今回は金融政策についての解説です。単純に単語だけを覚えればいいという範囲ではなく、根本的な理解が求められます。日本銀行がどのような方法で景気に影響を与えるのか、丁寧に理解していきましょう。
▼金融政策とは
金融政策とは、日本銀行が実施する景気調整のことを指します。政経31財政政策の解説で、政府が実施する景気調整は紹介しましたが、今回はその日銀版です。なので、仕組みとしては財政政策のときと同じ。景気が良い時には通貨量を吸収し、景気が悪い時には通貨量を増加させる考えは変わりません。これを政府がやるなら財政政策、日銀がやるなら金融政策ということになります。
政府と日銀は必ず同じような動きをするとは限りませんが、基本的には一体的に景気調整に努めます。このように、財政政策と金融政策を一体的に行うことをポリシー・ミックスと呼びます。頻出なので、覚えておきましょう。
では、どのように日銀が通貨量の調整を行うのか?前回の投稿でも書いたように、日本銀行は私たちと直接取引をしません。つまり、直接的に通貨量の吸収や供給ができないのです。そこで、間に入るのが一般的な銀行。つまり市中銀行になります。下の図を見てください。
この図の意味はわかりますか?皆さんの感覚で例えるならば、友達に少しお金を貸すことを想像してみてください。例えば、財布に250円しか入ってなかったら…ジュース代も貸したくないですよね。一方でたまたま10,000円札が入っていたら…少しくらい貸してもいいよとなるでしょう。
それと同じで、通貨量を増やしたい時は、日銀の取引により市中銀行の資金量を豊富な状態にしておきます。そうすれば、市中銀行がお金を貸しやすくなり、私たちにとってはお金が借りやすい状況になります。お金が沢山回るようになり、通貨量増加へ繋がります。不況の場合はそれの逆を考えればOKです。これが金融政策のしくみです。
しくみさえわかってしまえば、後はどのように市中銀行の資金量を増減させるのかという方法を知るだけです。いくつかの方法がありますが、ここも頻出部分。1つ1つ説明していきます。
▼金融政策の方法
金融政策の方法は、基本的に2つ。1つ目が公開市場操作というもので、2つ目が預金準備率操作というものになります。現在、預金準備率操作は実施されておらず、公開市場操作が現在の主流となっていますが、受験対策としては両方とも理解しておく必要があります。
➀公開市場操作
日銀と市中銀行の間で、国債・社債・手形などを売買することによって通貨量を調整する方法を、公開市場操作(オペレーション)といいます。国債や手形という点はあまり気にしなくていいです。金融機関で扱う商品だと思ってください。例えば不況時の場合は以下の図のような動きをします。
不況時はお金の回りが停滞するため、通貨量を増加させようとします。つまり、市中銀行を裕福にしておいて、お金を貸しやすい状況を作りたい。そのために日銀は国債などの金融商品を買い取ります。日銀が商品を買うため、これを買いオペレーション(買いオペ)ということも覚えておきましょう。
好況時の場合は逆に、市中銀行から資金を吸収したいため、商品を売りつけます。そうすることで市中銀行の資金量が減少し、社会全体への供給も自然と抑えられることになります。日銀が商品を売るため、売りオペといいます。
このように、慣れないうちは順番に考えていけばOKです。「通貨量を減らしたい→市中銀行の資金を抑える→日銀が商品を売って資金を回収」という流れを抑えられれば、入試レベルでも問題なしです。好況期=売りオペ、不況期=買いオペと暗記してもいいですが、上の流れは理解しておいてください。
➁預金準備率操作
次に、先ほど今は実施していないと説明した預金準備率操作についてです。預金準備金については以下の図を参考にしてください。この比率を預金準備率といいますが、1991年を最後に変更されておらず、金融政策として機能していないのが現状です。
考え方としては、先ほどの公開市場操作と同様で、市中銀行の資金を日銀が調整するというもの。手段が違うだけです。預金準備率を上げれば、市中銀行から日銀へ多くの資金を預けることになるので、より多くの資金を吸収したければ、準備率を上げればいいだけです。
最後に一覧にまとめましたので、整理して覚えてください。
▼まとめ
以上が基本的な金融政策の内容になりますが、日本ではバブル崩壊をきっかけに経済の変化を余儀なくされました。このような基本的な政策だけでは対応できず、これまでとは異次元の金融政策が近年実施されてきました。90年代以降の金融改革、またそこで実施されてきた金融政策については、次回のまとめ(政経34金融改革)で解説していきます。読んでいただきありがとうございました。
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