政経講義22 選挙のしくみや課題をわかりやすく

政経

本単元のポイント
①衆議院と参議院の選挙制度
②選挙の課題

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

今回は、選挙制度や選挙の課題についてのポイントまとめを書いていきます。選挙のしくみは時代に合わせて変更してきており、その転換点をしっかりと抑えていく必要がある。特に衆議院と参議院で選挙方法が異なる点や、近年の選挙の課題や対策などが頻出ポイント。

▼日本の選挙制度

⑴日本の選挙権の歴史

まず選挙権がどのように拡大してきたかについて整理しよう。

選挙権拡大の歴史

選挙が始まった当初は、一定の納税額を必要とする制限選挙であった。15円という額は今の15円とは全く異なる価値であり、大金であった。ゆえに、有権者は全人口のうちの1%程度であった。その後、法改正に伴い納税額が10円、3円と安くなっていったが、それでも全人口比5%程度にしかならなかった。

1925年の普通選挙法により、ようやく日本でも普通選挙が実現したが、男子に限定された。男女の普通選挙が解禁されたのは、1945年の衆議院議員選挙法改正によるものであり、欧米諸国と比較して遅れをとった。2015年には公職選挙法改正に伴い、18歳以上にも選挙権が与えられているが、投票率は低下傾向にあり問題視されている。

⑵選挙制度の種類

一言で選挙と言っても、シンプルな多数決という訳ではない。大きく分けて3つの方法があるため、それぞれの特徴とメリットデメリットを抑えよう。

選挙制度の比較

小選挙区制は「1人だけ当選」という点がポイント。つまり、1位にならないと当選者が出せず、自ずと力のある政党にしか勝ち目がない。勝者が限定され、二大政党制を形成しやすい。デメリットとして挙げられる死票というのは、落選者に与えられた票のこと。2位以降は全て落選となり、その票は国会へ届かないということになる。少数派の意見が反映されにくいデメリットがある。

比例代表制は「得票数に応じて当選者を配分」という点がポイント。入った票を配分していくため、少ない票でも当選を出すことが可能。小選挙区でデメリットとなっていた、少数派の意見の反映が可能になる。一方で、複数の政党に議席を配分するため、多くの党が乱立する恐れもあり、政権は不安定になる。

⑶衆議院の選挙制度

衆議院の選挙制度(小選挙区)
衆議院の選挙制度(比例代表)

衆議院は、小選挙区比例代表並立制という仕組みを採っており、その名の通り2種類を組み合わせて選挙を行う。小選挙区と比例代表の両方に立候補することができる重複立候補を認めており、小選挙区で落選しても、比例代表で復活当選することがある。

比例代表の当選者はあらかじめ名簿にて順位付けされており、拘束名簿式と呼ばれている。つまり、この人は必ず当選させたい!という議員は、順位を高くしておくことで確実に当選させることができる。政党による順位付けで同順位の場合もあり、その際は小選挙区の惜敗率が高い方を優先的に当選させる

補足 惜敗率とは?

惜敗率とは「どのくらい僅差で負けたか」を数値化したもの。例えば、A党太郎1000票・B党一郎800票の場合、一郎の惜敗率は800/1000×100=80%となる。この惜敗率がより高い方が、僅差であったということになり、同順位の場合は惜敗率の高さで優劣をつける。

また自民党内においても、内部の派閥争いが激化していく。次の首相はどの派閥から出すのかという争いに始まり、同じ選挙区に複数の候補者を出すこともあった。こうなると、多額な政治資金が必要になり、政治とカネの問題を引き起こすことになる。

⑷参議院の選挙制度

参議院の選挙制度(選挙区)
参議院の選挙制度(比例代表)

参議院も、衆議院と同様に選挙区と比例代表を組み合わせた選挙制度である。しかし、選挙区は都道府県ごとに分けられ、1~6名の当選を出すことになっている点が異なる。また、両方立候補することは出来ず、どちらか一方での出馬となる点も、衆とは異なるので要注意。

もう一点大きく異なる点として、比例代表の候補者は名簿で順位付けされていない非拘束名簿式を採用している。有権者は政党名・個人名どちらを書いてもよく、いずれの票も一旦は政党の票として集計される。参議院で元タレントやスポーツ選手などの有名人が多いのは、知名度が高いとその分政党へ入る票も多くなるからであり、票を稼ぐための選挙戦略の一つである。どの政党が何議席獲得するかについては、衆議院と同様の方法で配分するが、実際の当選者は候補者への票数が多い順に決められる。

⑸選挙制度の近年の動き

(ⅰ) 衆議院比例代表の配分方法がドント方式からアダムズ方式へ!
各都道府県の人口比率をより反映できるしくみであり、2022年から導入される。

(ⅱ) 参議院選挙区で一票の格差是正のため、鳥取島根と徳島高知が合区扱いに!
都道府県で1つの選挙区であったが、人口が少ない都道府県でバランスを整えるために4県を2つの選挙区に改編した。

(ⅲ)参議院比例代表において、特定枠の導入
基本は非拘束名簿式を採用する参院選であるが、一部特例で拘束名簿式を活用できるように。これは(ⅱ)の合区により定数が減ったことで、地元の選挙区に出馬できなくなった候補者に対する保護として、導入された。

▼選挙の課題

公平な選挙の為には、いくつかの課題を解決しなければならない。現在どのような課題があるのか紹介する。

□ 選挙運動の規制

公職選挙法にて、立候補前の事前運動・戸別訪問・署名運動を禁止した。候補者本人に限らず、後援会の会長や家族などの候補者に近い関係にある者が違反で逮捕されたときも、当選が無効になる制度(=連座制)もある。

□ 投票環境の向上

2007年より、それまで禁止されていた選挙区への在外投票(=海外に住む日本人の投票)が可能になった他、2013年にはSNSやインターネットによる選挙運動解禁期日前投票の充実などが進められている。インターネットの選挙運動については、身近に政治の関心を持てるようになるが、安易な発言は注意すること。また、満18歳未満の選挙運動は禁止されていることにも注意。

※ここで注意したいのが、インターネットによる「投票」はまだ実施されていない!

□ 一票の格差

人口や議員定数の関係で、一票の価値に不平等が生じている問題。
※2021衆院選 2.09 倍 2022参院選 3.03 倍

一票の格差とは

入試でも頻出となっているので丁寧に理解してほしいところ。右の表のように、同じ1人の当選者を出す選挙区で人口に差があると、一方では3000票を得たのに落選し、一方では600票でも当選…という
事態が起きる。このように、1票の重みに差が生まれる問題を、一票の格差という。

下の場合、この二つの選挙区間では10倍の格差があるといえる。ちなみに2023年現在で最も格差が大きくなった選挙は、衆院で4.99倍(1972)・参院で6.59倍(1992)となっており、選挙区や定数の変更させながら格差是正に努めている。

一票の格差とは

選挙についてのまとめは以上。過去問等でアウトプットのトレーニングもしていきましょう!

授業プリントはコチラからダウンロード→プリントのページ

一問一答はコチラから!→一問一答11.政党・選挙

過去問演習はコチラから!→政経演習14.政党政治と選挙制度

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