公共授業ネタ03 生存権を実現させるために必要なパンツは何枚？

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。

私の意識としては、１時間のうちに作業できる時間を10分～15分（50分授業のうち）確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、「社会権(生存権)」の授業で実施しました。授業プリントは別ページで公開しているので、そちらを参考にしてください。社会権の中でもメインとなる生存権について、まずは重要な条文の確認をします。憲法25条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を有する…」というもの。そこで問いかける。「健康で文化的な最低限度の生活」ってどんな生活だろうか？

これは人により異なるよね？基準を作るのって難しいよね？そんな話をしながら、じゃあ実際に考えてみようという流れで作業を始めていきます。

作業の流れ

➀朝日訴訟について紹介する

まず、生存権の最頻出判例でもある朝日訴訟について紹介します。この時考えられていた生活保護の日用品は月600円であるが、物価が全く異なるため参考にならない。(朝日さんが生きた時代はラーメン１杯が25～30円）そこで、「もの」で「健康で文化的な最低限度の生活」を考えてみようというのが今回の作業になります。各資料集に当時の日用品リストが記載されているものがあるので、その中からいくつかピックアップするといいと思います。

➁必要なパンツは何枚だろう？

いくつかピックアップするとはいえ、時代が違い過ぎるためイメージしにくいものも多いです。下駄やせっけんなどは今の高校生に聞いても？マークでしょう。私は比較的イメージしやすいパンツ・肌着・タオル(手ぬぐい)を授業で使いました。他にも歯ブラシや理髪料なども使えると思います。ちなみに年間いくつかで計算しています。

考えるにあたって、「洗濯ができること」「もともと持っているものも使っていい」という条件は統一しておきます。使い捨てだと考えて300枚！と書いたり、０から集めると勘違いして10枚！と書いてくる生徒が現れるので注意しましょう。買い替えるものとして、どのくらいの数必要かを考えさせましょう。

パンツの話となると男女間で意見交換をしにくい（教員も意見を求めにくい）点はありますが、活発に発言してくれる生徒を中心に結構盛り上がります。

③実施後のまとめ

話合わせたり、何人かに発表させた後、答えを発表します。大体の生徒が３～４枚以上の数字を記入しているため、正解発表すると驚きの声が上がります。当時実際に計算されていた数字なので、どのレベルの生活水準かが実感できると思いますし、朝日さんの生活状況を印象付けることができるでしょう。

項目が少ないと感じた場合は、他にも歯ブラシ６個、理髪料12回、鉛筆６本、湯呑１個、草履２足なども使えるのではないでしょうか。

「最低限度の生活」であれば、これでもよかったかもしれませんが、今回問われているのは「健康で文化的な最低限度の生活」です。「健康で文化的な」という部分をどのようにとらえればよいか、ここが非常に難しい。みんなが納得するように上げればいいか？という安直な考えはいけない。一生懸命働いて稼いだ金額と同レベルになってしまうと、勤労意欲を失う人も現れるかもしれない。現代の生活保護制度にも繋がる課題であるため、そこまで展開させても面白いかもしれませんね。

実施した後の反省点

よかったら試してみてください！

授業プリントについては、本サイトの「授業プリントのページ」にて掲載されています。公共プリント11「社会権・請求権・参政権」や政治プリント08「基本的人権-社会権」に載っていますので、よかったら参考にしてください。質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。