政経講義31 財政政策をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 景気調整の方法を理解
⑵ プライマリーバランスを理解

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

今回は財政政策についての解説。前回の財政とは何か・予算・租税に続く内容であるが、今回の財政政策は根本的な理解が必要!丁寧に解説をしていきますので、みなさんも他人に教えられるようになるくらい、正確な理解を心がけていきましょう。

▼景気調整のしくみ

前回紹介した財政の機能のうち、最後の役割が景気の安定化である。

➀資源配分の調整
➁所得の再分配
③景気の安定化

そもそも景気とは何か?どうしたら調整できるのか?という点から解説していきます。

景気調整とは

景気とは、社会全体の経済状況を表すもので、商売や取引の状況が活発なことを好景気、逆を不景気といいます。これが波のように変動するわけですが、好景気が突き抜けていけばよいというものでもありません。あまりにも景気上昇が過熱しすぎると、急激に物価が上昇したり、生産が追い付かなくなるなどの反動があるため、できるだけ安定した波で徐々に上昇していくことが理想とされます。その景気安定化を政府が行うのが財政政策です。

景気調整のしくみ

景気調整の基本は通貨量の調整になります。収入が増加して消費も活発になり、企業が儲かる→さらに収入が増加といった好循環をめざしていきます。そのために政府ができる政策は何だろうか?大きく分けて2つの方法があります。

ビルトイン・スタビライザー(景気の自動安定装置)

まず1つ目が「ビルトイン・スタビライザー(景気の自動安定装置)」である。その名前の通り、自動的に安定するようにあらかじめシステムを作っておくというイメージ。今の日本において、累進課税制度や社会保障制度がそのシステムにあたります。つまりどういうことか?不況の場合で考えてみましょう。

不況時のビルトインスタビライザー

不況の場合、通貨量が少なく経済が停滞している状況であるため、この増加を目指していきたいのが基本です。しかし、意図的な政策をしなくとも、景気停滞による失業や収入源に対しての社会保障費は増加し、所得の減少や企業の利益減少によって税収は減少となります。つまり、何も手を下さなくとも、不況期になった時は政府から社会への資金が増加し、逆は減少するという状態が、自然に作られることになる。不況期には自然と通貨量の増加へ向かい、好況期には自然と通貨量の減少に向かう。この機能をビルトインスタビライザーといいます。

参考までに好況期に発生するビルトインスタビライザーを図示したものを、以下に載せておきます。

好況時のビルトインスタビライザー

フィスカル・ポリシー(裁量的財政政策)

ビルトインスタビライザーによって、ある程度の調整は可能になるが、当然それだけでは調整が追い付かない場合もある。そのような場合に政府が意図的に行う景気調整のことを、フィスカルポリシー(裁量的財政政策)といいます。

基本的な考え方は同様で、好況時には通貨量を抑え、不況時には増加させるように調整する。今回も不況時の場合で考えてみましょう。通貨量を増加させるために、例えば政府による公共事業を推進することが考えられる。これによって関連する企業や産業の利益増加に繋がったり、新たな働き先を得られる人もいるでしょう。一方で税金については減税を行うことで、社会から政府への資金の流れを減少させるのも一つの方法である。これによって手元に残る資金が増え、消費が活発になることが期待される。

以上のように、政府の意図的な政策によって景気調整を行うことを、フィスカルポリシーという。

不況時のフィスカルポリシー

日本はバブル崩壊後、長く「不景気」と言える段階が続いてきた。近年は企業の利益や株価は上昇しているが、それに給料の上昇が伴っているとは言えず、国民の感覚ではまだまだ不景気なのかもしれない。

特に2023年は円安の影響で物価が上昇し、国民の生活は圧迫されてきた。しかし、政府は社会保障費の確保や、借金の返済を進めるためとして、減税を中心とした政策は行っていない。

このように、今回勉強した理論でいくと、減税を行うのが教科書通りであるが、経済はさまざまな事項が複雑に絡み合うため、イレギュラーなことが起こりやすい。気を付けましょう。岸田首相にもこの経済状況に対する批判が集まっているところなので、今後どのような打開策を掲げていくか注目してみてください。

▼財政の健全化に向けて

先ほどの部分で少し出てきた借金について、頻出ポイントを解説していきます。

建設国債と赤字国債

まず健全な財政とは何か?みなさんの財布で例えれば、親から借金をせず、与えられたおこづかいでやりくりできている状態である。これを国に言い換えれば、国民の税金だけで国でかかるお金をやりくりするということ。毎年立てる予算を税収で賄うことができるのが、健全な財政となる。しかし、高度経済成長が終了した頃から、少しずつ税収で賄えない部分が増え始め、徐々にその差が広がっているのが現状である。

知識として抑えておいて欲しいのは、建設国債と特例国債の違いについて。

建設国債…道路や港湾などの社会資本に使われる財源として発行
 *財政法に従い毎年国会で議決された金額を発行
 *1966年~毎年発行され続けている

赤字国債(特例国債)…財政の赤字分を賄うために特例で発行
 *1965年度に初めて発行、その後1975年から常態化
 *1990~93年は赤字国債の発行なし!

発行され続けている建設公債と、一時期発行がされない時期があった赤字国債の違いが出題されることが多いため注意しましょう。

財政の健全化に向けて

今、日本の予算の4分の1~3分の1程度を公債に頼っている状況で、健全な財政とは言えない現状にある。前回の予算の部分(講義30予算・租税をわかりやすく)でも紹介したように、借金返済に必要な資金があるがゆえに公共事業や教育などにかけられる財源が縮小している。このように、借金返済により他の支出がしにくい状態を「財政の硬直化」という。最低限の生活が送れるようにするための社会保障費は、急な減額が難しいため致し方ない面もあるかもしれないが、未来の子どもたちにかけるお金が少ないのは寂しい話である。

一説によると、借金があるといっても国が保有する資産なども含めると大きなマイナスにはならず、財政が破綻するような深刻なレベルではないとか、そもそも国債は国民に買ってもらっている部分も多く問題はないとか、さまざまな主張がありますが…そこは経済学の専門家でない私には自信がないので明言は避けたいと思います。

話は戻りまして、この状況を打開するために、政府は支出の見直しや税制改革を進め、財政の健全化を目指している。ひとつの目標としているのが、プライマリーバランスの黒字化である。最後にプライマリーバランスについて説明して、この単元を締めくくろうと思います。

プライマリーバランスとは

プライマリーバランスとは、政策に必要な経費を、その年の税収等で賄えているかどうかを示す指標。つまり、借金を除いた状態で黒字か赤字かということである。2023年度の一般会計予算で実際に考えてみましょう。

2023年の一般会計予算

円グラフより、歳入のうち公債の部分を除くと74.6%となる。歳出も同様に国債費を除くと77.9%という数字になる。これを比較したのがプライマリーバランスである。今回の場合、歳入が74.6%、歳出が77.9%なので3.3%の赤字となる。

政府は2025年度までにプライマリーバランスの黒字化を目標としている。グラフが過去に出題されたこともあるため、しっかり理解しておきましょう。

プライマリーバランスの考え方

▼まとめ

以上が景気調整や公債についてのポイントになります。冒頭でも述べたように、景気調整はどんな理由があってどんな方法その改善をするのかということを、筋道立てて説明できるようにならないといけません。また、財政の健全化については少子高齢化や年金問題などを語る上で必要な基礎知識となります。読んでいただきありがとうございました。

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