現在世界には196カ国の国があります。(2025年現在、日本が国として認めている数)しかし、政治のやり方についてはそれぞれ違う特徴があり、その比較が大学入試では頻出となります。特によく出るのが、議院内閣制のイギリス、大統領制のアメリカ、権力集中制の中国ですが、近年はドイツやフランス、ロシアなどの国々も登場することがあります。順番にポイントを解説していきます。
▼イギリスの政治体制
上に挙げたように、イギリスは議院内閣制の代表例として取り上げられます。議院内閣制とは、議会と内閣が連帯して政治を行うしくみであり、日本も同様の体制を採っています。一番の特徴は、行政のトップが「議会の信任」で選ばれるということです。どのような関係性で政治が行われているのか、下の図にまとめてみました。
イギリスには国王が存在しますが、日本の天皇と同様に象徴的な存在となっています。立法機関である議会は貴族院と庶民院の二院制となっており、貴族院には国王から任命された議員が所属します。国民からの選挙で選ばれるのが庶民院となっており、政治的な権限は庶民院(下院)が優位となっています。ここから首相が選出され、内閣と議会が連帯して政治を行っていきます。何度も繰り返しますが、行政のトップは「議会からの信任」!日本と同様に、リーダーを直接選挙するわけではないという点がポイントとなります。
また、イギリス独自の特徴として、別で2点抑えておきたいことを紹介します。1点目は多数派になれなかった勢力、つまり野党側が「影の内閣(シャドー・キャビネット)」を組織して、権力を奪った際にすぐ運営ができるよう準備していること。
2点目は2009年に最高裁判所が設置されたこと。それまでは貴族院が最高法院の判事を兼任し、その機能を兼ねていましたが、権力分立を厳格化するために独立した最高裁判所が設置されたという流れです。またイギリスは伝統的に不文憲法であることから、現在も違憲立法審査権がありません。日本は年間150程度の成文法が成立するのに対し、イギリスは2~3個しか成文法ができないそうです。
▼アメリカの政治体制
アメリカは大統領制をとっている国。議会の多数派から首相が選出される議院内閣制とは異なり、国民の選挙により大統領が選出されます。つまり、国のリーダーを決めるのが「議会」ではなく「国民」という点が、大統領制の特徴です。関係図は以下の通りです。
アメリカのポイントを2点にまとめます。まず1点目は、上記のように直接国民から選ばれるということで、大統領には強い権限が与えられることです。議会と大統領は独立して政治を担いますが、一方で法案や政策の提言を行う教書を送付できることや、議会の法案決定に対しての拒否権が認められるなど、1人で国全体を左右する決定が可能となっています。2025年1月に再就任したトランプ大統領は、独自路線をもった政治家であるため、彼が就任することによって国としての政策も大きく変化していきます。※拒否権については議会の2/3以上の再議決で停止できるので、何でも好き勝手出来るというほどではありません。頭の片隅に入れておいてください。
2点目は、それぞれの権力が厳格に分離しているということです。議会と大統領は別の選挙でそれぞれ選ばれるため、権限が明確に分離しています。加えて司法も独立しており、違憲立法審査権も存在します。厳格な三権分立が採用されている点がアメリカの特徴です。
その他にも、任期が4年で三選禁止であることや、共和党と民主党の2大政党が政権を争っていることなどもあわせて抑えておきたいですね。
▼中国の政治体制
最後に中国についてです。ここは権力集中制(民主集中制)の国であり、中国共産党による一極集中政治が実施されています。図で紹介すると一目瞭然です。
立法機関である全国人民代表大会(以下:全人代)が、最高機関として国家主席や司法、軍隊に対しての決定権を持っており、国民からの選挙で選出されます。しかし、その全人代を指導するのが「中国共産党」であり、中国共産党の意向が各方面に影響を与えていきます。当然、全人代の過半数(2025年現在は全体の約70%)は中国共産党占められており、国家主席も中国共産党からの推薦となる。
これは余談になりますが、国家主席は任期5年の3選禁止というルールがありましたが、2018年に憲法が改正された結果、廃止となりました。2025年現在国家主席である習近平は2013年より就任しており、3期目に突入しています。
▼首相と大統領の権限
以上のように立法と行政の関係性は、国それぞれですが、中には議院内閣制と大統領制を組み合わせ、首相と大統領が共存する国もあります。そのような国については、最低限どちらが権限を持っているのかだけでも抑えておく必要があります!表で確認しておきましょう。中でもフランス・ドイツ・ロシアあたりは、資料集等で細部まで見ておくとよいかもしれません。
その他、大統領制を採る国として、インドネシア・フィリピン・ミャンマー、議院内閣制を採る国として、シンガポール・タイ・マレーシア、権力集中制を採る国として北朝鮮などが例として挙げられます。また、イランはイスラームの原理に基づく政治を行うイスラーム共和制を実施しています。
最後の辺りはマニアックな内容ですが、序盤から中盤の内容は頻出ポイントとなってきます。過去問等をしっかり復習して身につけておきましょう。
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