今回は労働問題についての解説。労働に関連する法律の内容や、近年の労働環境の課題など、頻出ポイントが多い単元となっています。受験だけでなく、皆さんが社会に出てからも大切になる話なので、丁寧に理解していきましょう。
▼労働に関連する権利
労働三権とは
資本主義が成立したことで「資本家」と「労働者」という格差が生まれ、立場の弱い労働者は厳しい環境で労働を強いられることになった。それを打開しようとした人々により労働運動が起こり、権利獲得をめざしたのである。
新たな国づくりが進む戦後日本において、憲法での労働三権、労働組合法・労働関係調整法の制定など、労働の民主化が進んでいった。
上に示した労働三権(憲法第28条)に加え、勤労の権利(憲法第27条)の4つをまとめて労働基本権という。しかし、この労働三権は全ての人々に保障されているとは限らないことがポイント。
民間企業の労働者は基本的にすべての労働三権が保障されているが、公共性が強く国民生活への影響が大きい公務員は、一部の権利が制限される。例えば団体行動権の中にはストライキがあるが、警察や消防職員が不在となったらどうなるか…。いざという時に国民が守られない恐れがあるでしょう。そのような職種には一切の労働三権が認められないことになっている。
ややマニアックなのが、団体交渉権に△が付いている部分。公務員でも水道や造幣局、市バス職員など、一部は職種によって認められることもあるので注意しよう。また教員についても、公立学校は各自治体の公務員にあたるため権利の制限はあるが、私立学校は公務員でないため制限がない。ゆえに、私立学校ではまれに教職員によるストライキが発生する。
労働三法とは
労働に関連する法律はいくつか存在するが、その中で特に重要な3法は労働三法としてまとめられている。労働運動の具体的保障や調整を図る、労働組合法・労働関係調整法に加え、労働における最低基準や規定をまとめた労働基準法がある。
この中でも労働基準法は特に頻出であり、1日8時間・週40時間以内の労働時間、週1日の休日、時間外労働の割増賃金、有給休暇の設定などが規定されている。関連する項目で、深夜労働についての規定が頻出である。かつては「女性は深夜労働を禁止する」という項目が含まれていたが、男女差別にあたるとして削除されている。
不当労働行為とは
労働組合法で禁じられた不当労働行為についても注意が必要なポイントである。不当労働行為という単語だけをみると、労働者が悪いことをしているようなイメージを持ってしまいがちであるが、全くの逆!これは雇う側(使用者)の問題であって、労働者が不当な行為をしているわけではない。
以上の図のように、労働者の正当な労働運動を妨害する行為が不当労働行為である。
▼日本の労働環境
失業率と求人倍率
失業率や求人倍率は、景気の影響を受けて上下する指標である。労働意欲があるにもかかわらず職に就けず仕事を求めている人の割合が失業率、求職者1に対して何件の求人があるかを示したものが求人倍率である。
日本経済史⑵や日本経済史⑶の単元で紹介した出来事に照らし合わせてみると、景気に連動して各指標が動いていることがわかるのではないでしょうか。バブル期前後やリーマンショック前後の動きは特徴的なので覚えておきましょう。
またグラフからわかるように、日本の失業率は高くても5%程度までしか上がらない。大体3%程度を推移しているイメージを付けておきましょう。一方でイギリスやフランス、ドイツでは10%を超えることもあり、日本と比べると失業率が比較的高い水準であることも覚えておきましょう。
日本の労働環境の現状
日本はここ20年でGDPが減少している。これは世界で日本だけであり、いかに経済成長が止まっているかがわかる。この状況で、かつての雇用も維持できなくなり、終身雇用制や年功序列賃金が崩壊し、非正規雇用者の割合が増加することになった。
非正規雇用者の割合が増加することによって、経済問題・社会問題を引き起こし、景気にも影響を与える。以上の表のように、多面的に与える影響を考えられるようにしましょう。小論文を書く際に役に立ちます。
非正規社員は契約の打ち切りをしやすい面もあり、リーマンショックのような出来事が起こると真っ先に解雇の対象となったり、正規雇用者と比較して給与が不安定だったりすることもある。これによる所得格差、相対的貧困は景気停滞や少子化に繋がる問題でもあり、国を挙げて取り組んでいかなければならない。
▼まとめ
以上が労働問題について。労働組合や労働運動の話だけを聞くと、やや馴染みがない単元かもしれないが、自分の将来の給料・休暇・労働環境などに繋がる重要な話である。日本はサービス残業による過労、人手不足問題なども抱えており、外国人労働者の受け入れ等も検討している最中である。働き方も多様になる中で、どのような将来を描いていくのか。社会の動きをよく考えて、知識を身につけた上で選択してもらいたいと思います。
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