今回は社会権について。社会権の中には生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、勤労権(27条)などが含まれるが、最もよく出るのは生存権について。勤労権は後の労働問題の単元でも詳しく扱うため、今回は生存権を中心にポイントをまとめていきます。
▼生存権とは
生存権の考え方
生存権を規定した第25条では、「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」という規定がある。この目標を達成するため、社会保障制度の整備や公衆衛生の向上に努めている。
ここで生まれる疑問が、「健康で文化的な最低限度の生活」ってどんな生活…?ということ。「健康」の定義ならまだ何となく一致するかもしれないが、「文化的」というのは人によって異なるだろう。趣味に没頭できること?好きな服を着られること?でも最低限度の生活にしては、良い暮らしな気もする…?このように、どこまでの生活を保障すればいいのかという基準は明確に判断できない。
生存権について争われた判例として、朝日訴訟(1957訴訟)という事件があるが、「健康で文化的な最低限度の生活」の基準についてが争点となっている。
生存権の判例
朝日訴訟
生存権の判例として最も有名なのが、朝日訴訟である。この裁判は肺結核で入院していた朝日茂さんが、当時の生活保護制度が生存権の保障には足りていないとして、国に対して訴訟を起こしたもの。細かい経緯については以下のイラストを見て欲しい。
朝日訴訟は、最終的に朝日さんの死亡によって終結を迎える。裁判所の判断としては、低額の感はあるが、違法とまでは断定できないとのこと。プログラム規定説を採用して、具体的な権利については明言を避けた。
実質朝日さんは敗訴という形になったが、当時の世論を動かすきっかけとなり、生活保護の日用品費が大きく引き上げられた。
その他の生存権の判例
プログラム規定説とは
朝日訴訟で出てきたプログラム規定説とはどんな考え方か。これも頻出で、「国の指針を示したに過ぎず、国民に対して具体的な権利を保障したものではない」という考え方。つまり、憲法25条では「こんな生活を保障しましょう!」という方向性を示しているだけであり、実際に「〇円以上の支給をすべき」とか「△△のサービスを必ず実施する」というような細かいルールは立法権や行政権の裁量に任されるということ。
年金や児童手当のルールや、生活保護の減額などは、国やその地域が定めたものであり、それらについて訴訟を起こしても、裁判所では判断できないとして敗訴となってしまう。
▼その他の社会権
教育を受ける権利
その他の社会権として、まず教育を受ける権利がある。第26条にて、「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と規定されており、国民に教育を受ける権利を保障している。
経済的な貧富や能力に関係なく、等しく教育を受けることができるように、国は必要な施策を行う。26条の第2項では「すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」と規定されており、義務教育の無償は憲法にて定められている。
勤労の権利
勤労に関する権利は、勤労の権利義務について規定した勤労権(27条)と、労働者を守るための労働基本権(28条)がある。ここは経済分野の労働問題で詳しく扱うため、そちらの投稿を確認していただければと思います。
ひとまずこの単元は、生存権を中心に復習しておきましょう!
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