問1 次の文章は,ポリス(国家)が全盛期を過ぎた後のギリシア・ローマ世界の思想についての記述である。 a ~ c に入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。
アレクサンドロス大王の東征を機に,ギリシア文化が東方の文化と混じり合うようになると,ヘレニズム文化が誕生した。こうした諸文化の混交を経て成立したストア派からは, a の思想が提示された。宇宙のロゴス(理性)に従って生きる人は,都市国家の枠組みを越えて,みな同胞であるという主張がなされたのである。この考えは,近代の b 思想の成立に影響を与えることになる。ストア派は宇宙の理法を神として捉えたが,一方で, c を代表とする新プラトン主義は,神を超越的な一者として捉え,神との合一を説いた。それは,ギリシア思想の有する合理的な精神に,神秘主義的な観点を接合するものであった。
① a 世界市民主義 b 自然法 c セネカ
② a 世界市民主義 b 自然法 c プロティノス
③ a 世界市民主義 b 実定法 c セネカ
④ a 世界市民主義 b 実定法 c プロティノス
⑤ a 地球全体主義 b 自然法 c セネカ
⑥ a 地球全体主義 b 自然法 c プロティノス
⑦ a 地球全体主義 b 実定法 c セネカ
⑧ a 地球全体主義 b 実定法 c プロティノス
問2 理性に従った生き方を主張したストア派について述べた次の文章を読み,文章中の a ・ b に入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①~⑨のうちから一つ選べ。
紀元前3世紀に a によって創始されたストア派は,宇宙は万物の根源が自らの理法に従って自己展開したものであるから,宇宙の一部である人間も,理性に従うことで理法と一致した生き方をすべきであると主張した。また,彼らはそのような考え方に基づき,社会のあり方についても言及し, b を唱えた。
① a セネカ b 世界市民主義
② a セネカ b 社会有機体説
③ a セネカ b 配分的正義
④ a キケロ b 世界市民主義
⑤ a キケロ b 社会有機体説
⑥ a キケロ b 配分的正義
⑦ a ゼノン b 世界市民主義
⑧ a ゼノン b 社会有機体説
⑨ a ゼノン b 配分的正義
問3 ストア派のアパテイアの説明として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 自然に従って生きることで,魂が完全に理性的で調和したものとなり,欲望や快楽などの情念によって動かされない状態。
② 情念や欲望が理性の命令に聞き従うことで,魂の三部分間の葛藤や分裂が克服され,心が全体として理性によって制御された状態。
③ 過剰な情念に満たされることと,情念に心が少しも動じないことの中庸として見いだされる,有徳な人間にふさわしい適度な情念をもった心の状態。
④ 苦しみや悲しみなどが取り除かれて,心のうちに快楽が得られることによって,魂が浄化された平静な状態。
問4 「誕生時の星の配置がその人の運命を示す」のような考え方を支持した思想の一つとして,ストア派の哲学が挙げられる。ストア派の世界観の説明として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① この世界のあらゆる事物は,万物の構成原理である数の比例関係に基づいて生じる。
② この世界のあらゆる事象は,無数に存在する原子(アトム)の離合集散によって生じる。
③ この世界のあらゆる事物は,永遠不滅の真の実在であるイデアを原型として生じる。
④ この世界のあらゆる事象は,世界に内在する理法(ロゴス)の支配にしたがって生じる。
問5 ストア派の人々が説いた「自然に従って生きよ」とは何を意味するのか。最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 文明化された都市においては理性的な判断を惑わすものが多いため,自然の中で魂の平静を求めて生きよ,という意味
② 感情に左右されやすい人間の理性を離れ,自然を貫く理法に従うことにより,心の平安を得て生きよ,という意味
③ 人間の理性を正しく働かせ,自然を貫く理法と一致することで,心を乱されることなく生きよ,という意味
