政経講義45 国際社会の成立をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 国際社会が成立した背景
⑵ 主要な条約と日本の批准状況

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

今回からは国際分野の解説になります。まずはそもそも国際社会がどのように成立したか、という話から。また各国の繋がりによって成立した条約や国際機関についても解説していきます。意外とよく出る分野でもあるので、丁寧に理解していきたいですね。

▼国際社会の誕生

ウェストファリア条約(1648)

現在のように各国が自立し、国家間で繋がりが生まれたのはいつなのでしょうか。いわゆる国際社会の始まりは、ウェストファリア条約(1648)がきっかけといわれている。三十年戦争の終結の際に結ばれた講和条約により、スイスやオランダの主権確立が約束された。それまでローマ帝国の支配下に過ぎなかった各地域が、それぞれ平等な主権をもつようになっていった。

国際社会の成立

この頃から国際社会という概念が誕生し、現在では200ほどの主権国家が生まれている。

国家の要素

では、そもそも国家とは何か?という話を少ししましょう。友達同士で「新しい国を作ろうぜ!」と盛り上がり、俺たちのハッピー帝国を建国しました!なんて中二病丸出しのグループがいたとしましょう。その集団は国家として認められるでしょうか?…当然答えはNOですよね。では何が足りないのか説明できるでしょうか?人がいて、同じ思いを抱き、活動する場所もある。確かに規模は小さいけれど、関係ないはず。なぜ国家として存在できないのだろうか?

ここで知っておいて欲しいのが、国家の3要素。国家に必要なものは「国民・領域・主権」の3点である。つまり、人がいて、土地があったとしても、最後の「主権」、これが国家には必要不可欠となる。主権と一言で言っても、その中に3つの意味があるのでしっかり覚えておきましょう。

POINT!主権の概念(ボーダン『国家論』)
⑴国家権力そのもの…立法・行政・司法などを統治する権限
⑵権力の最高独立性…国内において最高で、対外的には独立する権限
⑶国政の最高決定権…政治の最高決定権

これらを持たない国家は秩序が維持できない。先ほどのハッピー帝国を例に挙げれば、いくら本人たちが主張しようと対外的に独立しなければならない。元の国から独立した領域や政治権限も必要になる。これらが国際社会から認められなければ、国家として存在できないのである。

現実世界でも独立を目指す地域は多くあるが、国際社会から認めてもらえず対外的な独立を達成していないパターンや、元の国による統治から自立することができず⑴や⑶の権限をもつことが出来ていないパターンがある。

この辺りの主な例が中国の台湾。正式名称は中華民国といい、事実上独立した国家として活動しているものの、中国やその他の国が頑なに独立を認めないため、今でも中国の一部という扱いとなっている。

領域の考え方

領域の考え方を細かく問う問題も過去には出題されている。以下の図を参考に覚えておきましょう。間違えやすいのは領海と排他的経済水域(EEZ)の違い。領海は基線から12海里の距離で、主権が及ぶ範囲。排他的経済水域(EEZ)は基線から200海里の距離で、資源の管理や海洋環境の研究などを優先的に行える範囲となる。EEZは航行自由であり、日本のEEZ内に外国の船が入ることもあり得る。

海上保安庁HPより:領海とEEZ

日本は島国であり、このEEZの範囲が非常に広い。国土面積は38万キロ平方メートルで世界60位に過ぎないが、領海やEEZを含めた海洋面積は447万キロ平方メートルで世界6位の広さとなる。

韓国や中国と領土問題で争っている要因も、このEEZが大きい。その島がどちらの領土かによって、その周りの海の資源がどちらのものかが変わってくる。貴重な資源を失いたくない思いからか、それぞれが所有権を譲らない現状がある。

▼国際法の登場

グロチウス~国際法の父~

社会が形成されたら、当然ルールが必要ということになる。国際法について提唱したグロチウスも入試では頻出なので、気を付けて覚えておきたい。

グロチウスはオランダの外交官であり、三十年戦争の時代に生きた人物である。戦争の惨禍を少しでも緩和するために国家が従うべきルールがあると説いた。この後、近代国際法が発展したこともあり、彼は「国際法の父」と呼ばれるのである。彼の著した『戦争と平和の法』についても出題されることはあるため、頭の片隅には入れておきましょう!

条約について

国際法の中でも、条約についての内容は入試でも頻出となる。不戦条約(1928)や人種差別撤廃条約(1965)、世界遺産条約(1972)など、挙げ始めたらきりがないですが、日本が批准していない主な条約は確実に抑えておきましょう。

日本が批准していない条約

ジェノサイド条約は集団殺害の防止・処罰に関する条約。もちろん日本が集団殺害を正当化して、批准していないわけではない。理由は別のところにある。この条約に加盟した場合、犯罪者を止めるための行動や、犯罪者を処罰するときに武力行使が必要になるリスクがある。日本は平和主義を掲げ、自衛のための武力行使しかしない立場をとっている国である。この条約が守れない可能性があるとして、未批准となっている。

また、死刑廃止条約については、そもそも日本が死刑を存続する立場をとっているため未批准。このように、条約は必ず加入しなければならない訳ではなく、各国の事情や文化に合わせて判断されている。

+α 国際人権規約の未批准項目
1966年に採択された国際人権規約も、日本は全て批准しているわけではない社会権規約であるA規約のうち「公務員のストライキ権」「公休日の給与保障」「高校大学の無償化」の3点は留保したことを覚えておきましょう。(2012年に高校大学の無償化の実現に向けて、留保が撤回されている)

▼まとめ

以上が国際社会ついてのポイントになります。別枠でまとめた「主権の三つの意味」「国際人権規約の未批准項目」などは、細かい内容ですが入試でも頻出となります。取りこぼしが無いようにしましょう。読んでいただきありがとうございました。

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