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倫理入試レベル演習13 経験論・合理論

共通テストの過去問を参考に入試レベルの演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。


問1 次の文章は、経験論と合理論をめぐるライプニッツの思想的立場についての説明である。文章中の[ a ]・[ b ]に入れる語句の組合せとして正しいものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

 経験論も合理論も、人間の認識能力に信頼をおく点では共通するが、知識のもととなる観念の形成をめぐる考え方が異なる。経験論は、心に生まれつきそなわる観念の存在を否定する。例えば、ロックは、観念は感覚的な経験によって心にもたらされると主張し、その際の心のありさまは[ a ]と呼ばれた。ライプニッツは、合理論の立場からロックに論争を挑み、感覚や経験から観念を形作る知性の働き自体は、人間に生まれつきそなわっていると主張した。この主張を裏づける体系的理論を、ライプニッツは[ b ]において展開し、世界を構成する無数の実体と、その全体的調和について論じた。

① a 繊細の精神 b 『省察』
② a 繊細の精神 b 『エチカ』
③ a 繊細の精神 b 『モナドロジー(単子論)』
④ a 白紙(タブラ・ラサ) b 『省察』
⑤ a 白紙(タブラ・ラサ) b 『エチカ』
⑥ a 白紙(タブラ・ラサ) b 『モナドロジー(単子論)』

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解答⑥ 【解説】ロックは心が「白紙(タブラ・ラサ)」であり、経験によって観念が形成されると主張しました。これに対し、ライプニッツは生まれつきの知性の働きを重視し、『モナドロジー(単子論)』でその体系的理論を展開し、無数の精神的実体(モナド)と予定調和を説きました。※繊細の精神・『省察』はパスカルのキーワード、『エチカ』はスピノザの著書。

問2 実体について考察したライプニッツの説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 実体とは不滅の原子のことであり、世界は原子の機械的な運動によって成り立っていると考えた。
② 存在するとは知覚されることであるとして、物体の実体性を否定し、知覚する精神だけが実在すると考えた。
③ 世界は分割不可能な無数の精神的実体から成り立っており、それらの間にはあらかじめ調和が成り立っていると考えた。
④ 精神と物体の両方を実体とし、精神の本性は思考であり、物体の本性は延長であると考えた。

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解答③ 【解説】ライプニッツは、世界を構成する究極の実体は、分割不可能な無数の精神的実体「モナド(単子)」であると考えました。これらのモナドは互いに独立していますが、神によってあらかじめ「予定調和」が設定されており、全体として調和の取れた秩序を形成していると説きました。

問3 次のア~ウは、経験に知識の源泉を求めた思想家の説明であるが、それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。

ア 事物が存在するのは、私たちがこれを知覚する限りにおいてであり、心の外に物質的世界などは実在しないと考え、「存在するとは知覚されることである」と述べた。

イ 私たちには生まれつき一定の観念がそなわっているという見方を否定し、心のもとの状態を白紙にたとえつつ、あらゆる観念は経験に基づき後天的に形成されるとした。

ウ 因果関係が必然的に成り立っているとする考え方を疑問視し、原因と結果の結び付きは、むしろ習慣的な連想や想像力に由来する信念にほかならないと主張した。

①   ア ヒューム    イ ベーコン ウ バークリー
②   ア ヒューム    イ ベーコン ウ ロック
③   ア ヒューム       イ ロック    ウ バークリー
④   ア ヒューム       イ ロック    ウ ベーコン
⑤   ア バークリー イ ベーコン ウ ヒューム
⑥   ア バークリー イ ベーコン ウ ロック
⑦   ア バークリー イ ロック     ウ ヒューム
⑧   ア バークリー イ ロック     ウ ベーコン

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解答⑦ 【解説】アの「存在するとは知覚されることである」はバークリーの主張。イの「心のもとの状態を白紙にたとえ」はロックのタブラ・ラサの考え方。ウの「因果関係が習慣的な連想に由来する信念」はヒュームの懐疑論です。これらはすべて経験論の主要な思想家です。

問4 17世紀後半のオランダで、キリスト教やユダヤ教の正統派の立場から異端とみなされたスピノザの思想の説明として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 無限実体である神から区別された有限実体は、思惟を属性とする精神と、空間的な広がりである延長を属性とする物体から成り、精神と物体は互いに独立に実在する。 

② 事物の究極的要素は、非物体的で精神的な実体としてのモナド(単子)であり、神はあらかじめ、無数のモナドの間に調和的秩序が存在するように定めている。 

③ 神は人間に自己の生き方を自由に選択できる能力を与えたのであり、人間は自由意志によって、動物に堕落することも、神との合一にまで自己を高めることもできる。 

④ 自然は無限で唯一の実体である神のあらわれであり、人間の最高の喜びは、神によって必然的に定められたものである事物を、永遠の相のもとに認識することにある。

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解答④ 【解説】スピノザは、神こそが無限で唯一の実体であり、自然はその神のあらわれであると説きました(神即自然)。人間は自由意志を持たず、万物は神によって必然的に定められていると考え、事物を「永遠の相のもと」に認識することが最高の喜びであるとしました。

問5 ヒュームの懐疑論の説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 科学の方法は絶対的な真理を保証するものではないのだから、すべての判断を停止することによって心の平静を保つべきである。

