政経講義62 国際収支をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 各項目の分類を覚える!
⑵ 計算問題に慣れる!

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…入試頻出の最重要事項
黄蛍光ペン…抑えておくべき重要事項

今回は国際収支のポイント解説ですが、超頻出分野になります。覚える量が多く複雑ですが、しっかり分類が理解できれば得点源にできます。丁寧に説明していきます。

▼国際収支とは

国際収支とは、一定期間の対外的な経済取引を記録したものです。難しく書いてありますが、私たちが食費・光熱費・給料というように項目別にお金が出入りするのを、国全体で捉えたものとイメージしてください。海外に対してどの程度輸出したのか、工場を建設したか、株を購入したかなど、国同士の収支が項目別に計算されます。

2014年以降から形式が変わり新統計となっていますが、だいぶ前の話なのでよっぽど新形式が反映されているはずです。ただし、古い過去問を解く場合などは注意してください。ちなみに、本サイトの過去問ページにも旧形式の時代の問題を載せていますが、新形式の知識で解けるように改題しています。安心して活用してください。

この後、細かい項目について解説しますが、その前に大原則として抑えてほしいことが1つあります。それは「外貨」と「資産」の考え方の違いについてです。例えば、日本が米国へ自動車を輸出し、1万ドルの外貨を受け取ったとします。これは純粋に1万ドル「プラス」となりますね。

一方で、株式や土地などの資産については逆の考え方をします。例えば米国株を購入するために1万ドル支払ったとしましょう。先ほどの考え方で言えば、お金を支払っているので「マイナス?」となるところですが、米国株式を「資産」として受け取ったということで「プラス」計上することになります。

このように、お金の動きだけで考えると辻褄が合わなくなってしまうので、注意してください。外貨の受け取り・資産の流入が「プラス」、外貨の支払い・資産の流出が「マイナス」です。ちょっとわかりにくいな…という人もいるかもしれませんが、一旦詳細の項目を見てみてください。具体的なイメージができるはずです。では項目について説明します。

▼国際収支の項目

項目別の説明

まず一覧で見ていただいた方がわかりやすいと思うので、授業プリントの表を以下に提示します。

国際収支の項目は、大きく分けると「経常収支」「資本移転等収支」「金融収支」の三点です。

「経常収支」はさらに細かく貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支に分類され、それぞれの内容は図を参照してください。わかりにくい部分は別で解説します。

ここで先ほど説明した「外貨」と「資産」の考え方の違いが使われるのですが、3つの項目のうち「金融収支」だけは資産の流れで計算をするため注意が必要です。例えば、日本が米国の土地を20億円で購入し、一方で米国が日本の株式に60億円分の投資をしたとします。この場合、日本が得た資産は+20億円、売り渡した資産は-60億円と計上され、金融収支はマイナス40億円となります。何度も繰り返しますが、動いた資金で考えないよう、気を付けてください。

混同しやすいポイント

各項目の内容については、覚えてもらうしかありませんが、わかりにくい部分のみ解説したいと思います。

①投資に関する収支

まず1点目が投資に関わる収支についてです。これもプリントで使用する図を引用して説明します。

ここでは、株の50%を買い占めて子会社化するというような大規模な話ではなく、私たちがNISAを利用して米国株を買うようなイメージの話になります。近年、ネットから簡単に外国株を買うこともできるようになり、AppleやGoogleというような超有名企業の株主にもなれます。

例えば、私(日本人)がApple社(米国企業)の株を100ドル購入した場合、100ドル分の資産がアメリカから日本へ動いたと考えます。この100ドルは「金融収支の証券投資」にプラス計上されます。

さらに、保有し続けることによって、定期的に配当が受け取れます。2025年1月現在、Apple社は1株あたり四半期に0.25ドルの配当を受け取れるそうですが、この資金もアメリカから日本へ入ってきた資金として計上します。この配当は「第一次所得収支の投資収益」に含まれます。

投資1つとっても複数の項目に分かれるため、注意が必要です。

②援助に関わる収支

2点目は援助に関わる収支です。1点目よりマイナーな内容になっていますので、頭の片隅に入れておいてもらえればと思います。表でまとめた内容以上のものは無いので、以下の図を確認してください。

項目別データの特徴

最後にデータの特徴についてです。グラフや表を使用して出題されることもあるので、あらかじめ知識として持っておくと解答しやすくなります。

これは日本の国際収支の推移になります。特徴を以下にまとめます。

①貿易収支の黒字が定着→近年は厳しく
 ※2011~15に赤字を記録したのは、東日本大震災の影響で原発が停止し、
  資源の輸入が増加したことが要因→数年赤字が続く
 ※直近も資源高騰による輸入額増加が影響し、厳しい数値に

②直接投資・第一次所得収支がバブル期から増加傾向
 近年の海外への子会社設立や証券投資拡大により
 投資収益が増加→第一次所得収支の黒字拡大へつながる

③長年赤字のサービス収支が観光客効果で2000年頃から増加
 ※2000年代より徐々に赤字幅が縮小傾向にあったが
  コロナ禍の観光客激減を背景に再び赤字が拡大した

世界各国のデータが出題されることは稀ですが、アメリカは貿易収支が大幅な赤字となっている点や、それに対し中国は貿易収支が黒字である点などは、知っておいてもいいかもしれません。

▼まとめ

以上で国際収支のまとめは終了です。非常に覚えにくく、内容も濃いですが、頻出単元となっているので捨てることはできません。問題を解くことで定着を図ってもらいたいと思いますので、ぜひ過去問へのチャレンジをしてみてください。読んでいただきありがとうございました。

過去問演習にチャレンジ!→ 政経演習44 貿易と国際収支⑵
一問一答問題にチャレンジ!→ 一問一答国際08国際収支・為替
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