倫理演習06 キリスト教の教え

倫理

共通テストの過去問を中心に演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。

問1 律法の説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① イスラエル人は,律法を守れば祝福が与えられ,律法を破れば裁きの神としてのヤハウェに厳しく罰せられるとされている。
② 律法の中心をなす十戒は,神の絶対性に関わる宗教的な規定(義務)と人間のあり方に関わる道徳的な規定(義務)から成り立っている。
③ イスラエル人は,エジプトに移り住む際の心構えとして神から与えられた律法を,神と民との間に結ばれた契約の徴(しるし)とみなしている。
④ 律法に従って神の恩恵に応える限り,イスラエル人は神に選ばれた特別な民として,神から民族の繁栄を約束されている。

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解答③ 【解説】③神との契約は、モーセが十戒を授かった際に結ばれたとされており、エジプトを脱出した時の出来事。エジプトに移り住む際の…という部分が不適当。

問2 ユダヤ教の選民思想を表す記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 厳しい自然に立ち向かうなかで育まれた信仰であり,世界の創造主が現世に遣わした神の子が,彼らを選びその繁栄と救済を約束した。
② 異民族との闘争のなかで育まれた信仰であり,彼らの血統が優れているがゆえに,人格を超えた神が,彼らを永遠の救いに導く約束をした。
③ 異民族からの圧迫などの苦難のなかで育まれた信仰であり,唯一の絶対神である人格神が,彼らを選びその繁栄と救済を約束した。
④ 厳しい自然に翻弄されるなかで育まれた信仰であり,人格を超えた神である宇宙の根本原理を理解できる彼らだけに,永遠の救いが約束された。

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解答③ 【解説】ユダヤ教では、イスラエルの民だけが唯一神から選ばれたとする選民思想が確立している。①神の子という部分は唯一神に反するので誤文。➁④ユダヤ民族の捉え方がずれている。

問3 イエスが安息日に病人を癒そうとしたことの説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① イエスは,安息日に関する律法からあえて逸脱することで,律法が人々の間で形式的にしか守られていないことを批判し,神に対して忠実であることの本来の意味を明らかにしようとした。
② イエスは,安息日に関する律法からあえて逸脱することで,律法が神の意志そのものとは関係のないものであることを明らかにし,あらゆる律法が不要な状態を理想とした。
③ イエスは,安息日に関する律法を厳格に守り通すことによって,律法に則った正しい信仰のあり方を,自らの行いという実例を通して周囲の人々に示そうとした。
④ イエスは,安息日に関する律法を厳格に守り通すことによって,人々が重視していた律法と,人にしてもらいたいと思うことを人にもすべきだとする黄金律とが一致することを示そうとした。

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解答➀ 【解説】イエスはユダヤ教による律法主義を批判しているため、③④は逆の文章となってしまっている。律法を守ることではなく、律法を通して神への信仰心を強く持つことが重要と考えており、➁のように律法を全否定する発言は言い過ぎと判断できる。

問4 イエスの教えについての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 愛を実践する生き方の基本として,「人にしてもらいたいと思うことは何でも,あなたがたも人にしなさい」と説いた。
② ユダヤ教の教典に書かれた律法を重視し,たとえ形式的であっても律法を厳格に順守しなければならないと説いた。
③ 旧約聖書の根幹をなす「敵を愛し,迫害する者のために祈りなさい」という教えを受け継ぎ,敵をも赦す普遍的な愛を説いた。
④ 神が与えてくれた悔い改めの機会として,安息日を忠実に守り,すべての労働を避けなければならないと説いた。

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解答➀ 【解説】①これを黄金律という。➁ユダヤ教の思想であり、イエスはこれを批判的に捉えた。③旧約聖書に上記のような内容はない。むしろイエスが説いた内容で、新約聖書の根幹となる内容。④ユダヤ教による思想で、イエスは臨機応変な対応を求めた。

問5 愛をめぐるイエスの教えの記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 人間の魂は,美しいものへの愛によって感覚的世界から解放される。
② 信仰・勇気・愛の三つを三元徳として,重んじなければならない。
③ 兄弟や同胞だけでなく,自らを迫害する敵をも愛すべきである。
④ 純粋に神を観想し愛することで,魂を清め神と一致することができる。

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解答③ 【解説】①プラトンのエロースについての説明。➁キリスト教の三元徳として、パウロやアウグスティヌスが説いたもの。④観想はアリストテレスのキーワード。

問6 次のア~ウはイエスと食に関(かか)わる記述である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。

