今回は消費者問題についての解説。共通テストでは1年に1問出るかどうか…というマイナーな単元ではありますが、皆さんが社会に出てから巻き込まれる恐れもあるような身近な話です。社会勉強も兼ねて、丁寧に理解していきましょう。
▼消費者問題の具体例
消費者問題の歴史
消費者問題は、生産者と消費者の間で持つ情報が異なること(情報の非対称性)、広告や宣伝に個人の消費が影響されること(依存効果)、他人の消費に個人の消費が影響されること(デモンストレーション効果)などが原因となる。消費者は企業や生産者より弱い立場にあり、冷静な判断を失うことでさまざまな問題が生じてきた。
森永ヒ素ミルク中毒事件(1955)やカネミ油症事件(1968)のような食品被害、サリドマイド事件(1960頃)や薬害エイズ事件などの薬害事件をはじめ、近年は悪質商法や契約トラブルなどの消費者問題も発生している。
悪質商法とは?
悪質商法とは、消費者に取引を持ち掛けてお金をだまし取る手口のこと。成人年齢が18歳以上に引き下げられたことで、誕生日を迎えた高3生も契約を結べることになり、悪徳業者のターゲットになりやすくなっている。(※未成年の場合は、判断能力が乏しく契約を取り消すこともできたが、成人年齢引き下げにより18・19歳は認められなくなった。)
主な手口として、新たな会員を勧誘することで利益が得られる儲け話に乗ってしまい損をする「マルチ商法」、駅前や繁華街で声をかけ、喫茶店や営業所に誘い込み購入を迫られる「キャッチセールス」などがある。
近年はSNSを通じたエステや脱毛サロンの割引広告をきっかけに、後に大きな契約を結ばされる被害や、メールのURLからクレジットカードの情報を引き出す詐欺なども増加している。「簡単に儲かる話はこの世に存在しない」と強く認識しておこう。
▼借金について
1980年代ごろからクレジットカードの普及が加速し、現在は人口の2倍以上のカード発行数があると言われている。後払いで買い物ができる点は魅力である反面、一時的だとしてもそのお金は借金である。カードの使い過ぎや、消費者金融のキャッシングの利用により、多重債務を抱える人が増え、最悪の場合「自己破産」を選択することになる。
▼消費者を守る制度
上記のような消費者問題から守るための制度がいくつか存在する。受験での頻出ポイントを重点的に解説していきます。
消費者保護の歴史
消費者問題が深刻化するアメリカで、ケネディ大統領が示したものが「消費者の4つの権利」である。4つの内容も含めて出題されることが多いため、漏れの無いように覚えておきましょう。
製造物責任法
1994年の製造物責任法(PL法)は超頻出。よく出過ぎてもう受験問題には登場しないのでは…と思うくらいよく出ます。
ポイントは「製造者に過失が無くても」という部分。製造者の過失に関係なく、製造物によって何かしらの被害を受けた場合に適用される(無過失責任)。例えば、「普通に使っていたテレビが突然発火した」「本来ない部分に突起物がありけがをした」など、無過失の場合でも損害賠償を負うことがある。
この法による訴訟の具体例として、2008年に当時1歳の男の子が凍らせたこんにゃくゼリーをのどに詰まらせて亡くなった事故がある。こんにゃくゼリーは弾力性が強く安全面に欠陥があるとして、PL法に基づき損害賠償が請求された。判決結果としては訴えが棄却された形にはなったが、消費者の訴えが尊重される場が増えてきたのは確かである。
このような情勢に伴い、生産物の警告マークや注意書きにも変化が生じている。「こんなことわざわざ書かなくてもわかるわ!」と言いたくなるくらい丁寧に注意書きがされている商品もよく見るようになったが、消費者を守るための努力である。
クーリングオフ制度
もう一つ、消費者保護の観点から知っておいて欲しいのが「クーリングオフ制度」。訪問販売やマルチ商法など、強引な勧誘により契約してしまった場合にそれを解除できる制度。この制度は特定商取引法や割賦販売法などに規定されている。
▼まとめ
以上が消費者問題についてのポイント。もちろん受験のために必要なことは間違いないが、自分たちが被害に合わないためにも大切な知識。どのような具体例があるかを知っておけば、いざ巻き込まれたときに気づくことができるし、使える制度を知っておけば冷静な対応も可能となる。自分の将来のためにも、しっかりと復習しておきましょう!
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