問1 次の文章は,朱熹と王陽明の「格物」の理解についての説明である。文章中の[ A ]・[ B ]に入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
朱熹は,『大学』の「格物」という言葉を「物に格(いた)る」と読み,修養を重んじるだけでなく,事物の本質を把握しようとする[ A ]も重んじた。これを受けて,王陽明は7日間,目の前の竹を見続けて憔悴の余り病気になった。こうした失敗から,王陽明は,心こそが理であると考え,「格物」を「物を格(ただ)す」と読み替えて,万人に備わる「[ B ]に従えば,誰でも,その時々における正しい行いをすることができると説いた。二人の主張の背後には,経典解釈の違いがあったのであった。
① A 居 敬 B 良 知 ② A 居 敬 B 忠 恕
③ A 窮 理 B 良 知 ④ A 窮 理 B 忠 恕
問2 儒教と仏教における真理の探究についての思想の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 朱熹(朱子)は,人の持つ本性とは天理にほかならないと考え,心の内にのみ存在する天理を探求していく必要性を説いた。
② 朱熹(朱子)は,自己の修養により天理に従うことは,家庭や国家,最終的には天下全てがうまく治まることにもつながると考えた。
③ ブッダは,正見などの八つの道を集めて八正道として説き,苦しみを滅する実践の集成である集諦として教えた。
④ ブッダは,菩提樹の下で苦行の実践を重ねることで悟りを開き,インドの各地を遍歴して,その内容を人々に説法した。
問3 朱熹(朱子)の理と気についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 心のなかにのみ存在する理を規範とし,非物質的な気を媒介として,物質としての万物が形成される。
② 万物に内在する理を規範とし,物質的な気が運動することによって,万物が形成される。
③ 心のなかにのみ存在する理を規範とし,物質的な気が運動することによって,万物が形成される。
④ 万物に内在する理を規範とし,非物質的な気を媒介として,物質としての万物が形成される。
問4 次のア~ウは,人間の欲望をめぐる先哲たちの洞察についての記述である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。
ア ブッダによれば,人間が所有欲などの欲望から離れられない原因は,自己という不変の存在を正しく把握していないことにある。
イ プラトンによれば,不正な行為が生まれる原因は,魂のうちの欲望的部分が,理性的部分と気概的部分を支配してしまうことにある。
ウ 朱熹(朱子)によれば,人間が私欲に走る原因は,先天的にそなわっている理が,気の作用によって妨げられていることにある。
① ア 正 イ 正 ウ 誤
② ア 正 イ 誤 ウ 正
③ ア 正 イ 誤 ウ 誤
④ ア 誤 イ 正 ウ 正
⑤ ア 誤 イ 正 ウ 誤
⑥ ア 誤 イ 誤 ウ 正
問5 次のア~ウは,中国の思想家が述べた,あるべき実践や修養についての説明であるが,それぞれ誰のものか。その組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。
ア 万物に恵みを与えながらそのことを誇らない水のように,世間的な欲望を抑え,謙虚に他者に接して生きるのがよい。
イ 自己中心的でわがままな欲望に流されることなく,社会的に通用している規範である礼に自覚的に従うのがよい。
ウ ものごとに内在する道理を正しく把握し,意識を集中させ,つつしみをもって振舞うのがよい。
① ア 老 子 イ 孔 子 ウ 朱 子
② ア 老 子 イ 孔 子 ウ 王陽明
③ ア 老 子 イ 韓非子 ウ 朱 子
④ ア 老 子 イ 韓非子 ウ 王陽明
⑤ ア 荘 子 イ 孔 子 ウ 朱 子
⑥ ア 荘 子 イ 孔 子 ウ 王陽明
⑦ ア 荘 子 イ 韓非子 ウ 朱 子
⑧ ア 荘 子 イ 韓非子 ウ 王陽明
問6 老子の説く「道」の説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 万物を育みながら,その働きを意識したり,その功績を誇ったりすることのない,万物の母としての根本原理である。
② 人間の感覚や知性によっては把握できない,神秘的な宇宙の根本原理であり,名付けようがないため「無」とも呼ばれる。
③ 何もしていないように見えながら天地万物を生み出し,成長させ,秩序づける,無限の力をもつ根本原理である。
