政経演習37 国際社会と国際法

政経

共通テストの過去問を中心に演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。

問1 国際法上の拘束力をもつ国家間の合意を条約と呼ぶとき,そのような条約の例として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ラッセル・アインシュタイン宣言
② 市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書
③ 新国際経済秩序(NIEO)樹立宣言
④ 核兵器による威嚇又はその使用の合法性に関する勧告的意見

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解答② 【解説】➁難しく書いてあるが、国際人権規約(B規約)の正式名称になる。①は哲学者・ラッセルと、物理学者・アインシュタインが中心となって、核兵器廃絶・科学技術の平和利用を訴えた宣言文。提唱しただけで、条約のような拘束力は持たない。③についても、天然資源の使用に関する発展途上国の立場を考えた新しい国際経済秩序の樹立をめざす宣言に過ぎない。④は核兵器の使用に関する国際司法裁判所の判例。

問2 紛争を平和的に解決するための国際裁判所に関する記述として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 日本は,国際司法裁判所(ICJ)で裁判の当事国となったことがない。
② 日本は,国際刑事裁判所(ICC)に加盟していない。
③ 国際司法裁判所は,紛争当事国双方の同意がない限り,国家間の紛争を裁判することはできない。
④ 国際刑事裁判所は,人道に対する犯罪などの処罰をめぐる国家間の紛争を裁判する機関であって,個人を裁くための裁判所ではない。

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解答③ 【解説】①2010年代、日本の南極捕鯨について初めて国際司法裁判の当事国となった。➁日本は加盟している。③双方の同意が必要であり、ここでの決定は法的拘束力を持つ。④むしろ集団殺害や戦争犯罪などの重大犯罪を犯した個人を裁くための機関。

問3 条約についての記述として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 京都議定書は,締約国間における温室効果ガスの排出量の売買を禁止している。
② 経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)は,締約国が規約を批准する際に留保を行うことを禁止している。
③ 化学兵器禁止条約は,化学兵器の使用を禁止しているが,その生産と保有については認めている。
④ 国連海洋法条約は,沿岸国が領海の外側に一定の範囲で排他的経済水域を設定することを認めている。

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解答④ 【解説】①排出権(量)取引と呼ばれるもので、国や企業間で排出量の相互取引を認めたもの。➁国際人権規約のA規約には、複数の項目が盛り込まれており、すべてを批准する必要は無い。日本は公務員のストライキ権や公休日の給与保障の項目について留保している。③使用だけでなく、生産・開発・貯蔵の禁止も定めている。

問4 主権尊重の原則と国際社会の秩序維持との関係についての記述として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 国際司法裁判所(ICJ)は,紛争当事国の同意がなくても,国家間紛争の裁判を行うことができる。
② 国際原子力機関(IAEA)は,核拡散防止条約で核兵器保有を認められた国の核関連施設であっても,強制的に査察することができる。
③ 国際連合に加盟している国家は,自衛のためであっても,武力の行使を慎む義務がある。
④ 国際連合に加盟している国家は,自国の利益に反する内容であっても,国連安全保障理事会の決定に従う義務がある。

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解答④ 【解説】①双方の同意があって初めて裁判が開始する。➁認められた国に関しては強制査察はできない。核兵器を保有しない加盟国に対して査察することができる。③このような義務はない。自衛のための武力行使は認められている(個別的自衛権)。

問5 国際慣習法(慣習国際法)についての記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 国際慣習法とは,諸国の慣行の積み重ねにより形成された法である。
② 国際慣習法において,輸入品に関税を課すことが禁じられている。
③ 国際慣習法は,条約の形に成文化されることがある。
④ 国際慣習法により,公海自由の原則が認められている。

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解答② 【解説】➁関税の撤廃は自由貿易推進のために徐々に行われているが、まだ一部に過ぎない。慣習法とはそれが当たり前になってルールとして浸透するものであり、現段階で関税の禁止が慣習化されているとは言えない。