ア イエスは,人はパンだけで生きるものではないと語り,神を愛することと隣人を愛することの二つの実践こそが人が生きるうえで重要だと主張した。
イ イエスは,当時の社会で差別されていた者たちと食卓をともにし,神の愛がそうした人々にも差別なく与えられるものであることを示した。
ウ イエスは,捕われる直前に弟子たちと食事をし,人々が律法を破った罪のために犠牲となる自らの体と血を,パンとぶどう酒になぞらえた。

① ア 正  イ 正  ウ 正
② ア 正  イ 正  ウ 誤
③ ア 正  イ 誤  ウ 正
④ ア 正  イ 誤  ウ 誤
⑤ ア 誤  イ 正  ウ 正
⑥ ア 誤  イ 正  ウ 誤
⑦ ア 誤  イ 誤  ウ 正
⑧ ア 誤  イ 誤  ウ 誤

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解答➁ 【解説】ア:アガペーと隣人愛はイエスを象徴するキーワード。イ:イエスは無差別・無償の自己犠牲的な愛を説いており、この文章も適当。ウ:文章にある通り、最後の晩餐でパンを肉体、ぶどう酒を血となぞらえたエピソードは正しく、キリスト教において重要な食べ物とされている。キリスト教文化においては、最後の晩餐を模倣した儀式も行われている。しかし、この文章の「人々が律法を破った罪」という点はおかしい。イエスは律法を破ることを、悪いことだとは考えていないし、人々がアダムとイブの頃から抱える原罪から救うために処刑されたとされている。

問7 罪についてのイエスの考え方の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① イエスは,神の意志に反する行為を実際に行ってしまう人間の傾向を罪とみなし,その罪からの救済が誰に起こるかは,人間を超えた神の意志によって予定されていると主張した。
② イエスは,たとえそれを実行せずとも,人間が心のなかで悪しき思いを抱くことそれ自体を罪とみなし,自らが罪人であることを自覚し,その罪を赦す神の愛を信じるよう説いた。
③ イエスは,原初の人間が自由意志を悪用して神に背いたことに由来する人間のあり方を罪と考え,自由意志を正しく用いて自己自身を高めることで,その罪から脱却できると説いた。
④ イエスは,人間が神なしでも自力で生きていけると考えている傲慢を根源的な罪であると考え,その罪は,律法を厳格に遵守することでのみ,神から義とされて赦されると主張した。

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解答➁ 【解説】①神の救済は神よって予定されているという考え方は、カルヴァンによるもの。③人間の自由意志を認め、それにより神からの救いを受けられると説いたのはエラスムス。④律法の遵守はユダヤ教による教え。

問8 イエスの説く神の国の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ローマ帝国による政治的支配を打破し,神から遣わされた救い主によって立てられる国
② 神に選ばれた民であるユダヤ人およびキリスト教への改宗者たちが,入ることを約束された国
③ 自らの罪を悔い改めて,互いに愛し合う人々の間に,精神的な出来事として実現する国
④ 生前,神から与えられた戒めを守った者が,死後,平安の地として入ることを約束された国

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解答③ 【解説】『ルカによる福音書』で語られており、「神の国はあなたがたのただ中にあるのです。」と述べられている。

問9 新約聖書の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 新約聖書の「新約」とはイエスがもたらした神と人間との新しい契約であり,旧約聖書の律法は完全に否定されている。
② 新約聖書ではイエスが救い主キリストであるという信仰と,イエスの十字架上の死による神からの罪の赦しが語られている。
③ 新約聖書では神の国が到来したこと,また神の国とローマ帝国などの地上の国との戦いが終結したことが述べられている。
④ 新約聖書では神の無償の愛であるアガペーと,それにこたえて真の実在としての神へ向かう愛であるエロースとが説かれている。

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解答➁ 【解説】①完全否定は言い過ぎ。律法を守ることだけに固執せず、内面から遵守しようとする姿勢を説いた。③神の国は人々の間に生まれる精神的な救いを指している。④エロースはプラトンによる主張で、新約聖書では説かれていない。

問10 新約聖書に描かれたイエスについての記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 「天地が消え失せるまで,律法の文字から一点一画も消え去ることはない」とあるように,ユダヤ社会の刷新には律法の遵守が不可欠と考えた。
② 「私があなたがたを愛したように,あなたがたも互いに愛し合いなさい」とあるように,相互の愛を実践するよう説いた。
③ 人間はすべて,理性と道徳上の能力において本来同等であるから,隣人愛に満ちた関係を築くべきだと説いた。
④ 預言者の精神を受け継ぎ,当時のユダヤ社会に真の悔い改めを求め,ヨルダン川で,身分の差別なく人々に洗礼を授けた。

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解答➁ 【解説】①律法の遵守にこだわらず、内面化(信仰のあり方)することを説いた。③理性や道徳上の能力は関係無く、すべての人類を愛することを説いている。④洗礼はヨハネから受けたものであって、授けたという点も異なる。

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