④ 宇宙や人間など万物を貫く様々な働きの根本原理であり,道徳規範としての「礼」を必然的に規定するものである。
問7 荘子が唱えた「道」についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 「道」とは,人間の従うべき道徳の規範であり,忠恕に基づいた礼の実践によって体得されるものである。為政者は,この「道」に基づき,己を道徳的に修め,人を感化することによって,はじめて人を治めることができる。
② 「道」とは,万物の根源であるだけでなく,また人間の心のなかにも本性としてそなわるものである。しかし,私欲によってその発露が妨げられているので,うやうやしく慎むことによって,「道」を発揮しなければならない。
③ 「道」とは,差別がなく万物が等しい境地であり,自己の心身を忘れることで体得されるものである。そのためには,偏見に囚われずに,心をむなしくする修養を通じて,天地と一体になることが必要である。
④ 「道」とは,天地万物に内在する客観的なものではなく,人間の心のなかに生まれながらに存在するものである。したがって,外界の事物に「道」を追い求めるべきではなく,心のなかの「道」のままに生きるべきである。
問8 孔子と孟子の思想を表す次の文章中の[ a ]・[ b ]に入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
他人を思いやることを孔子は[ a ]と呼び,生涯,これを実践していかなければならないと説いた。また,孟子は他者の苦しみや悲しみを見過ごすことのできない心を[ b ]の心と呼び,これを養い育てることによって仁徳は完成されると説いた。
① a 恕 b 惻 隠 ② a 義 b 惻 隠
③ a 恕 b 辞 譲 ④ a 義 b 辞 譲
問9 AとBは次の資料を図書館で見付けた。荀子の思想と資料の内容についての説明として最も適当なものを,後の①~④のうちから一つ選べ。
資料『荀子』より ・・・ことさらに何かをせずとも自然とそうであるというのが性であり,性から発する好悪喜怒哀楽を情といい,情が発するのに対して心が判断するのを思慮といい,心が思慮して能力をはたらかせるのが偽(作為)である。思慮を積み重ね,能力を重ね修めて,そうして後に完成したもののことも偽という。……孟子は 「人が学問(して向上しようと)するのはその性が善だ からだ」と言うが,そうではない。孟子は……性と偽の区別を理解してい ない。性とは学んだり取り組んだりしても獲得できないものである。…… 礼義は聖人の偽から生じたものであり,人の性から生じたものではない。……普通の人でも,禹(う)*のようになることができる。*禹:中国古代の聖人
① 人間は教育によって矯正し得ない欲望を生まれつき持つとする荀子は,資料において,孟子が学習などにより後天的に獲得されるものを,人の生得的な性質だと勘違いしているとして批判している。
② 人間が生まれつき持つ性質は欲望であり,生得的な善を備えてはいないと考える荀子は,資料において,性善説を唱える孟子を批判し,礼義は学びや取り組みによって後天的に習得し得るものであるとしている。
③ 人間における善を後天的な矯正の産物であるとする荀子は,資料において,孟子が善を学問によって獲得できるとすることを批判し,そのようにして獲得されるものは偽物にすぎないから不要だと述べている。
④ 人間の本性は邪悪であり,善を身に付けることはできないと考える荀子は,資料において,人は学びを通じて礼義を習得すると考える孟子の説を、 性を理解していない虚偽だと批判している。
問10 荀子に関する記述として最も適当なものを,次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 他者への親愛の情にもとづいて行為することが,人間社会の理想であるとし,法や刑罰のみによって人民を統治することに反対した。
② 生があり死があるのは運命であり,両者を一体と見てありのままに受け入れるところに束縛からの解放があると考えた。
③ 水のように柔弱なあり方に従い,人からさげすまれる地位に甘んじてこそ,真の勝利者となることができると説いた。
④ 強盗殺人が不義である以上,他国を侵略して多くの人を殺すのはより大きな不義であるとして,侵略戦争を否定した。
⑤ 人に善があるのは,曲がった木が矯め木や蒸気でまっすぐになるのと同様に,後天的な矯正によるものであると主張した。
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