政経講義64 円高・円安の演習攻略

政経

本単元のポイント
⑴円高円安の要因を問うパターン
⑵円高円安の影響を問うパターン

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

▼円高円安の出題パターン

前回紹介(「政経講義63円高円安の基礎」)した出題パターン2つを、改めて整理しておきましょう。

➀は要因を問うもの。例えば、「日本の貿易収支が大幅に黒字になった」「海外からの投資額が増加した」という事項が、円高・円安どちらに作用するのかを考える問題が主流となります。②は影響を問うもので、「円高になった場合、国内への旅行客はどうなるか」「円安になった場合、輸入品の値段はどうなるか」という問題が主流となります。

それぞれで解き方・考え方が異なるため、パターンごとに解き方を解説していきます。

▼円高問題パターン①「要因」を問う

「Aということが発生した」→「円高になる」という流れで、Aの事柄を選択肢で選ぶパターンがよく出る。 2009年追試のセンター試験より、実際の出題例を見てみよう。

2009年追試 センター政経

ある国の為替レートの下落という文は、ある国を日本に言い換えれば「円のレートが下がる」=「円安」となる。つまり、この4つの選択肢から「円安」になるものを選べばよいということ。

では、早速どのように解けばいいかということについて説明する。円高・円安どちらなのかを考える際には、「円の需要が上がったかどうか」という視点で考える。市場の需要供給と同じで、世界中で日本円に交換したいという人が増えれば、円の価値は上がる(=円高)し、日本円より別のお金に換えたい人が増えれば円安となる。

今回の問題は円安になるものなので、円の需要が低下するものを選べばよい。

まず、わかりやすいものから解説していくと、③の政府による外国通貨の売却という条件。これは日本円に置き換えれば、日本政府が持っている外国通貨を売って、自国通貨を手にするということ。日本円が多く手に入ることは、円の需要が高まることを意味し、円高へ動くことに繋がる。

②の経常収支の黒字はよく出るので注意。貿易収支の黒字も同様の意味を持つ。経常収支が黒字になるということは、海外とのやり取りで、出ていくお金より入ってくるお金が多いということ。つまり、図のように、ドルで支払う金額よりも、円で入ってくるお金の方が多いという関係が生まれる。円で入ってくるお金が多くなるということは、円の需要が高い=円高へ動くと判断する。

➀金利とは、お金を預けた際に返ってくる貸借料のこと。つまりこれが高いほど、返ってくる資金が増える。すなわち、金利を高くすると「その通貨でお金を預けたい」「その通貨でお金を投資したい」という人が増える。日本円の需要が高まることに繋がり、円の価値は上がる(=円高)と判断する。

④は需要のバランスとは少し違って、根本的な理解で判断する問題になる。物価が上がる状態をインフレーションというが、これが進むとどうなるか想像してみよう。「あんぱんが1000円です!」「ジュースが2500円です!」「お弁当が6000円!」という社会になったら…。今まで買えたものが同じお金で買えなくなる。つまり、自分が持っている100円玉の価値は、相対的に下がってしまうことになる。円の価値が下がる=円安となる。

▼円高問題パターン②「影響」を問う

パターン②は、「円高の進行」→「Aについてどうなるか」という流れで、円高の影響であるAの事柄を選択肢で選ぶもの。2007年本試のセンター試験より、実際の出題例を見てみよう。

このような影響を問う場合は、実際に円高になった場合を想定して、選択肢が合致するかどうかを考える。前回紹介した表を活用しながら、具体例でイメージすることがポイント!