② 最も賢い人間とは、自分自身が無知であることを最もよく知っている人間なのだから、自己の知を疑うよう心がけるべきである。

③ 帰納法から導かれる因果関係は、観念の習慣的な連合によって生じたのだから、単なる信念にすぎないことを認識すべきである。

④ 人間はたえず真理を探究する過程にある以上、真理は相対的なものでしかあり得ないので、つねに物事を疑い続けるべきである。

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解答③ 【解説】ヒュームの懐疑論は、経験から導かれる因果関係の必然性を否定しました。彼は、原因と結果の結びつきは、私たちの心が繰り返し経験することで生じる「習慣的な連合」にすぎず、単なる「信念」であると主張しました。➀は古代ギリシャの懐疑論、➁はソクラテスの無知の知、④はプロタゴラスの相対主義に関する説明。

問6 論理を展開する方法の一つに演繹法がある。正しい演繹的な推論として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 雨が降れば、自宅の中庭は必ず濡れる。今日起きたら、自宅の中庭が濡れていた。よって、朝方、雨が降っていたのだろう。

② 今日は雨が降っており、自宅の中庭が濡れている。先週も先月も雨が降ったときはそうだった。よって、雨が降れば、自宅の中庭は濡れるのだ。

③ 雨が降れば、自宅の中庭は必ず濡れる。今日は雨が降っている。よって、今日、自宅の中庭は濡れているはずだ。

④ 雨が降れば、自宅の中庭は必ず濡れる。今日は雨が降っていない。よって、今日、自宅の中庭は乾いているはずだ。

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解答③ 【解説】演繹法は、一般的な法則や原理(大前提)から個別の事柄(小前提)について必然的な結論を導き出す推論方法です。選択肢③は、「雨が降れば中庭は濡れる」という一般的な法則と「今日は雨が降っている」という事実から、「中庭は濡れるはずだ」という必然的な結論を導いており、正しい演繹的推論です。

問7 次のア・イは、ベーコンによるイドラについての説明であるが、それぞれ何と呼ばれているか。その組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

ア 人間相互の交わりおよび社会生活から生じる偏見。例えば、人々の間を飛び交う不確かな噂を、事実であると信じ込むこと。

イ 個人の資質や境遇に囚われることから生じる偏見。例えば、自分が食べ慣れた好物を、誰もが好むに違いないと思い込むこと。

①   ア 種族のイドラ イ 劇場のイドラ
②   ア 種族のイドラ イ 洞窟のイドラ
③   ア 市場のイドラ イ 劇場のイドラ
④   ア 市場のイドラ  イ 洞窟のイドラ

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解答④ 【解説】ベーコンは人間の認識を妨げる偏見を「イドラ」と呼びました。アの「人間相互の交わり」「不確かな噂」から生じる偏見は「市場のイドラ」、イの「個人の資質や境遇に囚われる」偏見は「洞窟のイドラ」です。これらは科学的真理探究の障害となるとされました。

問8 近代自然科学の成立に寄与した思想家としてデカルトがいる。彼についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 知識の正しい獲得法として、実験や観察に基づいた個々の経験的事実から一般的な法則を導く帰納法を提唱した。

② 自然界に存在する生物の種は不変ではなく、より環境に適した種が自然選択(自然淘汰)によって残ってきたのだとした。

③ 人間の心とは、最初は何も書き込まれていない白紙のようなものであるとして、生得観念の存在を否定した。

④ 精神が対象を疑いの余地なく認識し、他の対象からもはっきりと区別していることを、明証的な真理の基準だとした。

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解答④ 【解説】デカルトは、あらゆるものを疑い尽くす方法的懐疑によって、最終的に「我思う、ゆえに我あり」という疑い得ない真理に到達しました。➀はベーコン、➁はダーウィン、③はロックの主張である。

問9 ベーコンの著作と思想についての説明として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

①『プリンキピア』を著し、地上から天体までのあらゆる自然現象の運動を説明し得る根本原理を発見することで、古典力学を確立した。

②『プリンキピア』を著し、理性を正しく確実に用いることによって普遍的な原理から特殊な真理を導き出す演繹法を提唱した。

③『ノヴム・オルガヌム』を著し、事実に基づいた知識を獲得する方法として、経験のなかから一般的法則を見いだす帰納法を重視した。

④『ノヴム・オルガヌム』を著し、懐疑主義の立場から、自己の認識を常に疑う批判精神の重要性と、寛容の精神の大切さを説いた。

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解答③ 【解説】フランシス・ベーコンは、アリストテレスの『オルガノン』に対し、『ノヴム・オルガヌム(新機関)』を著しました。彼は、観察や実験といった経験的事実から一般的な法則を導き出す「帰納法」を重視し、科学的知識の正しい獲得方法として提唱しました。

問10 デカルトによる真理の探究についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 精神と物体を区別したうえで、人間精神は物体の運動によって説明され得るとし、人体に関する医学的研究を行った。

② 精神と物体を区別したうえで、物体を精神に基づくものとし、思考する働きをもつ人間精神による認識の分析を、諸学問の基礎とした。

③ 感覚はしばしば私たちを欺くが、数学的な知識は感覚を超えたものであるから、疑わなくてもよいとした。

④ 感覚はしばしば私たちを欺くものであり、私がここにいるという感覚もまた、夢かもしれないため、疑わなければならないとした。

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解答④ 【解説】デカルトは、真理に到達するため、まずあらゆるものを疑う「方法的懐疑」を実践しました。彼は、感覚がしばしば私たちを欺くことや、夢と現実の区別が困難であることから、自分が現実に存在しているという感覚さえも疑うべきだと考え、疑い得ない確実な真理を探求しました。
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この記事を書いた人

公民担当の高校教員としてさまざまな学校を経験。学習意欲の湧く教材作りをモットーに、プリントを自作しています。高校生や先生方の参考になれば幸いです。Instagramではニュース動画の投稿をしています。※このサイトはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載しています。

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