政経講義60 EPA・貿易摩擦をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 日本のEPAとFTAを網羅しておく!
⑵ 外国人労働者に関するルールを抑える!

⑶ 日米貿易摩擦の歴史を抑える!

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…入試頻出の最重要事項
黄蛍光ペン…抑えておくべき重要事項

今回は貿易関連の話題として、EPAと貿易摩擦の二本立てで説明をしていきます。政経講義57で紹介した国際貿易体制政経講義58で紹介した地域経済統合が関わってきますので、2つの単元を理解したうえで本単元についても確認できると良いと思います。入試の頻出部分も多いので、ポイントを抑えながら説明していきます。

▼FTAとEPAの違い

GATT・WTOをベースとして、多国間での貿易交渉を行ってきた国際経済でしたが、近年は交渉が難航することが多くなりました。「だったら自分の都合のいい相手とだけ個別に交渉しよ~」という流れに変わっていきます。FTAとEPAは、どちらも経済に関する協定ですが、日本では連携の強さにより区別しています。以下の図を見てもらえばわかりやすいと思いますが、EPAのほうがより多くの分野で協力していくことになります。

EPAとFTAの違い

混乱しやすいので、FTAは”Free Trade”だから貿易協定EPAは”Economic Partner”だから経済全体の協定と覚えておきましょう。基本は二か国間で関税の撤廃やさまざまな市場開放などを決めていきますが、対ASEANや対EUなどのように複数国間で結んでいるものもあります。FTAからEPAになることで、「ヒト」の移動や、「知的財産権」の保護などが含まれていく点は頻出ポイントです。

▼日本の動向

日本のFTA・EPA

では、日本の現状はどうでしょうか。ここは頻出ポイントが多いので要注意です。まずそもそも日本はWTO体制を支持しており、FTA・EPA締結には消極的な姿勢でした。しかし、2002年に初のEPAとしてシンガポールとの締結に至ります。年号と国名は暗記。それからは東南アジア諸国や環太平洋地域、EUなどが主な締約国となっていきます。2024年12月現在の締約国は、以下の通りです。

日本のFTA・EPA

別のポイントとしては、インドネシア・フィリピン・ベトナムからは、看護師・介護福祉士の候補者として、「ヒト」の受け入れを行っている点や、ASEAN(2008)・TPP11(2018発効)・日欧EPA(2019発効)など、経済規模が大きい協定を結んできた点が挙げられます。前者の看護・介護候補生については、後で詳しく説明します。

TPPはアメリカが交渉していたものの、第1次トランプ政権時の2017年に離脱を表明。残った11カ国でTPP11としての発効となりました。2023年にはイギリス加盟が正式承認され、12カ国体制となっています。

日欧EPAは、世界のGDPの約30%、人口は6億人を超える大規模経済圏です。ワインやパスタ、日本酒などの関税が即時廃止され、豚肉・牛肉などの関税も引き下げられる予定です。

外国人労働者

日本は外国人労働者の受け入れに消極的な立場でした。しかし、近年の国際貢献の流れ、日本国内の人手不足問題もあり、受け入れ拡大へと方針転換しています。EPAによる介護福祉士候補者の受け入れもその一環ですが、日本語の勉強も必要であるがゆえに合格が難しく、途中で自国へ帰ってしまうパターンも珍しくないようです。今後の人手不足への対策が急務となっています。

また、改正入管法(2018)により、外国人労働者の受け入れ拡大を目指しています。農業・建設・介護などの14業種は「特定技能1号」として最長5年の滞在が可能です。さらに試験に合格すると、家族の帯同も認められ永住が可能となります。合わせて、これまで禁止されていた「単純労働」の就労も、実質的に認められるようになりました。

▼貿易摩擦とは

最後に貿易摩擦について。貿易摩擦とは、輸出入のバランスが悪く、一方の国が不利益を受けることから生まれる衝突を指します。主に日米貿易での歴史が頻出です。日本は戦後、輸出によって経済成長を遂げてきた国で、1970年代だけでも輸出額が約4倍となるほどの成長速度でした。その中で最大貿易相手国であったアメリカとは、一方的な黒字状態が続き、80年代後半には経済摩擦へとつながることとなります。

日米貿易摩擦の歴史は以下の年表を参照してください。その年代によって問題の原因となった品目は変わっています。貿易摩擦自体は1950年代から続いていましたが、それが経済のあらゆる面での対立となる「経済摩擦」にまで発展したのは80年代以降でした。本格的に2国間での協定が結ばれ始めた80年代~90年代の内容は、名前も内容も混同しやすいので注意しましょう。

日米貿易摩擦の年表

近年、日本の最大貿易相手国は、アメリカから中国へ移り変わっています。また、アメリカにとっても最大の貿易赤字国は中国となっており、特に前回のトランプ政権時には互いの関税を引き上げ続ける、激しい経済摩擦が生じました。世界経済の覇権争いが目に見える形となっていますが、いずれの国とも関係の深い日本は、米中貿易摩擦の影響を強く受けることになりました。貿易や外国に関わらず、国内で強い経済を復活させることが求められています。

▼まとめ

FTAとEPAの違いや貿易摩擦の協定など、混乱しやすい内容が多い範囲です。地図や表も活用しながら、視覚的に整理することも効果的です。ぜひ定着させて得点源にしましょう!

読んでいただきありがとうございました。

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