今回の問題は、「円高の進行によって」という条件なので、円高方向の場合を想定する。

選択肢➀海外へ投資する際にコストが低下した選択肢④海外からの投資が増加した

このパターンは、とにかく具体例を考える!例えば、日本がアメリカに対し、100ドルの株を購入するとしよう。右側のレートだとこの株は1万円で投資できる。しかし、円高が進んだ左側のレートでは、5000円あれば投資できる。このように、円高が進むと海外への投資コストが下がるという文章は正しく、正解は①となる。

逆に考えれば、海外からの投資にはコストが上がることになるため、海外からの投資は減少すると考えられ、選択肢④は誤りとなる。

選択肢②海外からの輸入が減少した

例えば、アメリカから日本へ1ドルのリンゴを輸入するとする。右側では100円で入ってくることに対し、円高が進んだ左側のレートでは、50円で入ってくる。このように、円高が進むと輸入は安くすることができ、むしろ増加すると考える。

選択肢③海外へ輸出する際にコストが低下した

②とは逆に、日本からアメリカに対し、1万円の機械を輸出するとしよう。右側のレートだと100ドルになるが、円高が進んだ左側のレートでは200ドルになる。つまり、円高が進むと海外への輸出コストは上がることになり、この文は誤り。

その他の例題➀海外からの旅行客は増加する?

1ドルを握りしめた外国人旅行客をイメージしよう。右側のレートでは、日本に旅行に来ると100円分の買い物ができる。しかし、円高が進んだ左側のレートでは、50円分の買い物しかできない。つまり、円高が進むと、日本への旅行客にとっては不利な状況になってしまうため、海外からの旅行客は減少すると考えられる。

▼ある模試からの抜粋問題

問 円の外国為替相場の変動要因やその変動がもたらす影響に関わる記述として、適当なものを選べ。

①アメリカに比べて日本の金利が相対的に高くなった場合、他の条件が変わらなければ、円を売ってドルを買う動きが強まるため、円安・ドル高の要因となる。
②アメリカ向けの日本の輸出拡大は、他の条件が変わらなければ、ドルを売って円を買う動きを強めるため、円高ドル安の要因となる。
③円高の進行は、海外から輸入する原材料の円で表示した価格を上昇させるため、日本の物価水準を高める要因となる。
④円高の進行は、海外で購入する財やサービスの円で表示した価格を上昇させるため、日本人の海外旅行費用を高める要因となる。

★➀②→要因を考えるパターン、③④→影響を考えるパターン

➀金利が高い方が、お金を預ける方は得をする。つまり、アメリカより日本の金利が高い場合、日本のお金で預けた方が得と思う人が、ドルを円に換えることになる!つまり、円の需要が高まるから、“円高・ドル安になる” = ①は誤

※2022年~23年に円安ドル高が急激に進行したのは、まさにこの問題文の日本とアメリカを逆にしたような現象が起きている!

②日本の米国向け輸出が拡大すれば、アメリカから日本へ支払われる代金が増えるということ。つまり、ドルを日本円に換えて支払うため、円の需要が高まることになり“円高・ドル安になる” = ②は正

③④はどちらも「円高が進行したら…」という内容なので、円高の部分を抜き出して具体例をイメージする。

③海外から輸入する原材料の価格を上昇させる?

実際に10ドルの小麦を輸入するとしよう。円高になる前は1000円で輸入ができるのに対し、円高が進んだ左側では500円で輸入ができる。つまり、円の表示価格は下がる。輸入品が安くなると、つられて国内の物価にも影響を与えて、物価水準が下がることになる。= ③は誤

※2022年~23年に円安が急激に進行した結果、逆に輸入品は高くなった。原油や食材などが高騰した結果、つられて他の物価も上がっている。

④海外で購入する財の価格は上がる?日本人の旅行費用が高くなる?

実際に10ドルのお土産を買うとしよう。円高になる前は1000円で買えるのに対し、円高が進んだ左側では500円で買える。つまり、海外で購入する円の表示価格は下がる。海外でモノが安く買えるとなると、旅行も得になるため、旅行費用は低くなる。=④は誤

▼まとめ

以上が、円高円安の演習攻略ポイントです。この投稿を理解したうえで、どんどん演習にチャレンジしてみましょう。過去問演習に集めてありますので、是非活用してください。

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