このシリーズでは、単元別講義とは別に、入試によく出る部分をより深く掘り下げる記事を作成していきます。図解とともに根本的な理解ができるよう工夫していきます。今回は「生存権」の範囲で登場する「プログラム規定説とは?」というテーマについてピックアップしました。最後まで読んでください!「生存権」を解説した記事はこちら↓

プログラム規定説とは?
プログラム規定説とは、裁判所が示す考え方の1つです。「憲法の規定は単なる政治的指針を示したにすぎず、国民に対して具体的な権利を保障したものではない。よって法的拘束力もない。」といった説明がされていますが、ちょっと難しいですよね。具体例も交えながら深堀していきます!
採用された判例 ~朝日訴訟~
まず、この考え方が採用された判例を見てみましょう。1967年に最高裁判決があった朝日訴訟についてです。

生存権を語る上で最も有名といっても過言ではない判例ですが、この裁判で「プログラム規定説」が採用されています。これにより朝日さんは実質敗訴となる訳ですが、どのような考え方なのでしょうか。
プログラム規定説の考え方
今回の裁判で、朝日さんは「現行の生活保護制度が憲法第25条に違反する!」として訴訟を起こしていますが、そもそも憲法第25条は具体的な権利を付与したものではないというのがプログラム規定説の考え方です。
つまり、この憲法に「月3万円以上の収入を保障しましょう!(=具体的な権利)」といった記載があれば、それに反する制度の場合に訴えを受け入れることはできるかもしれませんが、憲法第25条は方針でしかないということです。「法律作ったり、行政サービスを充実させたりして、健康で文化的な最低限度の生活をみんなできるようにしよう!」という意気込みを示したに過ぎないんです。
裁判所としては、「訴えられても具体的な判断はできません。」「この生活ができるよう、それぞれの自治体や、国の法制定に委ねます。」という形で、最終的には立法・行政が担うものであるという考え方です。

その他の解釈
上記の朝日訴訟だけでなく、高校政経で登場する堀木訴訟も、同様にプログラム規定説を採用しています。日本の司法において、憲法第25条に関連する内容は、プログラム規定説を採用することが主流です。
一方で、この憲法第25条については、他の考え方もあります。

図でまとめたものをご覧ください。②の抽象的権利説は、生存権を具体化した立法に対して、訴訟を起こすことは可能であるという考え方です。生活保護法や国民健康保険法、国民年金法などに対して訴訟を起こせるということです。
➂の具体的権利説は、さらに訴訟を容易とする考え方であり、生存権を根拠に訴訟を起こすことも可能とするものです。この考え方に基づけば、朝日さんの訴訟も受け入れられるということになります。
まとめ
プログラム規定説は入試でも頻出の内容です。私立大学の記述問題がある場合は、プログラム規定説についての説明を求められる場合もありますので、しっかり説明できるようにしておきましょう。
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