共通テスト倫理過去問07 キリスト教の展開

倫理

共通テストの過去問を中心に演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。

問1 アウグスティヌスについての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 罪深い存在である人間の救済には,神から人間に恩寵が直接与えられる必要があり,教会が神の代理者を務めることはできないと説いた。
② 罪深い存在である人間が救われるには神の恩寵が必要であり,善を志すことで神の恩寵を受けることができると説いた。
③ 『神の国』を著し,「神の国」とは人間の内面に姿を現すものであり,終末において完成されるものではないと考えた。
④ 『神の国』を著し,「神の国」とは神への愛から生まれるものであり,人間の自己愛から生まれる「地上の国」と対立すると考えた。

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解答④ 【解説】➀教会は地上に出現した「神の国」と説き、権威を確立させた。②恩寵とは神からの無償の愛であり、罪へと陥る人間でも救われると説いた。③最終的に「神の国」は、世界規模で実現すると説いている。

問2 パウロの思想の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 人間は,善を望んでいるはずなのに,望まない悪を行ってしまう。そこからの救済は,キリストへの信仰によるほかなく,人類全体の罪を担ったキリストに従い,私たちもまた,隣人への愛を実践すべきである。
② 人間は,善を望んでいるはずなのに,望まない悪を行ってしまう。そこからの救済は,キリストへの信仰によるほかなく,神と契約したキリストのように,私たちもまた,神との契約である律法を正しく遵守すべきである。
③ 人間は,肉体の情欲に引きずられ,望まない悪を行ってしまう。そこから救済されるためには,自らの運命を受け入れたキリストのように,私たちもまた,罪のない本来の自己を再発見し,それを受け入れるべきである。
④ 人間は,肉体の情欲に引きずられ,望まない悪を行ってしまう。そこから救済されるためには,苦しむ人々を癒したキリストに従い,私たちもまた,善行を積むことによって,神から義とされるよう努力すべきである。

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解答➀ 【解説】②立法の遵守ではなく信仰によってのみ救われる。③④主張の内容がパウロの教えには該当していない。

問3 神と教会についてのアウグスティヌスの考えとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 教会が指導する聖書研究を通して信仰を深めることにより,神の恩寵を得ることができると考えた。
② 人は神の恩寵によらなければ救われないと主張し,教会は神の国と地上の国を仲介するものだと考えた。
③ 教会への寄進といった善行を積むことにより,神の恩寵を得ることができると考えた。
④ 人は神の恩寵によらなければ救われないと主張し,贖宥状の購入による救済を説いた教会の姿勢は間違っていると考えた。

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解答➁ 【解説】➀③恩寵は聖書研究や信仰、善行を必要とせず、無償で与えられるもの。④贖宥状の購入による救済を否定したのは、宗教改革のマルティン・ルターが適切。

問4 信仰と理性の関係についてのトマス・アクィナスの思想の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 信仰も理性も等しい価値をもつが,信仰によって得られる真理と,理性によって得られる真理とは異なると考え,両者を分離する二重真理説を説いた。
② 神が啓示した真理は,信仰によって受け入れられるものであり,この真理の理解には理性が必要であるため,信仰と理性は調和すると説いた。
③ 救済のために最も重要なのは愛であるが,信仰も理性も等しく愛の働きを支えると考え,信仰・理性・愛の三つの徳をもって生きることを説いた。
④ 人間の本性である理性と,万物を貫く理性は同一であるため,自然に従うことによって,その造り主である神への信仰にめざめると説いた。

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解答➁ 【解説】➀説明は間違っていないが、スコツスやオッカムによって立証されたもの。③キリスト教の三元徳のような説明だが、だとすれば信仰・希望・愛が正しい。パウロやアウグスティヌスが説いたとされる。

問5 次のア~ウは,キリスト教において説かれた,信仰をめぐる様々な思想についての説明であるが,それぞれ誰のものか。その組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。

ア 厳格な律法主義では罪の自覚しか生じないと考え,人が義とされるのは律法の行いではなく信仰によると主張した。

イ 誰が救われるかは神の意志によって予定されているのであり,信仰をもつことそのものが神の与える恩寵であると主張した。

ウ 理性により得られる真理と信仰により得られる真理は,調和するのではなく区別されるべきであるとして,哲学と神学の分離を主張した。

①   ア ヨハネ      イ マルクス・アウレリウス     ウ トマス・アクィナス
②   ア ヨハネ      イ マルクス・アウレリウス     ウ ウィリアム・オッカム
③   ア ヨハネ      イ アウグスティヌ        ウ トマス・アクィナス
④   ア ヨハネ      イ アウグスティヌス      ウ ウィリアム・オッカム
⑤   ア パウロ      イ マルクス・アウレリウス     ウ トマス・アクィナス
⑥   ア パウロ      イ マルクス・アウレリウス     ウ ウィリアム・オッカム
⑦   ア パウロ      イ アウグスティヌス      ウ トマス・アクィナス
⑧   ア パウロ      イ アウグスティヌス      ウ ウィリアム・オッカム

