今回も貿易関連の話題になりますが、貿易学説に関連する部分を扱っていきます。主に、リカードが主張した「比較生産費説」が、入試問題でもよく出てきますので、この講義を通して完璧にマスターしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。
▼代表的な貿易学説
私たちの世界では、自国で全てのものを生産できるわけではありません。日本は食料や資源など、生活に必要な要素の多くを貿易に頼っている国になります。こうした国際分業を進めるうえで、どのような考え方があるかを紹介していきます。
国際分業の種類
国際分業には、大きく分けて2つの考え方が存在します。図を見てもらえるとわかりやすいと思いますが、工業国同士・農業国同士などの対等な分業を「水平的分業」といい、先進国と途上国で一次産品と二次産品を交換する分業を「垂直的分業」といいます。日本で例えるならば、アメリカやEUと工業品を交換するような分業が前者、鉄鉱石や石油などの一次産品を輸入し、完成した機械や自動車を輸出するような分業が後者です。垂直的分業の方が支配関係が構築されやすいため、南北問題を拡大させる恐れもあります。
国際分業の種類
高校政経レベルで登場する貿易学説は、大きく分けて2つのみです。1つは19世紀にイギリスのリカードが提唱した「比較生産費説」、もう1つがドイツのリストが提唱した「保護貿易」です。
簡単に説明すると、「それぞれ得意なものを生産してどんどん貿易したらいいよね」という自由貿易推進がリカードの主張で、それに対して「政府が管理しながら自国の産業を守るべきだよね」という保護貿易がリストの主張です。リストの主張は、どちらかといえば格差の下側にいる途上国の意見を代弁しているといえます。
それぞれの主張は、リカードの『経済学及び課税の原理』、リストの『経済学の国民的体系』で説明されているので、少々マニアックですが著書名も抑えておきましょう。この中でも特にリカードの比較生産費説が頻出です。
▼比較生産費説
比較生産費説の考え方
比較生産費説とは、それぞれが自分の得意なものの生産に特化して貿易しようというものです。自分のより得意な生産のことを「比較優位」といいます。例えば以下の図のような関係が問題でよく使われますが、表内には「1単位を生産するのに必要な人数」が示されます。「生産に必要な労働者が少ない=少ない労力で効率よく生産できる」と考えます。つまり、A国にとっては工業製品が比較優位、B国にとっては農産品が比較優位ということです。
ここで間違いやすいのが、リカードの比較生産費説は「それぞれの」国の中で優位なものに特化するということです。例えば、先ほどの図でいえば、工業製品も農産品もいずれもA国が効率よく生産できます。だからといってA国が全て作って、B国に送ればいいという訳ではありません。あくまでも、それぞれがそれぞれの国で優位なものを作り、後で交換するという考え方です。
比較生産費説の問題対策
さて、実際に問題を見ていきましょう。問題を解く場合、1人当たりの単位計算に慣れる必要になります。2人で1単位の生産ができるなら、1人あたり1/2単位。単純な算数の問題です。例題を以下に出しますので、空欄に入るものを考えてみてください。考えることができたら、解答のボタンを押して開いて確認しましょう。
このように1人当たりの生産単位を出すことで、特化した後の生産単位が算出できます。この単位計算が全ての基本になるので、丁寧に抑えましょう。
最後に、実際の共通テスト過去問より、問題にチャレンジしてみましょう。
問 国際分業のメリットを説明する比較生産費説について考える。次の表はA,B各国で,工業製品と農産品をそれぞれ1単位生産するのに必要な労働者数をあらわす。これらの生産には労働しか用いられないとする。また,各国内の労働者は,この二つの産業で全員雇用されるとする。この表から読みとれる内容について,下の文章中の[ ア ],[ イ ]に入る語句の組合せとして正しいものを,下の①~④のうちから一つ選べ。
いずれの産業においてもA国はB国よりも労働生産性が[ ア ]。ここで農産品の生産をA国が1単位減らしB国が1単位増やすとする。すると生産量の両国の合計は,農産品では変わらないが工業製品は[ イ ]増える。
① ア 高 い イ 1.5単位 ② ア 低 い イ 1.5単位
③ ア 高 い イ 0.5単位 ④ ア 低 い イ 0.5単位
ヒント! まず[ ア ]に関しては、比較優位の知識がしっかりあるかどうか。[ イ ]に関しては単位生産が必要になります。A国が農産品を1単位減らし、B国が1単位増やすと書いてあるので、それぞれ労働者はどのように移動するでしょうか…?
▼まとめ
比較生産費説の計算問題は頻出ですが、パターンとしては限られます。過去問でいくつかチャレンジすれば、すぐできるようになるはずです。ぜひ定着させて得点源にしましょう!
読んでいただきありがとうございました。
過去問演習にチャレンジ!→ 政経演習43 貿易と国際収支⑴
一問一答問題にチャレンジ!→ 一問一答国際07国際貿易
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