公共授業ネタ02 多数決は正しいか?

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、「民主政治の成立」の授業で実施しました。授業プリントは別ページで公開しているので、そちらを参考にしてください。絶対王政から社会契約説への流れ、直接民主制や間接民主制について考える単元において、「そもそも民主主義とは何か?」という問いかけをしてみました。多く票を集めたものに従うのが民主主義なのか?少数派でもよい考えであれば、皆で吟味することが民主主義では?そんな話の流れで、多数決に関する作業を取り入れました。

意図としては、多数決が必ずしも集団の意思を代表するとは限らないことや、多数決でも方法によっては異なる結果が出ることなどを、実感させたいと思いました。身近な投票をグループワークで実施し、実際に全体で多数決を行いました。今回はアイスクリームで投票を行いましたが、生徒に合わせて関心のあるテーマに変えても面白いと思います。

作業の流れ

➀グループで順位付けを行う

多数決は正しいか?-プリント1

まず、多数決の準備として、各班で意見をまとめてもらいます。本当なら、1人ずつ意見をまとめるのがリアルではありますが、後の開票作業が煩雑になるため、グループごとで1つの意見に統一させることにしました。今回は6班に分けたので6通りの考えが揃うことになります。多くても8班までくらいに抑えると良いと思います。5分程度でまとめてもらいたいところですが、意外と白熱してしまうので要注意。

➁多数決を行う

ここからが本題で、さまざまな多数決を実施していきます。まず最もシンプルなパターンとして、各班の1位を聞いていくもの。(以下図のNo,1)

最も多くの支持を集めたものを勝者とします。ここで同率1位となった場合も、両者優勝としておきます。その後、No,2の方法として決選投票を含める。上位2つ以外を選んだ班に対し、より順位が高い方を発表してもらい、最終決戦を実施します。6班の場合、項目が少なく決選投票が機能しない場合も多いため、場合によっては先生のランキングなども含めて調整します。

多数決は正しいか?-プリント2

No,3として、ボルダ方式という方法を採用し、3位までを点数化していきます。(以下の画像参照)1位にはなれなくても上位に評価されたものを結果に反映させることができます。好き嫌いが激しいものより、安定して上位に位置するものが逆転することがあります。

多数決は正しいか?-プリント3

最後にNo,4として、コンドルセ方式という方法を実施します。これは総当たり方式で、各項目を1対1で競わせます。2位以下の見えなかった順位がはっきりと表れてきます。

多数決は正しいか?-プリント4

③実施後のまとめ

以上のように、さまざまな方法で多数決をすることで、方法によって変わった結果が出ることがわかります。「多数派=絶対正しい」ではなく、選び方や考え方によって導き出される答えはいくらでも変わることを理解してほしいと思います。

また、一通りの作業が終わったのち、改めて個人に対して意見を求めてみると面白い。例えば、全体の多数決で➀のチョコモナカが優勝したとして、「個人的にもチョコモナカが1番好きな人はどのくらいいる?」と問いかけてみる。すると、意外と手をあげるのはちらほらだったりします。「あれ?みんなで優勝と決めたのに、意外とこんな支持率なの?」と気づき、多数決の不完全性を実感することができるはずです。

各班で1つにまとめた意見を、さらにクラス全体で多数決しているため、その過程で個々の意志が死んでいるということですね。投票の対象を政党、各班を選挙区と見立てると、小選挙区制においてどれだけ死票がうまれるかという話にも持っていけます。

授業の締めくくりとしては、「多数派(多数決)が正しいと思い込み、考えることをやめてしまってはいけない」「代表者を選挙するという政治には欠陥もある」「民意を反映させるためにはどんな方法が理想だろう?」といった落としどころが考えられます。

実施した後の反省点

かかった時間

議論で5分~10分、発表・まとめで10分程度

反省点

方法によって結果が変わるのが面白いので、極端に人気が偏るものは避けたい。意外とパピコが人気でクラスによってはパピコ独裁体制が敷かれてしまった。

よかった点

楽しそうに活動してくれた。落としどころもさまざまなので、結果によってまとめの仕方を変えればよい。やってみないとわからない作業ではあるけれど、教員側も緊張感があって面白い!

よかったら試してみてください!

授業プリントについては、本サイトの「授業プリントのページ」にて掲載されています。公共プリント09の「民主政治と国民主権」に載っていますので、よかったら参考にしてください。質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

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