政経講義27GDPやGNPで紹介した数値を年ごとに比較することによって、経済成長率を測ることができる。これをグラフ化したものが入試でも頻出なため、抑えるべきポイントを順に解説していきます。
▼経済成長率のグラフ
まずは戦後~現在の経済成長率の推移を見て欲しい。その中でポイントを分けるとしたら5つに分けられる。それぞれの要因等はこの後紹介するとして、まずは全体の流れをイメージしておきましょう。戦後は急成長を続けた日本経済も、現在は低い水準となっていることが分かると思います。
▼高度経済成長期
まず一つ目のポイントが高度経済成長期。日本は戦争で多くの命と国富を失ったが、1950年に発生した朝鮮戦争を契機に好景気が訪れることになる。多くの武器製造や日用品の輸出により、不況から脱出することができた。
その後、順調に経済復興を進めた日本は、1955年ごろから設備投資を積極的に行い、1956年の経済白書にて「もはや戦後ではない」と発表されるほど回復した。この頃から始まる急激な経済成長期を、「高度経済成長期」と呼ぶ。詳細は政経講義35日本経済史⑴にて解説します。
▼第一次石油危機
石油危機とは、産油国が集まる中東の影響で石油価格が高騰したことにより、経済混乱が起こったもの。日本は特に海外からの資源依存度が高く、他の先進国より大きい影響を受けた。2度あったため区別しているが、日本に特に影響を与えたのは第一次の方である。
1973年、第一次石油危機により急激な物価高騰(=狂乱物価)が発生し、景気が急激に下降した。この翌年にあたる1974年、日本は戦後初めてマイナス成長を記録することになる。
▼安定成長期
石油危機を乗り越えた日本は、低成長期~安定成長期という時期に入る。ここで勘違いしないで欲しいのが、マイナス成長は1974年の1度だけということ。1975年からは、5%程度の成長を続けている。
1979年に第二次石油危機が発生しているが、産業の転換が成功し一次ほどの影響はなかった。80年代は緩やかな経済成長を続け、主に1980~88年頃の時期を安定成長期と呼ぶ。
▼バブル経済~失われた10年
1980年代末~日本はバブル景気という空前の好景気となる。なぜこのような好景気が起きたかは、政経講義36日本経済史⑵を参照してください。ここでは、80年代末~90年代初めまでにバブル景気が発生し、それが崩壊した後は深刻な不景気に見舞われたとイメージしておけばOK。大きな不況となった1990~2000年の10年間を「失われた10年」と呼ぶことも覚えておきましょう。
▼リーマンショック
失われた10年を経て、日本は徐々に景気回復の道を歩んでいくが、それを帳消しにする大事件が発生する。2008年に大手投資銀行であるリーマンブラザーズが倒産し、そこから連鎖的に大規模倒産が発生した。これを「リーマンショック」といい、世界中の経済に影響を与えた。当然日本も例外ではなく、株価は暴落し、大きな不況に見舞われた。
結局2000年代の日本経済は停滞することになり、1990~2010年の20年を「失われた20年」と呼ぶこともある。
▼近年の経済成長率
リーマンショック後の日本経済は、どのように推移しているか。一言で言えば、「停滞」と表現せざるを得ない。リーマンショックの反動で2010年はプラスになるものの、翌年2011年は東日本大震災が発生。復興に追われ、経済成長はほとんど無く、ぎりぎりマイナスを回避できるレベルに。
金融緩和を進め、企業の業績は回復傾向にあったが、国民の生活レベルは変わることなく、不景気と感じることがほとんどであった。さらに追い打ちをかけるように、2020年頃からコロナウイルスの感染拡大が開始。緊急事態宣言や自宅隔離は、経済活動を停滞させる要因となり、期待されていた東京オリンピックも不完全燃焼となった。
ここから日本はどのように経済成長を遂げていくのか。政府や日本銀行の手腕が問われている。
▼まとめ
上の表でまとめたポイントが、経済成長率のグラフにも大きな動きとなって表れている部分なので、確実に抑えておきましょう。具体的な経済の歴史については、別の投稿で詳しく解説しています。参考にしてください。
関連記事→政経講義35日本経済史⑴・政経講義36日本経済史⑵・政経講義37日本経済史⑶
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