はじめに
新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。
私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。
関連 : 授業プリントのページ
作業ネタの設定単元
今回の作業ネタは、生存権(第25条)の範囲で実施しました。ここで保障される「健康で文化的な最低限度の生活」がどの程度のものか?という問いを通して、その線引きの難しさを考えてもらうことが狙いです。「健康で文化的な」という点をどのように捉えればよいか、人によって感覚にギャップがあると思うので、議論テーマとして面白いと考えました。朝日訴訟の内容から生活保護について考える授業ネタも、過去投稿に掲載してあります。よければ参考にしてください。→ 公共授業ネタ03 生存権を実現させるために必要なパンツは何枚?
重視した点・授業の流れ
➀選択肢を提示して基準を考える
今回のプリントでは以下のような問いかけをしてみました。
選択式にすることで、簡単に答えることが出来ます。後の反省点にも書きますが、今回用意した選択肢に際どいものが少なく、解答が似たようなものになってしまいました。もう少し際どいラインを攻めれないと、議論が活性化しません。次作るとしたら、「スタバに行く」「年に1回だけ映画を見る」「漫画や小説を買う」など、意見が割れそうな選択肢で再挑戦してみようと思います。
➁解答を共有した後、様々な視点を与える
それぞれがどのような視点を持つかによって、考え方は変わってきます。自分が生活保護等を受ける立場になったとしたら…、社会保障費の増加により納税がきつくなったとしたら…、最低賃金に近い額で一生懸命働いている人の立場だったら…など、もし視点が一辺倒になっている場合は、追加で話をするといいと思います。
③リアルな制度から学ぶ
話題の着地点として、現在の日本の生活保護の実態を紹介します。そもそも生活保護とは、最低生活費に足りない額を保障してもらう制度になります。最低賃金よりは下回る水準となるよう、調整されています。ただし、納税や保険料の分を踏まえると、結果的に残るお金がそこまで大きな差にならないという意見もあるでしょう。
また、生活保護を受けるためには、預貯金がない(→あればそれを切り崩せば生活できる)、換金できる資産(車や土地)をもっていない、援助してくれる家族や親戚がいないなどの条件が必要となります。つまり、①②④は現状の日本では認められないということになります。
一方で、③⑥⑦などの趣味娯楽に関わる内容は、法的に禁じられているわけではありません。しかし、生徒の多くはこれらの選択肢を選びませんでした。国民の税金で成り立っているという視点から考えると、違和感があるようです。先ほど例示した、カフェの利用、小説の購入などを生徒がどのように判断するか…、次年度の楽しみに取っておこうと思います。
まとめ
私がこの単元で伝えたかったのは、本当に必要な人に必要な制度が届いてほしいということです。一昔前、生活保護のお金でパチンコを楽しむ高齢者がニュースで取り上げられ、「生活保護で遊ぶな!」という論調が高まりました。しかし、「健康で文化的な生活」というのは、決して衣食住だけの生活では無いはずです。さすがにギャンブルは正当化できませんが、少しの娯楽を楽しむ余裕はあってもいいのではないでしょうか。
最近SNS上で「生活保護受給者はスタバなんか行くな」という意見を見て、ちょっと言い過ぎでは…?と思ってしまいました。頻繁に通って生活保護費が足りないと言っているのなら話は別です。しかし、与えられた最小限のお金の中で、本人にとって至福のひと時がそれであれば、他人が突っ込むところでは無いような気もしてしまいます。
個人的な意見が入ってしまいましたが、つまり何が言いたいかというと、厳しい目を向けて制度自体にマイナスイメージを持たせすぎることで、本当にその制度を必要としている人が不利益を受けないようにしてもらいたいということです。人によって生活水準の感覚は変わって当然ですが、偏った報道に感情的にならないことや、この制度があるおかげで生きていられる人がいる事を忘れないでもらいたいと思います。
実施した後の反省点
よかったら試してみてください!質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。
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