政経講義37 日本経済史をわかりやすく⑶

政経

本単元のポイント
⑴ 失われた10年から構造改革への流れ
⑵ 2000年代以降の経済イベント

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

前回は高度経済成長の終焉~バブル崩壊までをまとめましたが(参照:政経講義36日本経済史⑵)今回はバブル崩壊後の経済史をまとめていきます。年号としては1990年代~現在といったところ。暗黒時代なので気分が重くなりますが、入試では頻出なのでポイントを抑えていきましょう。

実質経済成長率のグラフ

▼バブル崩壊後の日本

バブル崩壊後、日本は長期的な経済低迷に陥る。不況と重なるように金融機関の破綻が発生したことが最も大きな要因。銀行は倒産を避けるために貸し出しに消極的となり(貸し渋り)、社会全体のお金の回りは停滞する。銀行からの融資が得られない企業は、業績不振に陥り倒産する。企業が倒産すれば銀行への借金は返せない、といった悪循環が続くことになった。そんな1990年代は経済的な成長も乏しく、「失われた10年」と呼ばれている。

日本経済史最悪クラスの暗黒期を経て、政府や日銀、企業は大きな転換を迫られた。

例えば政府は、銀行へ公的資金を注入し、日本銀行はゼロ金利政策や量的緩和政策などの「異次元の金融緩和政策」を実施した。また、企業は派遣労働者などの非正規雇用の増加や、終身雇用制・年功序列賃金の崩壊など、これまでの伝統的な雇用制度を変化させて経営の合理化を進めた。

しかし、93年には自民党政権が交代したり、97年には消費税増税(3%→5%)による不況、同年にタイのバーツ暴落を発端とするアジア通貨危機が発生するなど、不安定な経済状況は続いた。

▼2000年代の日本経済史

・小泉内閣期(2001~06年)

バブル崩壊のショックから立ち直ろうとしていた2000年代、経済活性化を掲げた小泉純一郎内閣(2001~06)が誕生し、大きな改革に着手する。

小さな政府を目指す新自由主義的な政策をとった小泉首相は、民営化と規制緩和を軸に大規模な構造改革を実施した。その中でも「郵政民営化」は小泉内閣の代名詞と言ってもいい改革。簡単に内容も整理しておきましょう。

郵政民営化とは

その甲斐あって景気は回復傾向に向かい、2002年~08年は「いなざみ景気」と呼ばれる景気拡大期となったが、これによる雇用者賃金への還元はあまり進まなかった。国民にとって実感の少ない好景気であったといえる。また、改革により労働条件の悪化や所得格差の拡大が問題となり、改革の負の側面と言われている。

・リーマンショック(2008~09年)

不況から立ち直りつつあった2000年代後半、世界に衝撃が走る。アメリカの大手投資銀行グループであったリーマンブラザーズが破綻し、世界各国で株価が大暴落した。アメリカとの関りが強い日本も例外ではなく、日経平均株価は7000円台にまで落ち込んだ。これを世界金融危機やリーマンショックという。日本を始め、G7やEU諸国といった先進国は特に強い影響を受けたため、経済が正常化するまでに時間がかかった。

・東日本大震災(2011年)

近年の日本経済を語る上で、欠かせない出来事が東日本大震災である。地震大国である日本では多くの大地震が起こっているが、この地震の被害が圧倒的に史上最悪であったことを知っておいて欲しい。津波によるインフラの大規模な崩壊、原発事故による電力・エネルギー不足問題など、経済的なダメージが非常に大きかった。

グラフの読み取りなどでもキーポイントとして扱われることが多いため、抑えておくべきポイントをいくつか紹介しておく。

原子力発電が0に!…発電の比率を分析するグラフ問題などで、原子力発電が0%になっているものがあればこの時代。原発事故により日本全国の原子力発電が停止した。安全性の確認をした後、2015年頃より少しずつ再稼働している。
➁深刻な貿易赤字!…日本は輸出大国であり、高度経済成長後は常に貿易収支が黒字であった。しかし、2011~15年頃に貿易赤字を記録しており、これも震災の影響。火力発電に必要な石油・石炭の輸入がかさんだことが要因。※ちなみに、2021年や22年も過去最悪レベルの貿易赤字を記録している。(原油高騰や円安の影響)

・アベノミクス(2012年~2020年)

史上最長(2期の合計で)の首相在任記録をもつ安倍晋三は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて経済政策を展開した。これをアベノミクスという。

2012年から実施したものを「三本の矢」、2015年から実施したものを「新三本の矢」という。内容は以下の図にまとめたものを参考にしてください。

アベノミクス(三本の矢)
アベノミクス(新三本の矢)

・現代の経済問題

安倍首相の長期政権を経て、菅・岸田とバトンを繋いで現在に至る(2023年8月)が、経済面での評価は決して高いと言えない。2019年頃からのコロナウイルス流行によるダメージ(生産停滞、外国人訪日客の激減など)や、2022年頃からの急激な円安進行による物価高騰など、難しい状況での政権運営が行われているが、度重なる増税や物価高騰に見合わない賃金が、国民へ不安をもたらしている。

日経平均株価がバブル期の水準まで戻ったり、最低賃金が上昇し平均で1000円を超えるなど、景気回復を思わせるニュースはあるが、いかに国民の実生活へ還元できるかが今後の課題となる。

▼まとめ

90年代はバブル崩壊からの暗黒期、00年代は小泉内閣による改革期、10年代はリーマンショックと東日本大震災からの復興、20年代はコロナからの脱出と、ざっくりイメージを持っておきましょう。時事的な内容も含むため、小論文や現代の諸課題の単元でも必要な知識となります。

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