はじめに
新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。
私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。
関連 : 授業プリントのページ
作業ネタの設定単元
今回の作業ネタは、法規制について考える単元で実施しました。近年はSNSやフリマアプリの普及により、高校生でも「転売」という行為に馴染みがある時代となりました。ポケモンや遊戯王などのトレカ、限定グッズなどが転売目的で買い占められ、高額販売されている問題も身近なものとして捉えているようです。
そこで今回は2024年9月中旬ごろにニュースで見た、アイドルグループSnowManのライブチケットの不正転売を取り上げました。学生にも人気のグループなだけあって、このニュースを知っている生徒もいました。このような不正転売問題をどのように法規制すべきかという議論を、単元の導入として行いました。
重視した点・授業の流れ
⑴事件の説明
以下のように、今回の概要を説明しました。
人気男性アイドルグループのSnowManが、2024年にドームツアーを実施することが決定した。しかし、チケットの抽選は高倍率であり、なかなか入手できないそうだ。そんな現状を逆手に取り、チケット転売サイトには続々と出品がされ始め、最も高価なものでは120万円で売られているものもあった。さすがに批判が殺到し出品を取り消していたが、それでも20万円や50万円で出品され続けているものがある。これらの高額転売について議論を深めたい。
⑵法規制に向けて考える
まずはなぜ起こるか、どんな影響があるかという点を考え、整理していきます。問題の原因や結果が曖昧だと、規制の仕方にもバラつきが出すぎてしまいますし、感情論にならないようにさまざまな視点から考えることで、何を規制すべきなのかを明確にしていきます。今回は以下のようにプリントを作成しました。朱書き部分は生徒の回答を想定したものです。
⑶実際に条文を考える
「この問題に対して法規制をするとしたら、どのような条文が適当だろうか。」という問を設定し、実際の法律を考えていきます。実際のチケット不正転売法は後ほど見せたいので、ここでは使いません。
実際の法律と比較できるよう、目的・定義・法律効果の3項目に分けて考えさせました。なぜ定義が必要か?と考えさせると、法律の公平性が重要である点に気づくことができます。作業の声掛けとして、堅苦しく考えすぎないことを助言し、自分たちの感覚や表現でまとめるようにアドバイスしました。書いたのちに、周りの生徒同士で意見を共有したり、法律の評価基準を示して振り返りをさせたりしました。
参考★法律の評価基準
①目的が正当であること
②手段として適当であること
③不特定多数の人々や物事に等しく適用されること
④意味内容が明確であること
【参考】プリントの該当部分(記入例)
⑷振り返り・まとめ
最後に実際のチケット不正転売法を見て、自分の考えと比較させます。自分の法案で気づいた点や、実際の法案で不足する点や過剰な点が無いかをまとめてみましょう。また、最後にこの事象を法規制以外で防ぐことはできないか、改めて考えさせてみましょう。
チケットは数か月前~数日前に事前に購入するものなので、参加予定の人が諸事情により行けなくなってしまう可能性はあります。空席になってしまえばアーティストも残念ですし、参加したかった人に譲ることもできたかもしれません。この場合、正当なルールで転売ができればみんなが幸せな結果となります。しかし、これらの不正転売が深刻化し厳罰化が進めば、交換自体が制限されることも考えられます。このように、法の厳罰化が進むということは、一方で個人の自由がより窮屈なものになってしまうという視点は持たせておきたいです。本当に法規制が必要か?道徳に委ねる形で解決できないか?という視点も忘れず、世の中に存在する法について考えてみてほしいと思います。
実施した後の反省点
よかったら試してみてください!質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。
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