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解答⑧ 【解説】名前が紛らわしい部分であるが、丁寧に覚えましょう。

問6 次の文章は,贖罪と愛の実践に関するパウロの考えについての記述である。 a ~ c に入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。

パウロは,もともと律法を厳格に守ることを求める a に属していた。しかし,彼は, b の声を聞いて回心し,イエスの十字架上での死を,人々の罪を贖(あがな)うための死であると理解した。彼の考えによると,贖罪を信じることにより,人間は神に受け入れられ, c のであり,そのとき人は,罪を抱えた自己中心的な人間から,愛を実践する人間へと生まれ変わるのである。

①   a パリサイ派      b 神殿の祭司         c 義とされる
②   a パリサイ派       b 神殿の祭司         c 預言を授かる
③   a パリサイ派       b 復活したイエス     c 義とされる
④   a パリサイ派       b 復活したイエス     c 預言を授かる
⑤   a ストア派          b 神殿の祭司          c 義とされる
⑥   a ストア派          b 神殿の祭司         c 預言を授かる
⑦   a ストア派          b 復活したイエス      c 義とされる
⑧   a ストア派          b 復活したイエス      c 預言を授かる

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解答③ 【解説】パウロの思想を抑えていく。贖罪や信仰義認説は頻出。

問7 次のア~ウは,キリスト教における,人間の欲望についての考え方である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。

ア パウロは,分かっていながら欲望のために悪を行ってしまう人間のあり方に悩み,そこからの救済は福音への信仰によるほかにないと考えた。

イ アウグスティヌスは,生まれつき人間にそなわっている自由意志により,欲望から悪を犯してしまう傾向を克服できると考えた。

ウ イエスは,欲望を抱いて女を見る者は,心のなかで既に(かん)(いん)をしていると述べ,情欲を克服した善き人だけが,他者を裁くことができると主張した。

①   ア 正           イ 正           ウ 正
②   ア 正           イ 正           ウ 誤
③   ア 正           イ 誤           ウ 正
④   ア 正           イ 誤           ウ 誤
⑤   ア 誤           イ 正           ウ 正
⑥   ア 誤           イ 正           ウ 誤
⑦   ア 誤           イ 誤           ウ 正
⑧   ア 誤           イ 誤           ウ 誤

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解答④ 【解説】イ:「自由意志」とは「知性に導かれて意志が真実を選択すること」であり、これによって善行をなすことを理想とした。一方で、善を選択できなかった場合には悪が生まれるわけで、この傾向を克服するためには、回心することが必要になる。ウ:聖書にある言葉でもあり前半部分は適当だが、裁きについてはイエスが主張したものとはいえない。

問8 罪深い人間の救済に関するパウロの義認の教えの説明として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 罪深い人間が義とみなされるのは,イエスの十字架の犠牲に倣った身体的な苦行によるのみである。
② 罪深い人間が義とみなされるのは,イエスの贖罪に示された神の愛への信仰によるのみである。
③ 罪深い人間が義とみなされるのは,信仰・誠実・愛というキリスト教の三元徳によるのみである。
④ 罪深い人間が義とみなされるのは,父・子・聖霊の三位が一であるという教義への精通によるのみである。

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解答➁ 【解説】➀義とみなされるのは信仰によってのみ。③誠実を希望に変えると正しい。④三位一体説はアウグスティヌスによるもの。

問9 悪をなす自己を見つめ直した思想家について述べた次の文章を読み,文中の空欄 a ・ b に入る語句の組合せとして正しいものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。

 4~5世紀に活躍した a は,青年期は欲望のままに生きていたが,神への信仰に目覚め,悪に苦悩しながら,自らを見つめ直していった。彼は,その遍歴を,著作『 b 』に記した。

①   a トマス・アクィナス             b 自省録
②   a アウグスティヌス               b 告 白
③   a マルクス・アウレリウス       b 自省録
④   a アウグスティヌス              b 神学大全
⑤   a マルクス・アウレリウス       b 告 白
⑥   a トマス・アクィナス             b 神学大全

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解答➁ 【解説】人名・著書名を覚えているかどうかの問題。

問10 次の文を読み,文中の空欄 a ~ c に入る語句の組合せとして最も適当なものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。

 信仰と理性の a 的関係を重視した中世の神学者トマス・アクィナスは,当時ギリシア語やアラビア語から翻訳された b の哲学に大きな影響を受け,その c の考えを踏まえ,私有財産制度を認めつつ,同時に,貧者への施しなどを通して社会における富の偏在を是正する必要性を説いた。

① a 調 和   b アリストテレス   c 配分的正義
② a 敵 対   b プラトン      c 哲人政治
③ a 調 和   b プラトン      c 哲人政治
④ a 敵 対   b アリストテレス   c 配分的正義
⑤ a 調 和   b プラトン      c 配分的正義
⑥ a 敵 対   b アリストテレス   c 哲人政治

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解答➀ 【解説】信仰と理性を調和させながら、神の存在を研究していくことをすすめた。アリストテレス哲学とキリスト教を調和させて解釈した点は、少々マニアックではあるが抑えておこう。

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