倫理演習04 アリストテレス

倫理

共通テストの過去問を中心に演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。

問1 アリストテレスの自然観の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 自然界の事物は,質料に形相が与えられることで成り立っており,事物は質料の実現という目的に向かって生成・発展していく。
② 自然界の事物は,質料と形相とが結び付いて成り立っており,事物は形相の実現という目的に向かって生成・発展していく。
③ 自然界の事物は,質料に形相が与えられることで成り立っており,形相がもつ潜在性によって,偶然的で自由な仕方で生成・発展していく。
④ 自然界の事物は,質料と形相とが結び付いて成り立っており,質料がもつ潜在性によって,偶然的で自由な仕方で生成・発展していく。

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解答➁ 【解説】プラトンと異なり、現実世界に事物の本質が内在していると考えたのがアリストテレス。材料となる質料が、秘めている形相(本質)を実現するために、自己の能力や外部からの働きかけによって形相の実現に向かう。この形相を実現したいという欲求を「目的因」といい、働きかけることを「運動因」ということも覚えておきましょう。

問2 徳に関するアリストテレスの思想の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 中庸とは,各々の状況下で極端を避けて適切に行動し得る状態のことである。そうした行動を習慣づけたならば,徳をもたなくても,常に正しく行動することができる。
② 部分的正義は,人々の間に公正をもたらす徳であり,弱者や困窮者に富や機会を配分する配分的正義と,取引や訴訟において当事者の利害得失を均等に保つ調整的正義とに分けられる。
③ 人間の魂には理性,気概,欲望の三部分がある。理性の主導のもと,三部分が固有の本分を果たすことによって知恵,勇気,節制が実現し,これら三つの部分の調和により正義の徳が実現する。
④ 理性の最高の徳は知恵である。この知恵の徳に基づいて,日常的な利害への関心を離れ,理性を純粋にはたらかせる観想(テオーリア)の生にこそ,人間にとって究極の幸福がある。

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解答④ 【解説】①前半部分の記述は正しい。中庸を心がけて習慣づけることで、徳が身につくという考えが正しいので、徳を持たなくてもという部分がおかしい。➁配分的正義は、能力に応じて適切な名誉や富を配分することであり、弱者に対して限定されるものではない。③内容は正しいがプラトンによる考え。

問3 イデア論を批判したアリストテレスについての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 善のイデアを追究する生き方を理想としたプラトンを批判して,善は人によって異なるので,各自が自分にとっての善を追究すべきだと説いた。
② 理性で捉えられるイデアを事物の原型としたプラトンを批判して,事物が何であるかを説明する唯一の原理は,事物を構成する質料であるとした。
③ 永遠不変のイデアが存在するとしたプラトンを批判して,すべては現実態から可能態へと発展するのであり,同一であり続けるものはないと述べた。
④ 個々の事物を離れて存在するイデアを真の知の対象としたプラトンを批判して,個々の具体的な事物こそ探究の対象とすべきだと主張した。

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解答④ 【解説】①イデア論を批判したことは正しいが、選択肢のような相対主義的な考えをしていた訳ではない。➁質料と形相で構成されると説いた。③現実態と可能態の説明が逆となっている。可能態は、まだ高い次元の形相を実現していない状態である。

問4 欲望に関するアリストテレスの考え方の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 欲望を理性に従わせるためには,理性がそう命じるだけでは不十分であり,実際に欲望を抑制できるような性格の形成が必要である。
② 魂の理性的部分がイデアを観想してさえいれば,そのような魂は自らの欲望的部分を制御することができる。
③ 魂の平安のために,空腹を満たすことなどへの自然で必要な欲望だけをもち,贅沢や権力などへの空しい欲望は捨てるべきである。
④ 中庸の態度を保ちつつ生きるためには,禁欲的な生活を通じて欲望を排除し,魂を浄化することが必要である。

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解答➀ 【解説】➁イデアといえばプラトン以外ないため誤文。③魂の平安、最低限の欲望などの説明から、エピクロスの考えと推測できる。④中庸の必要性を説いたのはアリストテレスで間違いないが、禁欲や欲望を排除といった極端な行為はむしろ避けるべきである。

