公共授業ネタ07 桃太郎から学ぶメディアリテラシー

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題に対応できる授業を考えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なのでできるだけ新たな挑戦を組み込んでいきたいとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、メディアリテラシーの授業で実施しました。今回は授業プリントの作成はありません。導入として行った作業を紹介します。

私達が生きる情報社会では、多様な情報が溢れ、誰もがそれを簡単に発信し簡単に享受することができます。ネット上では虚偽や不確かな情報が投稿されたり、それらがSNSによって一気に拡散することも日常茶飯事となりました。狭い視野で思考が固まることなく、冷静に物事を見れる生徒に育って欲しいと思い、丁寧に話をすることにしました。虚偽と見抜く力を身につけ、メディアリテラシーを高めてもらいたいものです。参考になれば幸いです。

作業の流れ

(ⅰ)桃太郎の出来事を記事のタイトルにするなら?

今回の目標は「いかに自分たちが断面的な見方をしているか」を気づかせることにあります。誰もが知っている「桃太郎」を題材とし、簡単に新聞記事のタイトルを考えさせる作業を行いました。一応あらすじを提示して、この戦いの翌日のタイトルを考えるとしたら…?と発問していきます。

桃太郎のあらすじ

素直に考えていけば「チーム桃太郎が鬼を討伐!」「勇敢な戦士たちが村を守る!」「桃太郎が強敵相手に大金星!」などと、桃太郎を称える内容になるでしょう。ある程度意見が出たところで、「これ…本当に正しいかな?」と問いかけてみます。

「たくさんの鬼が襲い掛かってきた」のに一人の人間が勝ってしまうということは、もしかして鬼って弱い存在だったのでは…?と考えられませんか?大勢相手に勝つとなると、人間対ウサギぐらいの戦力差が妥当でしょう。犬サルキジという戦闘力ほぼ0のチームで圧倒したことを考えると、それしか考えられません!(ここは強引に押し切ります笑)鬼目線で言えば、「強大な力をもつ人間が突然襲ってきて、それから守るために大人数で必死に抵抗したが敗れた」という見方もできます。鬼ヶ島新聞の一面は、「悲劇…桃太郎による鬼大虐殺事件」「島のために立ち向かった多くの鬼が命失う」なんて記事になっているでしょう。

さらに、命を懸けた超ハイリスクな仕事を、きびだんご1個という最低賃金以下で雇った点も見逃せません。超絶ブラック企業です。怖すぎる桃太郎を拒否できず、無理やり連れていかれたパワハラ被害にあっていたかもしれません。そうでなければ、きびだんごに覚せい剤レベルの中毒性があったとしか考えられません!(ここも強引に押し切る)

子ども向けの童話にあまり熱くなり過ぎると、理屈っぽいと思われるので…ほどほどにしつつ。とにかく、「いろいろな物事の見方がある」ということに気づいてもらいましょう。桃太郎は物心つく頃からこういう話だと刷り込まれてきた話なので、偏るのは当然のことです。しかし、現実の問題も同様で、視野が極端に狭い人は、真偽を判断する力が身についていきません

視野が狭くなる危機として、もう一つ事例を紹介していきます。

(ⅱ)視野を狭める「アルゴリズム」

参照:総務省教材「インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報に騙されないために~」https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/special/nisegojouhou/

今の若者は幼少期からスマホを使ってきた世代になります。最近のSNSサービスや検索サービスでは、「アルゴリズム」という機能が搭載され、自分が気になる情報や興味関心のあるトピックが自然と流れ込んできます。(Instagramの検索画面、YouTubeのおすすめ動画、TikTokのショート動画などが主な例)

すると人間の思考はどうなるか…。上に挙げた総務省教材のスライドに、分かりやすい図があったので紹介します。

上のイラストのように、世の中にはさまざまな情報・考え方があるはずです。しかし「アルゴリズム」によって本人に合わせた偏った情報に囲まれると、下のイラストのような状態になります。

このように、あたかもそれが世の中の標準だと誤解してしまう現象を「フィルターバブル」といいます。

偏った情報に囲まれた人は、その意見にしか視点が向かなくなっていく。結果、極端に視野が狭くなり、さらに偏った情報にしか目が向かなくなる…という悪循環に陥ります。

桃太郎が正義だとすりこまれてきた皆さんと同じ状況なわけです。これってとても恐ろしいことじゃない?と問いかけ、生徒にも本気で考えて欲しいです。

便利な機能として発達した「アルゴリズム」が人間の思考を止める。AIによって人間が操作される一つの事例と言えるかもしれません。さらに、そんな世の中ではマスメディアによる印象操作も容易にできてしまいます。誰もが簡単に情報を発信できる世の中だからこそ、情報の真偽を見極め、取捨選択できるメディアリテラシーが本当に大切なんだ。強いメッセージで締めくくりましょう。

参照:総務省教材「インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報に騙されないために~」

実施した後の反省点

かかった時間

全体で15分程度、桃太郎のタイトルではなく「グループで記事を書く」という作業も考えましたが、ちょっと時間がかかりすぎる気がしたのでやめました。

反省点・よかった点

桃太郎の例は極端だったかもしれませんが、わかりやすい事例だったと感じます。さらに時間に余裕があれば、上記した総務省作成の教材を使いながら「フェイクニュースに騙されないために」という展開をしてもいいと思います。

熊本地震のライオン脱走のデマツイート(2016)、アメリカ大統領選時の「ピザゲート事件」(2016)など、フェイクニュースが社会に多大な影響を与えた事例もあります。一人ひとりがメディアリテラシーを高めることが、これからの世の中には求められることが痛感できるはずです。

よかったら試してみてください!

今回は授業プリントで実施していませんので、プリント教材はありません。その他の単元でよろしければ、本サイトの「授業プリントのページ」にて掲載されているものを参考にしてください。質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

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