公共授業ネタ20 フェイクニュースに騙されないために

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、メディアと世論の単元で実施しました。近年はSNSやインターネットのソーシャルメディアの普及や、AIの生成技術向上により、真偽の見分けがつきにくいディープフェイクがあふれる世の中となりました。騙されないために必要な力、考え方を、身近な事例から学んでいきます。

なお、今回紹介する内容は、9割が総務省作成教材の受け売りです。以下のリンクから見られる総務省のサイトを活用し、授業の一部を作成しました。比較的見やすいスライドも公式サイトで公開されているので、気になった方は参考にしてください。

LINK→【啓発教育教材】インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報に騙されないために~ | 安心・安全なインターネット利用ガイド | 総務省

重視した点・授業の流れ

⑴フェイクニュースの性質

以下のように、実際にあったフェイクニュースを紹介し、それぞれのニュースにどんな特徴があるかを考えさせました。授業を行う時期に話題になったものがあれば、より生徒の食いつきも良くなると思われます。

これを考えさせることで、フェイクニュースが持つ特徴を整理させていきます。「なんでこういったニュースは拡散してしまうのだろう?」と問いかけていくと、「SNSが発展しているから」「リポストの機能があるから」などと、拡散自体の原因を答えてくる生徒がいたので注意です。あくまで、これらのニュースに「拡散しなきゃ」と思わせる性質があるはずで、それが何かを考えてもらいたいです。

3分ほど時間を取れば、「注目される」「インパクトがある」「正義感を駆り立てる」「知名度が低い(珍しい)」「おもしろい」「悪意がある」「攻撃性がある」などなど、様々な意見が出てきます。このような情報が目の前に出てきた時には、すぐに信じ込むのではなく、一度立ち止まって考えることを促しました。

ある研究結果※では、これらの性質がある情報は、一般的な情報より約6倍のスピードで拡散するそうです。これも総務省作成教材の受け売りです。(笑)

※Vosoughi, S. et al. (2018). The spread of true and false news online. Science, 359, 1146-1151

⑵なぜ私たちは騙されるのか?

(1)では、フェイクニュース自体の特徴を整理しました。しかし、わかっていても信じてしまう人間の心理があるわけで、それらの研究結果や、総務省の教材を参考に、私たちが騙されるメカニズムの話をしていきます。中でも「人は自分の信じたいものを選ぶ」という言葉は非常に印象的で、メディアリテラシーに限らず、私たちの人間関係にも通じる話だと感じました。

プリントでは、サッカーW杯で「三笘の1mm」と話題になったプレーを紹介し、あの瞬間の日本人とスペイン人(対戦相手)の心情をイメージさせました。きっと自国の有利になるジャッジを支持していたでしょうし、それが当然のことでもあります。しかしその思い込みこそが、私たちの情報処理能力を鈍らせることに繋がります。

また、SNS世代の高校生たちには、アルゴリズムフィルターバブルの説明もしておく必要があると思います。YouTube、TikTok、Instagramなどのおすすめ機能もこれにあたるので、多くの生徒は思い当たる節があるはずです。一部の限られた主張だけで自分の意見が形成されていないか、自分の好きな世界だけが広がり視野が狭くなっていないか。今後、ネットやSNSを閲覧する際に思い出せるよう、頭の片隅にいれておいてもらいたいですね。プリントの一部を掲載しておきますので、参考にしてください。

(3)メディアも中立とは限らない

関連するネタとして、日本のメディアも中立とは限らないという話題も面白いです。新聞社やテレビ局は連携しており、それぞれの会社に親元がいます。極端ではなくとも、それぞれの会社にも思想があり、同じ事項でもメディアによって報道の印象が異なる場合もあります。中には意図的な印象操作を行い世論に影響を与えることもあり、これを世論操作といいます。

ちょうど最近良い事例を見つけたので、プリントにしてみました。下の写真は、自民党総裁選で石破氏が逆転勝利した後のドル円相場を報道したものです。左はテレビ朝日、右はTBSの画像ですが、円の数字を上下入れ替えることでグラフの見え方が真逆になっているのがわかります。ドル円相場を示すときは、右のようなチャートを使うことが一般的ですが、なぜわざわざ逆にしたのでしょうか。

この話を深掘りすると話が長くなってしまいますが、少しだけ。当時競い合っていた高市氏は、右寄り(保守的)の政策を掲げた候補者であったのに対し、石破氏は比較的中立な候補者でした。自民党はそもそも保守勢力ですが、その中では左寄り(革新的)な考えも持ち合わせた人物です。

ここからは明確な定義がある話ではなく、あくまで個人的な推論として読んでください。テレビ朝日はどちらかというと左寄りの考えを持っているメディアだと言われています。右や左が出てくると話が難しくなりますが、要はテレビ朝日的には高市氏より石破氏の方を支持していた(?)。そして石破氏の就任により円高が進んだことを好意的に報じたかった(?)意図があったかもしれません。ゆえにグラフを逆に提示したのか…?

そもそも円高円安はどちらがいい悪いというものでは無いのですが、当時は石破氏に決定したせいで相場が大荒れというマイナスイメージな報道があふれていました。そこを左のようなグラフの見せ方にすることで、印象が変わる視聴者もいたかもしれません。

当然教員である以上、政治的中立な立場は意識しますので、どちらがいいとか、どの局が偏っているとか、特定のメディアが世論操作しているなんて事は言いません。授業では、「グラフひとつでも見せ方次第で印象は変えられるよ?」ということを知ってもらう程度に留めています。(にしてもこのドル円相場のグラフは違和感しかありませんが)

これらの傾向は、憲法改正の社説などを比較すると、顕著にあらわれます。5月3日の憲法記念日に掲載された、各社の社説を比較し、それぞれの主張を読み解くのも、1時間分の授業ネタになるでしょう。覚えていればいつか記事にしたいと思います。

まとめ

長々と説明してしまいましたが、現代社会は情報過多であり、信ぴょう性も十分とはいえない。さらにはメディアによる操作も隠されているとなると、非常に情報を見極めることが難しい状況下にあります。まず正誤を見極める最低限の知識が必要になりますし、それに加えフェイクに騙されない力が求められます。すべての情報を鵜吞みにせず、情報源の分析や複数の情報との比較をしていくことで、地道に身につけていくしかありません。その第一歩として、今回の授業が印象に残れば幸いです。

実施した後の反省点

かかった時間

全部で20分程度

反省点

上記のとおり、(1)のフェイクニュースの本質を考える問で、少し困惑している生徒がいました。様子をみて問いかけ方を補足すると良いと思います。

よかった点

参考にした教材がそもそもわかりやすいので、安定感のある授業展開になりました。政治マニアが各クラス1~2人いるので、左寄りとか右寄りの話をするとその子たちだけは喜んで聞いていました(笑)あとはポカンとしていたので、話過ぎに注意かと。

よかったら試してみてください!質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

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