④ 人間の理性を頼みとして努力をするのではなく,自然が与えるもので満足することを覚えよ,という意味
問6 エピクロスが提唱した生活信条として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 感情を乱す原因を避けて隠れて生きることによってアタラクシアを求め,安らかに暮らす。
② 極端な感情を避けて適切に選択できるメソテースの獲得と保持を求めて暮らす。
③ 美にあこがれるエロースの感情に突き動かされて,ひたすら美を求めて暮らす。
④ 欲望を抑えていかなる感情にも心を動揺させることのないアパテイアを目指して暮らす。
問7 文章中の 1 ・ 2 に入れるのに最も適当なものを,次のそれぞれの①~④のうちから一つずつ選べ。
「怒りを歌え,女神よ,ペレウスの子アキレウスの」。これは【 1 】の『イリアス』冒頭を飾る言葉である。人類最古の叙事詩の一つが「怒り」を主題とすることは,この感情が人間にとっていかに重要であるかを暗示している。ここでは,先哲たちの声に耳を傾けて,怒りが倫理的観点からどのように捉(とら)えられてきたかを考えてみよう。
仏教の開祖ゴータマ=ブッダは「怒りを捨てよ。慢心を除き去れ」と語り,解脱を求める者は怒りを捨て去るべきことを説いた。ストア派も,『怒りについて』の著者【 2 】を始め,怒りなどの感情を理性によって除去する点に徳の成立を認めている。個人の静穏な生活を重んじるこれら二つの思想は,魂の平安をかき乱すという理由で,怒りに否定的評価を下している。
【1】 ① エンペドクレス ② ソフォクレス
③ ヘシオドス ④ ホメロス
【2】 ① アウグスティヌス ② エピクロス
③ セネカ ④ プロティノス
問8 ヘレニズム時代になって提唱された哲学・思想についての記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 戦乱により崩壊したポリスに縛られることなく,個人の内面に目を向け,人間の幸福は魂の自由と平安にある,とする考え方。
② 知恵の徳を具えた哲学者が,善のイデアを基準にして国家を正しく治めることにより,国家の正義が実現される,という考え方。
③ 魂の徳が何であるか,その定義を知ることによって,徳を具えると同時に幸福な人になりうる,という考え方。
④ 自然現象の根底に存在する不変の原理であるアルケーを,ロゴスによって探求すべきだ,とする考え方。
問9 機械論的自然観の古代における先駆者の一人としてエピクロスがいる。エピクロスの倫理思想の記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 美のほとんどが便宜・効用という観念から生まれるのだから,快楽や苦痛は,美や醜の観念に必然的に伴うだけでなく,美や醜の本質をなす。
② いかなる快楽をも貪る人は放埒(ほうらつ)だし,あらゆる快楽を遠ざける人は逆に無感覚な人になる。私たちは,双方の中庸である節制を目指すべきである。
③ 快楽や苦痛は,その強さ,持続性,確実性,遠近性などと,それが及ぶ人々の数を考慮に入れることによって,その総計を計算することができる。
④ 私たちが人生の目的とすべき快楽は,放蕩(ほうとう)者の快楽でも性的な享楽でもなく,身体に苦痛のないことと,魂に動揺のないことにほかならない。
問10 エピクロスは,デモクリトスの原子説を継承し,死を恐れることの愚かさを説いている。エピクロスの考え方の記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 死なんてものは,言ってみりゃ暖簾をくぐるようなものだから,ひょいとくぐって,向こう側の人にあいさつすればいいだけのことじゃないか。
② 死にたくないなんて,ずうずうしいことを言っちゃいけない。皆死ななくなったら,人があふれて地べたが重くてかわいそうじゃないか。
③ 人間,生きている間に死ぬなんてことはないし,死んでしまえば空中のチリみたいなものさ。何も考えられなくなるだけの話じゃないか。
④ 死に神ってのもなかなか気さくでいいやつだというのに,皆から嫌われてかわいそうじゃないか。この際仲よくしてやったらどうだい。
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