今回は地域経済統合について。政経講義57で戦後の国際貿易体制について紹介しましたが、理想とされていた「多各国間」での取引は難航することになります。全体で無理なら自分たち独自で連携を強めようという流れに変わり、近年は特定の国や地域間での協定締結が推進されてきました。各協定がどのような加盟国で構成されているか、どの程度の関係性なのかなどを抑えていきましょう。また、その中でもEUに関する出題は別格で多いので、必ず理解できるようにしましょう。EUについては内容量が多いため、次のまとめにて(政経講義59 EUの成立)紹介します。
▼各地域での経済統合
ひとまず、世界中でどんな経済統合が結ばれているのか、地図や表でざっと確認してください。アルファベットで覚えることが多いですが、日本語読みも覚えておくと参加国のイメージがつきやすくなります。例えば、APECはアジア太平洋経済協力会議なので、アジア各国や太平洋に面した北米・中南米・オセアニアなどが参加しているな…という感じです。TPPも環太平洋地域を対象としており、重なっている国も多いので、区別できるようにしておくといいでしょう。
これらの地域は、日米中韓といった経済主要国に加え、北米やオセアニアの天然資源、東南アジアの農産品・人的資源など、多様性に富んだ経済圏となります。TPPについては他にもポイントが多い分野なので、後にある講義60自由貿易協定にて解説します。
・ASEAN
ASEANは東南アジア諸国連合といい、1993年に発足した組織です。この組織を中心として結んだ経済協定がAFTAといい、これをベースにさらに連携する分野を拡大したものがAECです。10カ国で成り立つASEANですが、GDPの割合でいうと、タイとインドネシアで全体の約半数、シンガポールとベトナムを加えた4カ国で全体の約75%を占めます。東南アジアはマニアックな地域ではありますが、念のため覚えておきましょう。どこかで役に立つかもしれません。
・USMCA
これは北米地域での自由貿易協定で、2020年に発足した新しい組織です。とはいえ、もともとNAFTA(94年発効)という協定があり、それを包括的に見直したものです。見直しとはいっても、自由化路線からは改悪といえる内容で、自動車分野の関税規定がより厳しくなるなどのアメリカ保護的な政策が含まれます。これは、アメリカの対カナダ・メキシコとの貿易赤字が深刻化したことが原因であり、2024年に再任したトランプ大統領は、対メキシコへの自動車関税を拡大する主張もしています。アメリカ第一主義を掲げるトランプ政権下では、保護貿易傾向はより強まると考えられています。
・それぞれの経済規模
グラフやデータの読解問題で、各経済統合のGDPや人口などの一致を問うものがあります。数字まで暗記する必要はありませんが、だいたいの規模をイメージできるようにしておきましょう。
GDPについては、アメリカ・中国・日本で約半数弱を占めるため、日米がともに参加するAPEC全体では、世界の約6割のGDPを誇ります。また、GDP上位国が多いEU全体では、全世界の18%ほどを占めています。東南アジアを中心とするAECは、GDPでは世界全体の3~4%となっていますが、人口で比較するとEU(4.5億人)やUSMCA(5億人)よりも多い6.7億人となります。人的資源が豊富であることが大きな強みということがわかります。(※人口は2021年データ)
ちなみに、人口の世界2トップは中国・インドで約14億人、それに次ぐのがアメリカで約3.5億人なので、いかに2トップが圧倒的であるかがわかりますね。データを読み解く問題では鍵になる知識です。もう少し補足すると、EU全体ではアメリカより少し多い程度、日本は約1億人でアメリカの1/3程度となります。
▼日本を取り巻く経済統合
ここでは、日本が参加するものに焦点をあてて紹介します。先ほど出たものと重なる場合もあります。とりあえず作成した図を見てください。
日本は貿易相手国として中国・アメリカが大部分を占めますが、近年は東南アジアやEUとの連携にも積極的です。近隣国だけでなく、東南アジアやオセアニアを含むRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)や、EUと締結した日欧EPAなどが一例として挙げられます。決して関係性が良いとは言えない状況ではありますが、日中韓EPAの締結に向けて交渉中という動きも見せています。
アメリカと中国は世界のトップ2として互いを牽制しあっており、両者の間で協定が結ばれにくくなっています。アメリカが離脱したTPPには中国が加入申請していますし、アメリカ主導で結成したIPEFはインドを引き入れましたが、中国は加入していません。また、アメリカは大統領が変わるごとに加入離脱が変化することも珍しくなく、先述したIPEFについてもトランプ大統領が破棄する…?という話も出ています。このように、両国が関わると紛らわしい内容も出てきますが、最低限日本が関わる部分だけでも丁寧に抑えるようにしましょう!
▼まとめ
以上が地域経済統合についてのポイントになります。冒頭にも書いたように、最も頻出のEUについては次の講義でまとめます。ぜひ読んでください。
過去問演習にチャレンジ!→政経演習47地域経済統合
一問一答問題にチャレンジ!→ 一問一答国際12地域経済統合
授業プリントはコチラから!→ プリントダウンロード
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