政経講義44 環境問題をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 日本の環境問題
⑵ 国際的な環境問題
⑶ 地球温暖化対策

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

今回は環境問題についての解説。労働問題や社会保障と同様に、共通テストの頻出単元かつ小論文のテーマとしても重要な項目となる。共通テストだけに限れば、覚えておけば解ける問題も多いので、取りこぼしが無いように理解していきましょう。

▼日本の環境問題

日本における環境問題について、ポイントを紹介していきます。まずは年表でざっくりと流れを確認しましょう。

日本における環境問題年表

日本の環境問題の背景

まず環境問題が表面化したきっかけが、1960年代の四大公害訴訟水俣病(熊本)・新潟水俣病(新潟)・四日市ぜんそく(三重)・イタイイタイ病(富山)を総称した四大公害は、工場廃水や有毒ガスが原因で多くの被害者を出した。当時、経済成長に集中していた日本であったが、この訴訟でいずれも患者側が勝訴し、公害に対して取り組む姿勢を大きく変えることになった。1967年に制定された公害対策基本法、1971年の環境庁設置などは、公害からの流れで覚えておきましょう。

ちなみに、環境庁は2001年の中央省庁再編により環境省へと格上げされている。

環境アセスメントについて

環境アセスメントとは、環境破壊を未然に防ぐために、環境破壊を引き起こす可能性のある事業の事前調査・評価をするというもの。この調査により環境への影響を分析し、場合によっては計画の変更を行っていく。ここで気を付けたいのが、日本では国全体より先に地方で導入されているという点。1976年に環境影響評価条例が川崎市で成立し、この市内限定の制度として始まっているが、国全体としては1997年の環境影響評価法(環境アセスメント法)からとなっている。

日本の環境保全活動

■ナショナルトラスト運動
自然や歴史的産物を開発から守るために寄付金を集め、土地の買取や寄贈を受けることで保存する運動。日本では知床国立公園での100平方メートル運動が有名。
■環境ISO14001
ISOとは世界の規格を統一する組織の略称。「ISO14001」は企業や組織が環境保全に取り組んでいるかの審査を行い、基準を満たしていれば認証されるもの。いわば、世界基準で環境に優しいと認められることになる。日本はこの登録が多い傾向にある。

▼国際的な環境問題

続いて国際的な環境問題への動きについて。先ほどと同様にまずは年表から紹介します。

日本における環境問題年表

環境問題に関する条約

環境問題はある特定の地域に限定されず、地球全体に影響を及ぼすものが多い。そのため、多くの国が参加する形での条約がいくつか結ばれており、入試の頻出ポイントにもなっている。名前と内容を一致させられるように覚えていけば問題なしです!

環境問題に関する条約

■ラムサール条約(1971)
イランのラムサールで採択。水鳥の生息地として重要な湿地を保護する条約
■ワシントン条約(1973)
絶滅危機にある動植物の保護を目的とする条約
■バーゼル条約(1989)
有害廃棄物の輸出や、処分・規制などを定めた条約
■モントリオール議定書(1987)
オゾン層保護のためのウィーン条約を具体化した条約
■ヘルシンキ条約(1989)
オゾン層保護のため、20世紀中にフロンガスを全廃する条約
■生物多様性条約(1992)
特定の地域や種の保護ではなく、生態系や遺伝の多様性を考慮して生態系保全を目指していく条約。
■カルタヘナ議定書(2000)
生物多様性に関連し、バイオテクノロジーで創り出された生物のうち悪影響を及ぼす恐れがあるものに対して、輸出入規制などが盛り込まれたもの。

環境問題へ取り組む国際会議

国連が主催する大規模な環境・開発を議題とする会議は、1972年の「国連人間環境会議」(ストックホルム会議)から、1982年の「ナイロビ会議」、1992年の「国連環境開発会議」、2002年の「環境開発サミット」(ヨハネスブルグ・サミット)というように、10年ごとに開催されている。

その中でも特に入試に頻出なのが、1972年の国連人間環境会議と1992年の国連環境開発会議である。それぞれのポイントを抑えていきましょう。

■国連人間環境会議(1972)
 ・ストックホルムで開催
 ・スローガンは「かけがえのない地球」
 ・国連環境計画(UNEP)を設立

■国連環境開発会議(1992)
 ・リオデジャネイロで開催
 ・「リオ宣言」採択
 ・「アジェンダ21」採択
 ・生物多様性条約調印
 ・気候変動枠組み条約(地球温暖化防止条約)調印

どの会議でどんな内容の議論がなされたか、区別ができるようにしておきましょう。

▼地球温暖化の対策

温暖化対策の歴史

地球温暖化は近年言われ始めたもので、本格的な温暖化対策の開始も1992年の気候変動枠組み条約からとなる。主要な会議は少ないので、各会議の細かい内容まで問われることが多いです。

温暖化対策の歴史

気候変動枠組み条約 採択(1992)
 ・温室効果ガス濃度の安定化を目標。
 ・1995年より締約国会議(COP)の開催を決定。
温暖化防止京都会議[COP3](1997)
 ・京都議定書の採択:温室効果ガス排出量の削減目標設定
 ・アメリカが後に離脱
ドーハ合意[COP18](2012)
 ・京都議定書の延長を2013~20に設定。日露は不参加。
パリ協定[COP21](2015開催・翌年発効)
 ・すべての国が温室効果ガスの削減に努力
 ・2021年にアメリカが復帰

京都議定書とパリ協定

温暖化対策のうち、特に比較して出題されるのが、京都議定書とパリ協定になる。それぞれの特徴を抑えながら、混同させないように覚えていきましょう。

京都議定書のポイント

排出権取引とは、目標の過不足分を取引で解決すること。例えば、目標まであと100トン足りない国があるとして、目標を超えている他国に対してお金を払い、その100トン分の枠を譲ってもらうというイメージ。そうすることで、地球全体としては目標を達成できるようになる。

京都議定書はアメリカが離脱しただけでなく、日本やロシアが延長をしなかったなど課題がが多く残った。それに代わる協定として結ばれたのがパリ協定である。

パリ協定のポイント

京都議定書との大きな違いは、先進国のみの目標だったのが、すべての国の目標へ変更となった点。2019年のデータでは中国(29.4%)やインド(6.9%)、南アフリカ(1.3%)、イラン(1.7%)などの新興国や途上国も二酸化炭素の排出量が多く、先進国が3割・発展途上国が7割という割合であった。この状況下で、先進国だけに削減を求めるのはどうか?となった。その分、途上国の目標達成は自主性に任せる形で、義務ではなかった。

また、アメリカについては、オバマ大統領時に加入を果たしたものの、後を継いだトランプ大統領は温暖化に対して懐疑的な立場であり、パリ協定の離脱を表明した。その後、バイデン大統領の就任に伴い復帰を果たしている。

▼まとめ

以上が環境問題についてのポイント。内容量は多い単元であるが、意外と覚えてしまえば解ける問題も多い。温暖化に対しての各国の立場なども、小論文のテーマとして理解しておくといいと思います。しっかり復習しておきましょう!読んでいただきありがとうございました。

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