公共授業ネタ09 これからの日本財政を考える

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題に対応できる授業を考えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なのでできるだけ新たな挑戦を組み込んでいきたいとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、「財政の課題」の授業で実施しました。少子高齢化の進行や借金への依存が進み、日本財政が維持できない危険性を学んだうえで、今後どのような方法で健全化すべきだろうか?という問いを設定しました。

経済の話なので、厳密に考えようとすると数時間の授業を設定しなければなりませんが、そんな時間はありません。今回はあらかじめ考える立場に制限をかけ、その中でどのような対策ができるかを議論させようと思います。

今回の教材は、財務省のホームページで公開されている授業案を参考に作成しています。授業づくりに役立つ資料が多いので、ぜひご覧ください。皆様の参考になれば幸いです。

作業の流れ

(ⅰ)これから日本財政はどう進むべきか?

今回は、社会保障支出と国民負担率のバランスについて取り上げ、これをどう改革していくべきか?という問いをテーマとしました。以下がプリントの内容です。(公共32「財政の課題」より抜粋【プリントダウンロードのページ】)

他の先進国と比較して、日本は受益と負担のバランスが悪い国です。少子高齢化が進むことで、さらに高福祉(縦軸が上)の方向へ動くことが予想されています。このバランスを調整するためには、「縦軸を下へ動かす」か、「横軸を右へ動かすか」という2択が基本です。どちらがいいでしょうか?と2択にして、考えをまとめさせることにしました。現実の経済は複雑で、考えが広がりすぎるとまとめることが大変になってしまうので、2択に指定して意見の集約をしやすくする狙いがあります。

さらに、これを考える材料として、何に支出しているのか(社会保障の内訳)と、何で負担してもらっているのか(租税の割合)を提示しています。以下を参照してください。

今回は掲載していませんが、国民負担率や社会保障支出を諸外国と比較したグラフなども効果的だと思いますので、時間がある限りさまざまな資料から考えさせると良いのではないでしょうか。

(ⅱ)作業の展開

今回の作業は基本的に個人で行います。自分なりに考えまとめたものを、後からグループ内で共有するようにしました。私の職場ではロイロノート・スクールというICT教育補助ソフト(アプリ?)が使用できるので、それぞれの意見をシートにまとめ、提出箱に集約しました。

提出箱に入ったものは、クラス全員で共有することが可能です。その時に、縦軸を動かす人は黄色のカード、横軸を動かす人は緑のカード、その他の考えはピンクのカードというように色分けさせると、一覧で見た時に一目で誰がどのタイプの意見をもっているかが分かります。

今回の作業では、日本がどのような方向性に進むのかという方策を、様々な面から見られるようになることが目標です。どの方策にしても、不利益を被る人や負担が重くなる人がどこかで出てきてしまい、これが正解というはっきりしたものはありません。

その中で、少しでも国民の理解を得られて、経済の安定に繋がるものは無いか、真剣に考えてもらいたいと思います。さらに、それらの方策をしたらその後の日本経済がどうなるか、という点まで想像をしてもらいたいと思うので、発表後の対話も重視すべきかと考えます。

以下のような答えが想定できるので、どのように対話を広げ理解を深めていくか、準備をしておくと良いでしょう。

生徒の意見が出そろったところで、「今の政府はどう考えているか」という点を最後に紹介するといいでしょう。現代社会への理解が深まると思います。厚労省の社会保障改革に関するページ(社会保障改革 |厚生労働省 (mhlw.go.jp))などが、参考になるかもしれません。

実施した後の反省点

かかった時間

全体で25分程度、考えてまとめる作業が10分、共有5分、発表+対話で10分くらいの配分です。対話をどこまで深めていくか、どれだけ意見を拾い上げるかによって、1時間まるまる実施することも可能だと思います。それぞれのペースや学力レベルに合わせて実施してみてください。

反省点・よかった点

考えるための材料がもう少しあってもよかったと感じます。また、お金をどう調達するのかという方法だけで終わってしまう生徒がいるので、もう少し深めていきたい。例えば、「医療保険の自己負担率を減らせばよい」という考えだけで終わってしまうのではなく、どうしたらそもそも病院にかかる人が減るだろうか、それによりどんな悪影響があるか、というところまで考えられると、政策案により深みが出ると感じます。作業の様子をみて声掛けできるといいかもしれません。

よかったら試してみてください!

今回の作業は、本サイトの「授業プリントのページ」にて掲載されている「公共32財政の課題」にも載っています。授業プリントの方もよかったら参考にしてください。質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

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