公共授業ネタ13 履歴書から人権問題を考える

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、人権保障のあゆみの授業で実施しました。人権に対する考え方が昔と今でどのように変化してきたのか、また他国と比較してどうかということを、履歴書から読み解く授業を実施していきます。ベテランの先生から、たまたま30年ほど前(※)の履歴書を入手できたので、現在使用されている厚労省のテンプレートと比較して気づいたことをまとめさせていきます。

※はっきりとした時代は分かりませんが、生年月日欄が昭和としか書いておらず、記入日欄が平成なため、おそらく20~30年前のものではないかと推測できます。

重視した点・授業の流れ

➀隣の生徒と協力して実施

2人1組となって2枚の履歴書を比較しました。新旧履歴書はPDFで以下に置いておきますので、参考にしてください。変わっている点を見つけるのは簡単ですが、なぜそのような変化があったのかを考えさせることが大切です。自由に話をさせることで、発想が広がっていきやすく、面白い意見が集まってきます。

➁記入した気づきを全体で発表

今回は「STEP1 新旧の違い」「STEP2 新履歴書の改善点」という2題を提示しています。ある程度意見がまとまったところで生徒に発表してもらいます。

問に対する解答例

いくつかの解答例を示しておきます。今後展開させたい流れによって、話題を広げる意見を選ぶといいと思います。

STEP1では最もわかりやすいのは性別に関する変化です。ここから性的少数者や男女雇用機会均等法などの話題に発展させることも可能です。中学校の記入欄や本籍に関する変化は、出生地による差別を防ぐものです。しかし、現代では居住地による差別といってもピンとこない子が多いため、補足は必要だと感じました。部落差別や同和地区差別問題の具体例を示してあげれば、理解はより深められたと思います。高校生の感覚で言えば「○○中は荒れてる」という発言も、その地域をひとくくりにしている一種の差別だと説明したら、納得してくれました。

また、STEP2では、新しい履歴書を見てもまだまだ改善できることはないか?という問いを投げかけました。採用に関して不要なもの、人権侵害に配慮すべきものを改めてみていくと、「これもいらないかも…」と気づくことが出来ます。

上記の例の他にも、「紙の履歴書を廃止して電子化」という意見がありました。ペーパーレスの流れに乗るという意味の他に、字の上手さによる偏見も防ぐことができるかもしれません。

まとめ

以上のように、挙げ始めると配慮すべきことはいろいろあることに気づいていきます。実際にアメリカの履歴書では、顔写真や性別・年齢を記載しなくてもよく、最低限の学歴と大学での実績、今後職場で何が出来るかといった能力面のアピールが中心となるそうです。アメリカが正しくそれに追いつけという話ではありませんが、現状を改めて考え直す姿勢は大事ですね。

もうひとつ気を付けるべき点としては、配慮しすぎも息苦しいということ。少々の違和感に敏感になりすぎて、発信側が意図していないことまで過敏に反応してしまうと、お互い生きづらい世の中になってしまいます。過剰な擁護が逆差別に繋がる恐れもあります。フラットな視点で、冷静に考えることが求められます。

実施した後の反省点

かかった時間

議論で10分、発表で5~10分程度

反省点

居住地による差別、つまり部落差別(えた・ひにん)や同和地区に関する知識がないため、補足する必要があると感じました。歴史的に差別を受けてきた地域があること、その名残が残って近年でも住所による差別があることは、具体例も交えて紹介してあげればよかったと思います。

よかった点

思った以上に積極的に参加してくれた印象です。変化を見つけるのはそう難しくないため、すんなり作業に入れたのかもしれません。なぜそのような変化が?という点においても、比較的考えやすい内容だったと感じます。

よかったら試してみてください!質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

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