今回は自由権について。自由権にはどのような権利が存在するのか、またそれぞれの権利における判例などを紹介していきます。
自由権で保障される権利
まずは自由権を細分化してまとめたものを見てみましょう。

上記のように、自由権は3つの自由に分けられます。今回はこの中で「精神の自由」についてポイント解説をしていきますが、「精神の自由」の中でもさらに複数の権利に分類されます。特に信教の自由に関する部分は、入試でも頻出となっているため、主要判例をピックアップしていきます。
信教の自由
第20条では、信教の自由が明記されています。また、この第1項の中で、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と記されているように、政治は宗教に干渉すべきでないとする「政教分離の原則」が定められています。この政教分離に関する判例が多いので、詳しく説明していきます。
津地鎮祭訴訟(1977最高裁判決)
まず一つ目の判例は、「津地鎮祭訴訟」です。三重県津市が市立体育館の建設に際し、伝統的な神道形式の地鎮祭を主催しました。この費用を公金(税金など)から支出したことに対して、宗教的行事に公的なお金を使っていいのか?という訴訟が起きたものです。

名古屋高裁では違憲判決が出たものの、最高裁では合憲判決となりました。地鎮祭は一般慣習の儀式に過ぎず、宗教的意味合いが強い行事ではないと判断され、ここへ公金支出する行為は「政治と宗教の癒着」とまでは言い難いと判断されたようです。
愛媛玉ぐし料訴訟(1997最高裁判決)
同様の判例をもう一つ紹介します。
愛媛県が靖国神社などに対し、合計16万円程度の玉ぐし料を公金(税金など)から支出して奉納していました。この行為に対して、特定の宗教に公的なお金を使っていいのか?という訴訟が起きたものです。

この判例では、最高裁で違憲判決が出されています。先ほどの津地鎮祭訴訟と内容は大きく異なりませんが、支出先の靖国神社が裁判の争点となりました。靖国神社とは、戦没者やA級戦犯を祀った神社であり、第二次世界大戦時の軍国主義を象徴する神社のひとつです。つまり、一般的な神社とは違う、特別な意味合いを持つ神社であったため、特定宗教への援助と判断されました。
砂川政教分離訴訟(空知太神社)(2010最高裁判決)

もう一点、近年最高裁判決が出されている判例について、紹介していきます。こちらも最高裁で違憲判決が出ているので、要チェックです。内容は図の説明を確認してください。
以上の判例のように、どこまでの行為が政治と宗教の繋がりと捉えられるかが、難しい判断となっています。近年では、自民党議員と旧統一教会との繋がりが問題視されたり、公明党と支持母体の創価学会・幸福実現党と宗教団体「幸福の科学」の関わりが疑問視されたりなど、政治と宗教の線引きをどう引くべきかが、今後も議論され続けるテーマになるでしょう。
精神の自由に関わる判例
最後に精神の自由に関する判例を紹介して、この単元を締めくくりたいと思います。身体の自由については、次回の解説にて扱う予定です。
思想良心の自由の判例

表現の自由の判例


信教の自由を中心に、判例をしっかりと覚えておきましょう!
コメント