い,それを助産術とも呼んだ。
② 真理を探求したソフィストやその信奉者たちに議論を挑み,知の真偽を判断する基準は相対的なものであるとした。
③ まず実践を通して徳を身に付けることによって,次第に徳とは何かを知ることができるとする知行合一を説いた。
④ 知の探求は無知の自覚から始まるが,無知を自覚した者は誰でも,その状態を脱して善美の知を獲得できるとした。
問2 よき生き方を追求したソクラテスは,自らに下された死刑判決を不当としながらも,脱獄の勧めを拒み,国家の法に従って刑を受け入れた。彼の考えとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 国家は,理性に従って人々が相互に結んだ社会契約のうえに成立している。それゆえ,国家の不当な決定にも従うことが市民のよき生き方である。
② たとえ判決が不当であるとしても,脱獄して国家に対し不正を働いてはならない。不正は,それをなす者自身にとって例外なく悪だからである。
③ 脱獄して不正な者と国家にみなされれば,ただ生きても,よく生きることはできない。人々に正しいと思われることが正義であり,善だからである。
④ 悪いことだと知りつつ脱獄するのは,国家に害をなす行為である。だが,人間の幸福にとって最も重要なのは,国家に配慮して生きることである。
問3 自らの知をめぐって,ソクラテスがどう考えていたかの説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 自分に何一つ知恵はないが,人間にとって最善のことだけは知っている,と自覚していた。
② 自分が知者だと思い上がらないために,知っていても知らないふりをするべきだと考えていた。
③ 自分は大切なことについて知らないので,そのとおりに,知らないと自覚していた。
④ 知らないと知っている以上,自分はすべてを知っていることになると考えていた。
問4 ソクラテスの人生は,彼の友人から伝え聞いたデルフォイの神託によって決定づけられたと言われている。その神託の内容として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① ただ生きるのではなく善く生きよ。
② 徳は知にほかならない。
③ おのれの無知を自覚せよ。
④ ソクラテス以上の知者はいない。
問5 ソフィストに関する記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 謝礼金をとる職業的教師として,青年たちに弁論術や一般教養を教えた。
② 社会制度や法律の由来をノモスとピュシスの対比によって説明した。
③ 相手との論争に打ち勝つことを目的とし,論弁を用いるようになった。
④ 原子が虚空の中を運動し結合することで万物が形成されると考えた。
問6 ソクラテスは自分の問答を産婆術(助産術)と呼んだ。それを説明する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 産婆は妊婦の出産までの過程を熟知しており,妊婦に適切な出産法を教えることができる。対話相手は無知であるが,問答によってソクラテスから真理を教授されることにより,真偽を判断することができる。
② 産婆は高齢のため出産はできないが,妊婦の状態を見極めて,その赤子を取り上げることができる。ソクラテスは無知であるが,問答によって真偽を吟味しながら,対話相手自らの考えを引き出すことができる。
③ 産婆は高齢のため身ごもることはできず,出産を助けることだけができる。ソクラテスは無知であるが,問答によって対話相手の考えを引き出す手助けを学ぶことを通じて,無知から解放されるようになる。
④ 産婆の助けがないと妊婦の出産は困難であり,出産は両者の協同により成功する。ソクラテスも対話相手も無知であるが,問答によってお互いの不足を補いながら探究することにより,真理に到達できる。
問7 ソクラテスの死に関するプラトンの記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① ソクラテスは,青年を堕落させたという告発を恥ずべきことと考え,自己の名誉を重んじたために,毒杯を仰いだ。
② ソクラテスは,無実の罪で自分を死に追いやろうとするポリスの現状を恥ずかしく思い,抗議のために毒杯を仰いだ。
③ ソクラテスは,国法を破ることは不正であり,不正を犯すことは恥ずべきことと考えて毒杯を仰いだ。
④ ソクラテスは,友人クリトンまでが「無実の罪で刑に服することは恥だ」と脱獄をせまったことに失望して毒杯を仰いだ。
問8 ソクラテスに関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① デルフォイの神託がソクラテス以上の知者はいないと告げたことを誇りとし,問答によって人々に真理そのものを説いた。
② 神霊(ダイモン)を導入して青年たちを新しい宗教に引き込み,彼らを堕落させたと告発され,アテネを追放された。
③ 自らを「無知の知」に基づく知者と公言し,アテネにアカデメイアという学校を創設し,多くの弟子たちを教えた。
④ 「汝(なんじ)自身を知れ」というデルフォイ神殿の標語のもとに,問答法によって人々とともに知の探究に努めた。
問9 古代ギリシャの哲学者の一人としてソクラテスが挙げられるが,その思想内容として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人間はポリス的動物という本性(ほんせい)に従って社会生活を営む存在であり,正義と友愛の徳もポリスを離れては実現しないと考えた。
② 対話的方法を通して自己の魂のあり方を吟味していくことが,「よく生きること」の根本であると主張した。
③ 自然と調和して生きることを理想とし,自然を貫く法則性と一致するように意志を働かせることによって魂の調和が得られると説いた。
④ 富や権力や名誉などの外面的なものや社会規範といったものを軽蔑(けいべつ)し,自然に与えられたものだけで満足して生きる生活を理想とした。
問10 相対主義とは異なる立場に立ったソクラテスについて述べた文として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 最大多数の最大幸福こそ究極の目的であり,善悪の基準であると考え,万人が幸福を享受できる社会を実現すべきだと説いた。
② 自己の魂ができるだけ善くなるように配慮すべきだと説き,勇気・節制・正義などの徳の本質について,それらが何であるかを探究した。
③ 徳とは,行為や感情にかか関わる魂の中庸の状態であると説き,それは適正な行為を習慣づけることで得られるとした。
④ 人間の本性は善であるという性善説を唱え,武力による政治を否定して,道徳に基づいて統治する政治を理想とした。
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