今回は世界の社会保障についての解説。社会保障がどのような歴史で整えられてきたのかや、国によって異なる社会保障の特徴を抑えていきましょう。ここでの内容は受験でも超頻出分野ですし、グラフ問題等にも使われやすいです。ポイントを確実に覚えていきましょう。
▼社会保障制度のあゆみ
社会保障ができた背景
資本主義が成立したことで、労働者は失業に脅かされるようになった。貧困や失業の不安から国民を救済するために、社会保障制度が求められるようになった。
主な出来事を以下の年表にまとめたので、この項目くらいは覚えておきたい!
エリザベス救貧法(1601)
エリザベス救貧法は1601年ということで、産業革命よりも前の話になる。貧困者で労働できる人は作業所で強制労働させ、労働能力がない人は救済措置を与えるというものであった。現代の労働環境とはかけ離れた時代であったが、「富裕層の税金で貧困層を救済する」というシステムが現在の公的扶助に通じている。
疾病保険法(1883)
ドイツで制定された疾病保険法は、労働者の保護を目的としたビスマルクによる政策で、世界最初の社会保険とされている。貧困層が社会へ反発し労働運動を起こすようになり、それらを弾圧した代わりに、社会全体で労働者の貧困を支えていく社会保険を推進した。保険による保護と、厳しい弾圧を同時に実施したことから、アメとムチの政策とも呼ばれる。
ビスマルクは1884年に労働者災害保険法、1889年に老齢廃疾保険法を制定し、社会政策3部作と呼ばれているが、大学入試には出題されるのはかなり珍しい。疾病保険法だけ覚えておけば問題ないはずだ。
ベバリッジ報告(1942)
ベバリッジ報告は第二次世界大戦中のイギリスで公表されたもの。チャーチル首相により作られた委員会で社会保障の制度化を進めた。ここで委員長をしていたのがベバリッジで、国民すべてを対象にした社会保障制度を確立させた。
※ビスマルクの疾病保険法は労働者や貧困層のみを対象としていたので、国全体としての社会保障制度はベバリッジ報告によるものが世界初となる。
フィラデルフィア宣言(1944)
フィラデルフィア宣言は国連の専門機関であるILO(国際労働機関)で採択された宣言。加盟国の労働や社会保障の基本を定めたもので、すべての人に社会保障の権利を共通して与える考えを示した。これまで特定の国や立場の人にしか与えられなかった権利を、全世界共通の普遍的な権利に高めたという意味で、重要な宣言となった。
▼世界各国の社会保障制度
社会保障の考え方は世界共通なものになったとはいえ、実施の方法については様々。諸外国との比較やデータの読み取りが入試ではよく出るため、解答に必要なポイントを抑えていきましょう。まず、社会保障をタイプ分けするなら以下の3点。
北欧は高負担・高福祉なイメージが強いが、それに比べて大陸型の負担が低いとは限らない。北欧型は税が中心で平等な給付、大陸型は保険料の割合が比較的大きく個々に応じた給付と区別しよう。その知識を踏まえて、以下のグラフを確認してほしい。
国民負担率とは、国民所得のうちどの程度が税金や保険料などで負担されているかを示したもの。
まず目立つのはアメリカの負担率の低さ。低負担・低福祉の典型的な例である。選択肢にアメリカがあれば、まず初めに解答可能。
ここで間違えやすいのがフランス!一見高負担だという理由で一番右をスウェーデンとしてしまう人が多いが、実はフランスも重税大国。負担率の高さだけでなく、租税負担と社会保険料負担の割合にも注目して、判断できるようにしよう。
また社会保障給付に加え、施設の整備費なども含めた社会支出も頻出グラフ。これもフランスの高さは特筆すべきものであり、様々な手当が充実している福祉国家であることがわかる。フランスは約80%がキリスト教徒で、カトリック文化が根強く残る国である。家族を重視する伝統が、社会保障制度にも影響している。
では日本は何型?と言われると、実は正解は無い。租税と保険料をバランスよく負担させている点では大陸型と北欧型の中間といえるし、そこまで社会支出が高くない点で言えばアメリカ型の要素もある。国民負担率で言えばアメリカとヨーロッパの中間くらいとイメージしておくといいでしょう。
▼まとめ
以上が世界の社会保障制度について。特に後半で紹介したグラフは、よく出題されるパターンであるが、無名な国がいきなり登場する訳ではない。アメリカや北欧諸国、ドイツ・イギリスあたりを抑えておけば、解答にたどり着けるはずです。問題演習で力試ししてみましょう!
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