今回は前回に引き続き自由権について。精神の自由に関する投稿はこちらを振り返ってみてください。(→政経講義10 自由権⑴)
今回メインとなるのは、自由権の中でも「身体(人身)の自由」と呼ばれるもの。国から不当に拘束されたり、不当に逮捕されたりしないよう、さまざまなルールが作られている。実際に逮捕されたらどのような流れで手続きが進むかや、それぞれの段階でどのような権利が保障されているか、ポイントを抑えながら紹介していく。
▼刑事手続きの流れ
大日本帝国憲法下で、人権を無視した拷問・不法監禁を行っていた過去を反省し、日本国憲法では第31条~40条にわたって詳細に刑事手続きを定めている。必要以上の苦痛を被疑者や被告人などに加えるべきでないという精神のもと定められた規定を、順にまとめていく。
逮捕~勾留までの流れ
まず、逮捕~勾留までの流れをまとめたが、ここでのポイントは逮捕について。逮捕の際には「逮捕状」と呼ばれる令状が必要となり、強制的な逮捕が安易にされないようになっている。これを令状主義という。
逮捕された後は、取り調べを経て警察から検察へと身柄が引き渡される。逮捕から48時間以内に送検、送検から24時間以内に勾留となっており、必要以上に身柄を拘束できないようになっている。この間の取り調べにおいて、自己に不利益な供述や意思に反する供述をしなくてよい「黙秘権」が保障されていることも重要ポイントだ。
勾留~裁判までの流れ
勾留された後、検察により起訴するかどうかが決定される。いざ裁判となれば、公平に裁判を受けられるように、国費で弁護人をつけられる「弁護人依頼権」が認められている。裁判の結果、有罪となった場合にも残虐な刑罰は禁止されているなど、受刑者に対しても不当な拘束はしないよう配慮されている。
以上のような権利が保障されているが、現実には強引な取り調べや、警察留置所・拘置所での長時間にわたる拘束で被疑者を心理的に圧迫することはあり、冤罪が全くないとはいえない現状がある。
取り調べの可視化が進んではいるものの、多くの事件では可視化が義務付けられていなかったり、自白による証拠を重んじる警察や裁判官の姿勢があったりなど、このような捜査・裁判のあり方を変えていく必要があるといわれている。
▼経済活動の自由の判例
最後に、これまで紹介していなかった「経済活動の自由」について。これは職業選択の自由や財産権の保障、営業の自由などに細分化されるが、この自由は規制されることも多い。
例えば「医者になりたい」と思う人が皆、自由に医療行為をできたらどうなるか。人々の生命が危機にさらされてしまう。そのため、国家資格が必要となり、それが取得できない場合は医者になることはできない。このように、公共の安全を守るために多少の規制が隣り合わせになっているのが、経済活動の自由の特徴である。あとは判例を見て具体的なイメージを付けていこう。
薬事法距離制限訴訟(1975最高裁判決)
この判例は職業選択の自由に関連する判例であり、最高裁で違憲判決が出ていることからも頻出判例となっている。この薬事法での距離制限も、上記に述べた規制の1つ。薬局が密集して競争が過激になった場合、不良薬品の供給に繋がるのではないか…という懸念を基に作られた。
最終的に、「薬局が近い=不良品が出回る」という理論が合理的でないとして、違憲判決・規制無効となっているが、職業の自由に一定の規制が為されている事例として覚えておきたい。
森林法共有林分割制限違憲訴訟(1987最高裁判決)
次に、財産権の保障に関連する判例を紹介する。
この判例でも、先ほどの薬事法距離制限訴訟と同様、最高裁にて違憲判決が出されている。森林保護という目的のために、共有林の扱いについて規制をかけたものであるが、必要以上の規制であるとして廃止されている。
以上のように、必要だとして作られた規定であっても、それが過剰であると議論されることになる。そもそもの目的が間違っているわけではないため、「どこまで規制をかければいいのか」という線引きが非常に難しいところでもある。時代や経済社会の変化は今後も続くため、同様の事例は増えていくのではないだろうか。憲法であろうが法律であろうが、その都度考え、必要に応じて変化させていく姿勢が重要になる。
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