問5 アリストテレスの社会思想として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ポリス,民族,階級といった社会的な制約を超え,人間は誰もが普遍的な理性を分かちもつ世界市民として活動する必要がある。
② よりよい政治的支配を実現するためには,ポリスにとって何が善く,何が正しいかについて,真の知をもった哲人による政治が必要となる。
③ 人間はポリスを形成するように生まれついた存在であるので,人間本来の善さを実現するためには,共同体の一員として生きる必要がある。
④ 人間は万物の尺度であるので,ポリスの秩序を形成していくためには,個々人の多様な価値観を包括する寛容な社会の実現が必要となる。

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解答③ 【解説】①世界市民の考え方は、ストア派のゼノンによるもの。➁哲人政治に関する説明だが、これはプラトンの思想。④「人間は万物の尺度」とは、相対主義を説いたプロタゴラスの有名な言葉である。

問6 アリストテレスの説いた徳についての記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 魂の具えるべき徳についての正しい知識をもてば,その知に導かれて善く生きることができるとした。
② 信仰,希望,愛の三つを基本的な徳であるとし,なかでも,人間の意志を動かすものとしての愛を重視した。
③ 人間の魂が具えるべき徳を,知性の働きに関わるものと習慣づけによって形成される性格に関わるものに分けた。
④ 徳とは,宇宙全体と調和して生きるために理性や意志によって欲を抑制する禁欲主義的な力であるとした。

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解答③ 【解説】③知性的徳と習性的徳の説明であり、適切な選択肢となる。①正しい知が善い行いに繋がる考え方は知徳合一といい、ソクラテスによるもの。➁キリスト教の三元徳を説いた、パウロやアウグスティヌスの説明。④禁欲主義と言えばストア派のゼノン。

問7 アリストテレスの「調整的正義(矯正的正義)」の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 各人の業績を精査し,それぞれの成果に応じて報酬を配分すること
② 加害者を裁いて罰を与え,被害者に補償を与えて公平にすること
③ 知性的徳を備えた人が習性的徳を備え,完全に正しい人になること
④ 法的秩序を保ち,人間として正しい行為をする状態に市民を導くこと

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解答➁ 【解説】選択肢の通り。①は配分的正義の説明。

問8 「我々は他者との関係のなかで生きている」に関連して,アリストテレスが述べた言葉として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 自然に従って生きよ。
② 人間はポリス的動物である。
③ 万物は流転する。
④ 人間は万物の尺度である。

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解答➁ 【解説】①はゼノン、③はヘラクレイトス、④はプロタゴラスの言葉。

問9 古代ギリシアの思想家アリストテレスの主張の記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 人間にとって最高に幸福な生活とは,観想によって把握された真理に基づいて政治的実践を営む生活である。
② 真の友愛は,自分にとっての快楽や有用性のみに基づくものではなく,善き人々の間で相手のために善を願うものである。
③ 個物から離れて実在する超越的な形相が,感覚的な質料と結びつくことによって,この世界の様々な事物が生成する。
④ 各人の判断こそが善や正義などの基準であり,自らの経験と観察を重んじることによって知識が得られる。

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解答➁ 【解説】①観想的生活を推奨しているが、政治的実践を営むことを重視しているとは言えない。③プラトンのイデア論とアリストテレスの形相・質料の考えが混同している。④経験や観察によって知識が得られるという考えは、ベーコンらによるイギリス経験論が適切。

問10 アリストテレスが用いている中庸の例の記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 恐れるべきものとそうでないものを正しく判断できるように知的訓練を積むことで,勇気のある人になる。
② 金銭や財に関して,必要以上に惜しんだり浪費したりしないよう習慣づけることで,おおらかな人になる。
③ 神の知をもっていないと自覚することで,最大の無知から解放され,人間にふさわしい知恵を得ることができる。
④ 極端な快楽と極端な禁欲を避けながら,静かな修道生活を送ることで,心の平安を得ることができる。

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解答➁ 【解説】特になし。

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