はじめに
新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題に対応できる授業を考えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なのでできるだけ新たな挑戦を組み込んでいきたいとも思っています。
私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。
関連 : 授業プリントのページ
作業ネタの設定単元
今回の作業ネタは、財政の中の「租税」の授業で実施しました。租税の種類や性質を学ぶきっかけとして、どのような税の集め方が公平だろうか?という問いを設定しました。
公平には垂直的公平や水平的公平という、異なる考え方があります。いずれの考え方もメリット・デメリットがあることを学び、今後の税のあり方について考えてもらうことが基本的な狙いとなります。
さらに、その考えたものを現実に社会に置き換えて、所得税や消費税がもつ性質を理解できるようにまとめていく流れです。参考になれば幸いです。
作業の流れ
(ⅰ)みんなで橋を作ろう!お金をどう負担する?
今回の目標は「異なる経済力をもつ人たちで、どのように分担するのが公平か」を考えさせることにあります。みんなで使う橋をみんなでお金を出し合って建てるという設定は、現実的ではありませんが、あくまで公平についての考えを深めるためなのでスルーしてください。経済編のプリントで実際に作業のワークシートを掲載しているので、ご覧ください。(プリントダウンロードのページ▶「経済25財政のしくみ」)
先ほども言いましたが、現実離れしている点はスルーです。Point➀にある「橋はみんな同じくらい使う」という設定と、一番下にある「貯金はあって年収以上のお金でも出せる」という設定は重要です。丁寧に説明するといいでしょう。
(ⅱ)作業の展開
グループでどのような税負担が公平か考えさせます。10分程度あれば、意見はまとまっていくと思います。この時に、実際にそれぞれの家を指定するとより面白いかもしれません。1班は一郎家、2班は次郎家…と仮定し、それぞれの立場に立って考えさせるということです。こうすることで、収入の違いによって意見が変わってくることを実感させることが出来ます。
では、本題に移ります。意見をまとめた後、いくつかの班に発表をしてもらいましょう。どのように分けたか、なぜそう考えたかなどを簡単に発表させます。分け方としては大きく分けて3つ。1つ目は6000万円を6家族で純粋に分担すれば、1家1000万円ずつの負担が妥当であるという考え。2つ目は6家族の総収入が1.2億円に対して必要なお金が6000万円なので、それぞれ年収の50%を負担すればちょうどいいという考え。3つ目は、累進課税制度を意識して、高収入世帯に高い比率で負担を求める考え。
パターン①の同じ額は「自動車税」「酒税・たばこ税」などに関連。収入に関係なく、同じ額を負担させる考え方です。
パターン②の同じ比率は「消費税」に置き換えられます。同じ比率と聞くと公平と感じますが、収入が低い世帯は残るお金が少なく生活が苦しくなります。このように、消費税は収入が低いほど負担が大きくなりやすい性質があり、これを逆進性といいます。
パターン③の収入で負担比率を変動させるのは累進課税制度に置き換えられます。日本において累進課税が採用されるのは「所得税」「贈与税」「相続税」など。一郎・次郎家あたりの班からは、何でこんなに払わなかんのじゃ!と文句が出るかもしれませんが、最も現実に近いと言えます。所得税は5%~45%の範囲で設定されており、高収入世帯には不公平感を感じさせるしくみとなっています。
(ⅲ)他の考え・まとめ
以上のような考えが主流となりますが、班によっては細かい案を練ってくれることもあります。例えば、最低限生活に必要な額を設定し、それを超える部分から税を集める方法。(累進課税制度の「超過累進課税」という種類に近い考え方) 六郎家は税負担がほとんど無い分、上の家族の負担は多くなっていきます。
他には、できるだけ負担の差が無いように一定の金額だけ集めて、足りない分はその後の使用状況により負担させる考え方。使った分だけ負担させるということです。
色々な考え方が出ると、意見交換も活性化します。教員としては、生徒の出した意見を現代社会の税制に当てはめて説明する時間が重要です。最終的に現実の租税問題への理解にも繋げることを意識して準備してください。
実施した後の反省点
よかったら試してみてください!
今回の作業は、本サイトの「授業プリントのページ」にて掲載されている「経済25財政のしくみ」にも載っています。授業プリントの方もよかったら参考にしてください。質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。
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