今回はODA(政府開発援助)のポイント解説です。入試によく出る単元であり、項目やデータなどの暗記も必要です。ポイントを中心にまとめていきますので、書かれている内容は確実に抑えていきましょう。
▼ODAとは
ODAとは、先進国が実施する経済援助であり、OECDの下部組織であるDACが中心となって実施しています。この一文で英単語が3種類登場し、混乱してしまう人も多いでしょうが、ここは確実に覚えてください。OECDとは先進国の集まり、DACはその下部組織として途上国への援助を担う組織です(詳しくは政経講義65南北問題を参照)。つまり、いずれも先進国主導になります。そして、そのDACが実施する援助の名前がODAです。大丈夫ですか?整理しておいてください。
では中身に入っていきますが、ODAと言ってもさまざまな種類があります。表を参照してください。
贈与相当分(グランド・エレメント)が25%以上あればODAとみなされ、これをGNP比0.7%程度目指してやっていこう!というのがDACでの目標です。しかし、現状はGNI比上位の北欧・ドイツなどが超えている程度で、多くの国が達成できていません。日本も総額では米・独に次ぐ3位ですが、GNI比は0.34%(2021年)となっています。
ちなみに、グラント・エレメントとは、貸付条件の緩やかさを示す指標です。金利の低さや融資期間に余裕があるほど、この指標は高まっていきます。完全に返済を必要としない贈与の場合、グラント・エレメント=100%となります。途上国が返済に苦しまないよう、考慮されているんですね。マイナーな用語ですが、数年前に共通テストでも出題されたので、覚えておきましょう。
▼日本におけるODA
日本はこれまでどのような実績や特徴があるのかについて、解説していきます。まず以下の表では2020年という近年の結果しかわからないのですが、90年代は世界一の援助額を誇っていました。日本としては額が減ったわけではないのですが、他国が増加したことによって現在は3位~5位あたりの援助額を推移しています。ちなみに、2020年実績のODA総額は米・独・英が上位3位となっています。
また、以下の右のグラフからわかるように、日本は贈与比率が低い特徴があります。自立を促すため、利子をつけて貸与(借款)することを重視している訳ですが、国際的には批判対象となっています。各国のGNI比や援助額は以下のグラフを参考にしてください。
また、先ほど述べた「贈与比率が低い」という特徴は、援助対象の地域にも影響していきます。貧困レベルが厳しいアフリカ諸国では「借款」ではなく「贈与」を求める声が大きいため、日本の方針と一致しません。ゆえにアフリカを対象としたODAが少ない傾向にあります。そもそも距離的な問題もあるとは思いますが、日本の援助の中心はアジア諸国です。以下のグラフを見ても分かるように、6割がアジアを対象としています。
▼まとめ
現在の日本では景気停滞・競争力低下が叫ばれ、「他国の援助などしている場合ではない!」という批判もあります。しかし、環境破壊・感染症・テロなど、国境を越えた問題に対処しなければならない現代だからこそ、自国だけを守ればいいという考え方は通用しなくなってきました。人々が恐怖・欠乏から逃れ、尊厳ある生命を全うする「人間の安全保障」を実現できる社会を目指し、今後日本と世界はどのように関わっていくべきなのかを考えていく必要があります。読んでいただきありがとうございました。
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