問6 国際法に関連して,国際紛争の処理について説明したものとして正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 国際司法裁判所(ICJ)が裁判を行うには,紛争当事国双方の同意が必要とされる。
② 侵略国に対する国連の安全保障理事会の決議では,経済制裁はできない。
③ 国連のPKOは,加盟国が自発的に人員を提供するものではない。
④ 国連憲章に規定されている国連軍は,多発する地域紛争に備えて常設されている。

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解答➀ 【解説】➁経済制裁だけでなく武力制裁も可能である。③PKOは各加盟国が原則に従って派遣を決めるものであり、自発的なものである。④国連軍として常設された組織はない。例えば湾岸戦争では、国連側としてさまざまな国が共に軍事行動をしたが、一時的なものであり、国連軍として正式に常設されていた訳ではないことに注意。

問7 国際社会についての記述として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ウェストファリア会議の結果,各国の主権とその平等に基づく国際社会が,地球規模で成立した。
② 第二次世界大戦の終結後,国連(国際連合)が設立されたが,ソ連はアメリカとの対立を理由に当初加盟を見送った。
③ 国際司法裁判所(ICJ)は,国際法にのっとって裁判し,判決を強制執行する。
④ 国連の総会は,加盟国が一票の投票権を有する多数決制に基づき,決定を行う。

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解答④ 【解説】①ウェストファリア条約はヨーロッパでの三十年戦争の講和会議として実施された。ローマ帝国内の各地域が独立主権を獲得し、国家を形成した。これが国際社会の始まりとされるが、ローマ帝国内の話であって地球規模は誤り。➁国際連合は米ソともに当初から加盟している。国際連盟は米が不参加、ソ連が途中参加となっている。③ICJ自体には判決を強制執行する権限はなく、国連の安保理に委託する場合もある。

問8 国際刑事裁判所(ICC)についての記述として誤っているものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 日本は設立条約に加入していない。
② アメリカは設立条約に加入していない。
③ 戦争犯罪を行った個人を裁くことができる。
④ 特定民族のジェノサイド(集団殺害)を行った個人を裁くことができる。

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解答➀ 【解説】①日本は加入している。アメリカ・ロシア・中国などは未批准。

問9 主権国家体制についての記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 第一次世界大戦の後に開催されたパリ講和会議で,初めて各国の主権と平等とが確認された。
② 主権国家は,共通通貨の発行という形で,主権の一部を国家の連合体に委ねることもある。
③ 主権国家は,自国の利害に反することについては,国連加盟国であっても国連安全保障理事会の決定に従う義務はない。
④ 主権国家間の戦争を違法とする国際法の拘束力が強まった結果,国家による武力行使は不可能になった。

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解答② 【解説】➁EUで用いられるユーロが代表例である。①初めて各国の主権・平等が確認されたのはウェストファリア条約のとき。③国連安保理の決定には拘束力があり、自国の利害に反する内容であっても決定に従う義務がある。④自衛のために武力行使が必要になる場合はある。

問10 ウェストファリア会議において締結されたウェストファリア条約の意義として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ヨーロッパ諸国における絶対君主制を否定し,議会制民主主義を基礎とする平等な国家間関係を確立した。
② 植民地をめぐるヨーロッパ諸国の紛争を終結させ,植民地主義の違法性を確認した。
③ ヨーロッパにおける宗教改革を収束させ,ローマ教皇の権威を基礎とする国際秩序を回復した。
④ 三十年戦争を終結させ,ヨーロッパにおいて主権国家から構成される国際社会の成立を促した。

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解答④ 【解説】①議会制民主主義を基礎としたとまでは言えない。ローマ帝国の権威が失墜し、各領土が対等な国家となったまでは正しいが、各国の政治体制は絶対王政の国が多かった。➁この会議は三十年戦争の講和会議であり、ドイツのキリスト教内での争いを端を発する国際的宗教戦争であった。③ローマ帝国の権威は失墜した。

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