公共授業ネタ21 死刑制度の是非

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、司法制度の単元で実施しました。正直このテーマは公民の定番で、中学校でもすでに学習済みかと思います。それでも裁判員裁判が始まった以上、誰もがそれに選ばれ、誰かを「死刑にするかどうか」と判断しなければならない場面を迎える可能性があります。触れずには通れないと考えました。定番であるがゆえ、各教材出版社も大体テーマ学習として特集を組んでおり、どの教材を使っていても学習できるでしょう。

初めに言っておきますが、今回の授業案は改めて掲載するほどの新鮮さは無いと思います。内容が内容だけに、深入りしすぎると過激になってしまう恐れもありますし、斬新さを狙っても人の死が関わる以上ネタ選びに気をつかいます。さまざまな視点から考えてほしい狙いもあったので、無難な内容で多くの考え方を紹介することにしました。ネタとしては普通の授業ですが、プリントや授業進行の面で、皆さまの参考になるものがあればと思います。

⑴死刑制度の情報整理

授業を通して立場の変化があるかを調べたかったので、現状どちらの立場(存続or廃止)かのアンケートだけ、冒頭部分で実施しました。

まずは考えるにあたって必要な知識の整理からです。今回は以下のように5つの論点に分けながら、各立場の意見をまとめていきます。ネットで調べるときりがないので、資料集や教科書のある程度まとまったものを参考にさせる方が良いと思います。(メインはここではないので)

記入例入りの表を載せておくので、参考にしてください。

死刑制度に対する主張

他にも、各立場に関連する主張や根拠も提示して、考えを深めさせたいと考えました。実教出版さんの資料集「ズームアップ公共」に付録でついているワークブックを、参考にさせていただいています。このテーマ以外にも多くの単元が掲載されていて、主体的・対話的な授業をするには参考になる冊子です。

⑵観点ごとの検討

それでは、本授業のメインとなる部分です。さまざまな根拠や主張を学んだうえで、自分の考えをまとめていきます。今回は観点を3つに分け、自分の考えをまとめさせていきました。大体5分程度、遅くとも10分はかからないので、個々の考えがまとまり次第、グループワークにて共有させました。お互いの発表ののち、自由に議論させてみましたが、それなりに活発な話し合いとなっていました。

ただし、どうしても存続派の方が数としては優勢となってしまいがちなので、班員が全員存続派だったりすると盛り上がらない可能性も…というのが注意点です。

(3)今後死刑制度はどうすべきか

ここまで終わったら、最後のまとめです。活動を通して「死刑制度をどうすべきか」を改めて考えさせましょう。逆の立場に誘導したいわけではありませんが、冒頭の時と比較して少し変わった感情が芽生えていると、いいのではないかと思います。

これは以前の記事でも紹介したことはありますが、ロイロノートの提出箱機能を活用し、クラス全体で振り返りを行いました。立場によってカードを色分けすることで、それぞれの主張をピックアップしやすくなります。

生徒の主な意見

≪存続派≫
・死刑が執行されることで、遺族が前を向くきっかけとなる
・再び社会に出てくる恐怖をもたらすことは避けるべき
・遺族が犯人に危害を与えに行く可能性もある
・死刑を廃止したとしても、結局長い時間拘束されることは変わらないので生き地獄。
 冤罪のリスクは別問題として考えるべき
・現代の技術では証拠の正確性や取り調べの透明性も上がっている。冤罪の可能性は0に近い。

≪廃止派≫
・遺族が全員死による償いを求めているとは限らない
・刑務官の精神的負担
・終身刑にすれば、再犯の可能性は潰せる
・死刑をしたとしても失われた命は返ってこない
・労働などで罪を償わせることも検討

まとめ

非常に扱いにくい話題ではありますが、冒頭にも述べたようにいつ私たちがこの判断を迫られるかはわかりません。感情的になって判断するのではなく、多様な視点から考えを持てるといいのではないでしょうか。おそらく今後の日本社会において、議論され続けるテーマになると思うので、その第一歩として今回の授業が役に立てばと思います。

実施した後の反省点

かかった時間

全部で50分程度

反省点

無難な根拠が多かったからなのか、思ったほど意見の広がりが感じられませんでした。意見が収束してしまうとグループワークをする意味も無くなってしまうので、もう少し思考を揺さぶれる何かが必要だったと感じます。特に廃止派に立って考えさせられるようなネタが必要になりそうです。改善が必要。

よかった点

観点別に自分の考えをまとめさせたことで、半強制的にさまざまな視点から考えを巡らせることができたと思います。これが無ければ、「遺族がかわいそうだから」「凶悪犯に更生の余地なし」といった淡白な意見だけで終わってしまう生徒も多く出たと思います。

よかったら試してみてください!質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

授業プリントも参考にしてください!→プリントダウンロード

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