政経講義47 国際連合の成立をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 国際連合が成立した背景
⑵ 国際連合の主な役割

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…共通テスト頻出の最重要単語

黄下線ペン…共テ応用問題や私大入試で抑えるべき

今回は国際連合の解説になります。前回解説した国際連盟が失敗に終わり、第二次世界大戦を発生させてしまった反省を生かし、新たな組織づくりを目指すことになる。頻出分野でもあり内容も盛りだくさんとなるため、2回に分けて解説していきます。初回は国際連合の成立までの過程や、主な役割について紹介していきます。詳しい組織については次の「政経講義48国際連合の組織」を参考にしてください。

▼国際連合の設立

第二次世界大戦の反省

1939年に発生した第二次世界大戦は、複雑に多くの国が絡み合う戦いとなりました。世界恐慌の影響で経済的に苦しかったドイツがポーランド侵攻を進め、相手国の条約関係にあったイギリスやフランスが参入する形で拡大したといわれています。ドイツと関係のあった日本やイタリアに対し、仏英やソ連アメリカが対抗し、多くの死者を出す戦いとなりました。結局は国際連盟が機能せず、勢力均衡での対立が多くの国を巻き込む形となり、第一次世界大戦の失敗を繰り返すことになります。

この失敗を経て、今度こそ平和維持を実現するために戦後の平和構想が進められる。1941年の大西洋憲章ではアメリカのローズベルト大統領と、イギリスのチャーチル首相が会談。

1944年にはダンバートン・オークス会議(米・英・中・ソ)で国際連合(以下、国連と表記)の原則を具体化した提案書を作成し、1945年のヤルタ会談(米・英・ソ)で安全保障理事会の表決方法を決定していきます。同年のサンフランシスコ会議にて国連憲章(国連のルールブックのようなもの)が採択され、正式成立することになる。

お気づきの人はいると思いますが、国連設立に関わった国々はいわゆる戦勝国。日独伊に対する国々で作戦会議をしていた集まりが発展し、国連の構想を進めていきました。敗戦国となった日独伊などは、国連への加入や重要な役職への就任が後回しにされていくことになります。後の安全保障理事会の説明でも重要な知識なので、覚えておいてください。また、国連成立の年は日本が降伏した終戦の年でもあります。ドイツ・イタリアも1943年に降伏しており、日本の降伏と同時に新しい世界体制がスタートしていったことになります。

国際連合のはじまり

こうして誕生した国連は、原加盟国51カ国で発足します。以後、平和維持や国際友好を目的としてPKO派遣や総会の開催を実施していきます。日本は1956年に、ドイツは1973年に加盟が認められ、2023年現在で193カ国の加盟国が存在する組織となりました。ちなみに最新の加盟国は2011年の南スーダン。PKOや地域紛争などの範囲でも登場する国なので、入試で問われる可能性はあります。

中でも、アメリカ・ソ連(現ロシア)・中国・フランス・イギリスの5カ国は五大国と呼ばれ、大きな権限を握っています。どのような権限を握っているかは、次の解説「政経講義48国際連合の組織」で詳しく説明します。

+α 日本の国連加盟はソ連の関係
日本の国連加盟が認められる直前に、日ソ共同宣言(1956)が調印されている。これにより、交戦状態にあった両国で国交が回復し、日本への歯舞群島と色丹島の引き渡しも規定された。この仲直りにより、ソ連が日本の国連復帰を支持して、2か月後に国連加盟が実現した。

▼国連の概要

国連の組織については次に詳しく解説するとして、今回は大まかな内容のみ。まず全加盟国が参加する「総会」は各国1票をもち討議を行う。いわゆる世界会議。「安全保障理事会」は国際紛争の調査や調停を行う組織で、入試でも超頻出。これらの組織は次の解説で詳しく説明します。

国連の組織

PKO活動について

上の安全保障理事会や総会の決定により、平和維持活動を行うことをPKO(国連平和維持活動)という。ここで入試によく出るポイントが2点あるので抑えておきましょう!

PKOのポイント
➀国連憲章に規定は無い→6章半活動
➁国連平和維持軍(PKF)と国連軍は違う!

➀PKOとして何度も派遣が行われているが、実は国連憲章にPKOに関する正式な文章は存在していない。「いざという時にはPKOを派遣しましょう」というルールがないということ。そこで、6章にある平和的手段、7章にある強制的な手段の内容を組み合わせて、PKOを正当化している。具体的に説明すると、6章には「平和の危機があったら当事者に解決を求めよう」、7章には「安全を破壊する相手には軍事的措置も含む対応を可能とする」という記載があり、じゃあ平和を維持するための最小限の武力行使は認められるよね?という判断。6章と7章の間をとって実施するから「6章半活動」と呼ばれている。

➁PKOの中には自衛のための軽武装をするPKF(国連平和維持軍)と、停戦の監視を行う停戦監視団に分けられる。ここで間違えやすいのが、国連軍との区別。国連憲章には、42条や43条などに「特別協定で兵力の協力なども可能な国連軍の創設ができる」と記載があるが、実はこの協定による正式な国連軍は過去に1度も組織されたことが無い

PKFは、あくまでも自衛以外の武力行使はしないものであり、国連軍とは性質が異なる。また、1991年の湾岸戦争で組織された米英日仏など30カ国以上の国による多国籍軍についても、国連軍として編成されたものではないので注意しましょう。

国連財政の課題

国連に関する大きな問題点として、厳しい財政問題がある。当然世界で活動する組織であるがゆえ、それなりの資金が必要となるが、実は東京都の予算よりも少額なほど規模が小さい。2023年度の国連の予算は約98億ドル、東京都の予算は約594億ドルである。

にも関わらず、分担金の未払いが深刻な問題となっている。国連予算はその能力に応じて負担する決まりとなっており、アメリカが1位(22%)、2位が中国(15%)、3位が日本(8%)となっている。能力とは経済力と同様で、GDPランキングに似たような並びになる。しかし、最大負担国であるアメリカを中心に、分担金の未払いが生じており、財政難が深刻である。平和維持に向けた軍派遣も資金が無ければできない。世界平和に繋がる問題であり、今後の改善が必須となる。

▼まとめ

国連ほとんどすべての国が参加し、集団安全保障方式が実現された組織となっている。平和維持に限らず、教育・保健・食糧・貿易などの国際問題も扱っており、存在感を示す一方で、近年頻発する地域紛争への対応や、国連分担金の問題をどう解決していくのかが課題である。国際連合の組織の概要については、次のまとめで解説していきます。読んでいただきありがとうございました。

過去問演習にチャレンジ!→政経演習37国際社会と国際法
             政経演習38国際連合の役割
一問一答問題にチャレンジ!→ 一問一答国際02国際連盟と国際連合
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