問1 プラトンについての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① イデアの認識を確実にするのは,理性ではなく,憧れという欲求であると説き,イデアへの憧れに衝き動かされた魂を,翼を持った一組の馬と御者が天上に飛翔する姿になぞらえた。
② この世に生まれる前は無知であった人間の魂が,この世に肉体を持って生まれてきた後,感覚に頼ることでイデアを完全に知ることができるようになると論じた。
③ 感覚的次元に囚われた魂を,暗闇の中で壁に映し出された影を真実と思い込む洞窟内の囚人の姿になぞらえ,感覚的世界からイデアへと魂を向け変える必要があると説いた。
④ 理想国家のあり方を,理性と欲望が調和した魂の姿と類比的に論じ,そのような国家では,全ての人が哲学を学び優れた市民となることで,統治する者とされる者の関係が消滅すると述べた。
問2 エロースを賛美した宴会を舞台とする作品を著した人物として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① ソクラテス ② プラトン
③ ヘシオドス ④ ホメロス
問3 プラトンが魂について論じた内容として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人間の魂は死後に肉体から解放されてはじめてイデアを見ることになるとし,イデアへの憧れ(エロース)が哲学の原動力であると論じた。
② 人間の魂は生まれる以前にイデアを見ていたとし,感覚的事物を手がかりとしてイデアを想起すること(アナムネーシス)ができると論じた。
③ 人間の魂を国家と類比的に捉え,個々人の魂に正義の徳が具わるためには,国家全体の正義を確立することが必要であると論じた。
④ 人間の魂を理性,気概,欲望の三つの部分に分けて捉え,これら三部分が互いに抑制し合うことで正義の徳が成立すると論じた。
問4 イデアに関して,プラトンの考え方に合致するものとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① イデアは個物に内在する真の本質であり,感覚ではなく,知性だけがそれを捉えることができる。
② イデアは生成消滅しない真の存在であり,感覚ではなく,知性だけがそれを捉えることができる。
③ イデアは個物に内在する真の本質であり,感覚は知性の指導のもとにそれを捉えることができる。
④ イデアは生成消滅しない真の存在であり,感覚は知性の指導のもとにそれを捉えることができる。
問5 プラトンはこの世における知識の獲得を想起説によって説明している。その想起説についての記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 知識の獲得とは,この世を去る際に身体から解放された魂が,この世で起きたことをイデアを通して想い起こすことである。
② 知識の獲得とは,この世を去る際に身体から解放された魂が,自分は何も知らないという無知を想い起こすことである。
③ 知識の獲得とは,この世に誕生する際に身体に閉じ込められた魂が,不動の動者である神を観想によって想い起こすことである。
④ 知識の獲得とは,この世に誕生する際に身体に閉じ込められた魂が,もともと見知っていたイデアを想い起こすことである。
問6 文章中の A ・ B に入れるのに最も適当な組合せを,次の①~⑥のうちから一つ選べ。
怒りそれ自体を悪としない見方も存在する。プラトンの魂の三部分説によると,怒りの座たる A 的部分は,適切な教育を受け, B 的部分の指導に従えば,徳ある行為に役立つとされる。アリストテレスは「穏和」の徳を怒りに関する中庸と定義し,適切な仕方で怒る人は賞賛に値すると語る。彼は,怒りを他人からの不当な軽蔑や不正への仕返しの欲求と捉え,怒りの発し方が適切かどうかを社会規範に照らして判断する思慮の働きに注目した。また,儒家の書『中庸』でも,怒りなどの感情が節度にかなった形で他人に向けて発せられるときには,正しいあり方として肯定された。このように怒りは,対人関係という局面において,思慮深く適正に発せられる場合,高く評価される。
① A 理 性 B 気 概
② A 理 性 B 欲 望
③ A 気 概 B 理 性
④ A 気 概 B 欲 望
⑤ A 欲 望 B 理 性
⑥ A 欲 望 B 気 概
問7 プラトンは,洞窟の比喩を用いて彼の思想を説いた。その比喩の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 多くの人々は,魂が肉体から解放されるまで,快楽や欲望の束縛から脱することができない。それはちょうど,囚人が洞窟の中に死ぬまで縛りつけられて逃げられないのと似ている。
② 多くの人々は,個人的な生活にしか目を向けず,社会的理想を追求しようとはしない。それはちょうど,洞窟の中で生活している人々が,そこでの生活に安住し,洞窟の外に出て理想国家を建設しようとしないのと似ている。
③ 多くの人々は,普遍的な真理など存在せず,相対的にしか真理は語れないとする。それはちょうど,人々がそれぞれの洞窟の中でそれぞれの基準で真偽を判断し,その正否に他人は口を出せないのと似ている。
④ 多くの人々は,感覚されたものを実在だと思い込んでいる。それはちょうど,洞窟の壁に向かって繋がれている囚人が,壁に映った背後の事物の影を実物だと思い込んでしまうのと似ている。
問8 プラトンは,魂の三部分の関係に基づいて国家のあり方を説明した。彼の国家についての思想として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 一人の王の統治は,知恵を愛する王による統治であっても,つねに独裁制に陥る危険を孕んでいる。それゆえ防衛者階級も生産者階級も知恵・勇気・節制を身につけ,民主的に政治を行う共和制において正義が実現する。
② 統治者階級は,知恵を身につけ,防衛者階級を支配し,防衛者階級は,勇気を身につけ,生産者階級を支配する。さらに生産者階級が防衛者階級に従い節制を身につけたとき,国家の三部分に調和が生まれ,正義が実現する。
③ 知恵を愛する者が王になることも,王が知恵を愛するようになることも,いずれも現実的には難しい。知恵を愛する者が,勇気を身につけた防衛者階級と節制を身につけた生産者階級とを統治するとき,正義が実現する。
④ 知恵を身につけた統治者階級が,防衛者階級に対しては臆病と無謀を避け勇気を身につけるよう習慣づけ,生産者階級に対しては放縦と鈍感を避け節制を身につけるよう習慣づける。このようなときに正義が実現する。
問9 プラトンのいう「愛(エロース)」の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 個々の美しいものや善いものを超えて,善美そのものを追い求めようとする情熱のことである。
② 異性をひたすら精神的にのみ愛し肉体的な結びつきは徹底的に排そうとする,清浄な情熱のことである。
③ 精神的な価値観を共有する者に対して感じる友情のことであり,友のためには死をも辞さない心情のことである。
④ 究極的な一者から人間に与えられた愛のことであり,究極的な一者に全面的に帰依する心情のことである。
問10 プラトンは当時の民主制を,正義を破壊する堕落した政治形態とみなした。プラトンの正義についての考えを説明した記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人間の魂は理性・気概・欲望の三つの部分からなり,これら魂の各部分が相互に調和を保つなら,個人にとっての正義の徳が実現される。
② 国家には統治者・防衛者・生産者という三つの階級があり,人間はそれぞれの資質にふさわしい階級に属するべきである。
③ 哲人・軍人・庶民がそれぞれ知恵・勇気・節制いずれかの徳を発揮しつつ相互に調和し合うことによって,理想国家が実現される。
④ 国家の正義と個人の正義は,階級の違いを越えて相互に人間を結びつける契約によって,調和が保たれる。
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