現在新サイトデザインへリニューアル中です。見苦しい部分があるかもしれません。ご了承ください。

倫理入試レベル演習12 ヒューマニズム・ルネサンス

共通テストの過去問を参考に入試レベルの演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。


問1 ルネサンス期に活躍した人物についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 壁画「最後の晩餐(ばんさん)」などで知られるミケランジェロは,絵画や音楽といった分野だけでなく,医学や力学などの自然科学の分野でも業績を残し,万能人(普遍人)として活躍した。

② ダンテは,『神曲』のなかで,人間が神の愛によって祝福された存在であることを強調し,人間の魂を,欲望や罪,苦悩などとは無縁の美しいものとして描き出した。

③ ボッティチェリは,『デカメロン』のなかで,自由奔放に快楽を追い求める男女の性愛を生き生きと描き出すことで,人間の感情や欲望の解放を表現しようとした。

④ 壁画「アテネの学堂」でラファエロは,イデア論で知られるプラトンが天を指し,現実世界を重視したアリストテレスが地を示す姿を描くなど,古代哲学を象徴的に表現した。

解答解説 click↓
解答④ 【解説】①はレオナルド・ダ・ヴィンチの説明。ミケランジェロは彫刻や絵画の分野で万能ぶりを発揮したが、医学や力学の業績はダ・ヴィンチに多く見られる。②ダンテの『神曲』では、人間の罪や苦悩も深く描かれている。③『デカメロン』はボッカチオの著作であり、ボッティチェリは画家である。したがって、④ラファエロの「アテネの学堂」の説明が最も適当といえる。

問2 モラリストを代表する人物にモンテーニュがいる。彼の思想の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 人間は,「私は何を知っているか」と問い,謙虚に自己吟味を行うことによって,自らに潜んでいる偏見や独断から脱することができる。

② 人間は,単に行為するだけにとどまらず,行為の正不正に関する道徳的判断をも下す存在だが,この判断は知性ではなく感情の働きである。

③ 人間は,生の悲惨さを自ら癒すことができないために,娯楽や競争などの気晴らしに逃避して,気を紛らわそうとする。

④ 人間は,自由意志に従うと「堕落した下等な被造物」にもなり得るため,自由意志の上位に信仰をおくことによって正しき者になる。

解答解説 click↓
解答① 【解説】モンテーニュは自己探求を通して、人間の理性や知識の限界を認識し、「私は何を知るか(Que sais-je ?)」という問いを立てた。彼は自身の偏見や独断から脱却するために謙虚な姿勢の重要性を説き、『エセー(随想録)』を著した。

問3 次のア~ウは,神をめぐって考察した近代の思想家の説明であるが,それぞれ誰のものか。その組合せとして正しいものを,下の①~⑧のうちから一つ選べ。

ア 自然科学の研究は神への信仰と反するものではなく,むしろ,神の意図を知るために行われるものであり,自然法則を明らかにすることは神を称賛することになると考えた。

イ すべての存在は絶対者である神の摂理によって導かれており,誰が救われるかは,あらかじめ定められているため,その決定を人間の努力によって変えることはできないと主張した。

ウ 世界のあらゆる事象は,唯一にして無限の実体としての神のあらわれであり,神の絶対的必然性のもとにあるとして,そのことを「神即自然」という言葉で表現した。

① ア ケプラー イ ホッブズ ウ ヴォルテール

② ア ケプラー イ ホッブズ ウ スピノザ

③ ア ケプラー イ カルヴァン ウ ヴォルテール

④ ア ケプラー イ カルヴァン ウ スピノザ

⑤ ア コント イ ホッブズ ウ ヴォルテール

⑥ ア コント イ ホッブズ ウ スピノザ

⑦ ア コント イ カルヴァン ウ ヴォルテール

⑧ ア コント イ カルヴァン ウ スピノザ

解答解説 click↓
解答④ 【解説】アはケプラーの思想。彼は天文学者として、神の創造した宇宙の法則を解明することが神を称賛することにつながると考えた。イはカルヴァンの「予定説」の説明であり、救済は神によってあらかじめ定められていると主張した。ウはスピノザの「神即自然」の思想。神を宇宙の唯一の実体と捉え、自然法則そのものが神の現れであると考えた。

問4 人間の本質について考察した思想家の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ピコ・デラ・ミランドラは,『人間の尊厳について』のなかで,自らの生き方を選ぶことができるという自由意志に人間の尊厳をみた。

② ロックは,『人間知性論』のなかで,人間が感覚的経験に囚われずに無限の想像力を働かせることに,人間知性の価値を見いだした。

③ マキャヴェリは,『君主論』のなかで,利己的な性格をもつという人間の本性を洞察し,君主が独裁にはしることに警告を発した。

④ ルソーは,『人間不平等起源論』のなかで,人間は本来対立を好む性向をもつので,社会的な教育が大事であると主張した。

解答解説 click↓
解答① 【解説】ピコ・デラ・ミランドラは、ルネサンス期の人文主義者で、『人間の尊厳について』において、人間が自らの意志によって無限の可能性を追求し、自らを形成する自由を持つことに、その尊厳を見いだした。②ロックは経験論者で、知識は経験から得られるとした。③マキャヴェリは『君主論』で君主の権力維持の方法を説いたが、独裁を警告する内容ではない。④ルソーは人間は本来善良であると考えた。

問5 近代科学の成立に貢献した思想家の一人にガリレイがいる。彼についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 天体観測によって得られた精密な観測値に基づき,惑星が楕円軌道を描くという法則を発見して,伝統的な宇宙観に変更を迫った。

② 地上の物体と天空の惑星は共通の法則に従っているとする,万有引力の考えを打ち出し,機械論的自然観に道をひらいた。

③ 実験をもとに自由落下の法則を発見し,近代物理学の基礎を築く一方,地動説を支持したために,宗教裁判にかけられた。

④ 宇宙は無限に広がっているという説を唱えるなど,教会とは相容れない考えを提示したために,異端者として火刑に処された。

解答解説 click↓
解答③ 【解説】ガリレイはピサの斜塔の実験で自由落下の法則を発見し、近代物理学の基礎を築いた。また、望遠鏡で天体を観測し、地動説を強く支持したため、宗教裁判で異端の疑いをかけられ有罪となった。①はケプラーの説明。②はニュートンの万有引力の法則。④はジョルダーノ・ブルーノの説明。

問6 ルネサンス期の文学・芸術についての説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ボッカチオは,快楽を求める人々の姿を描いた『カンツォニエーレ』を著し,人間解放の精神を表現した。

② レオナルド・ダ・ヴィンチは,解剖学などを踏まえた絵画制作を通じ,人間や世界の新たな表現法を提示した。

③ アルベルティは,建築を始め様々な分野で活躍し,自らの意欲次第で何事をも成し遂げる人間像を示した。

④ ダンテは,罪に苦悩する人間の魂の浄化を描いた『神曲』を著し,人文主義的な機運の先駆けをなした。

解答解説 click↓
解答① 【解説】『カンツォニエーレ』はペトラルカの叙情詩集であり、ボッカチオの代表作は『デカメロン』である。②レオナルド・ダ・ヴィンチは解剖学を絵画に応用した。③アルベルティは『絵画論』などで人文主義的芸術論を展開し、万能人像を体現した。④ダンテの『神曲』は中世からルネサンスへの橋渡しとなった作品であり、人文主義的な要素を含んでいる。

問7 16世紀ヨーロッパの宗教改革の説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ルターは,人間が神によって義とされるのは,教会の定める儀式や善行によってではなく,もっぱら信仰によってであると主張した。

② ルターは,主著『神学大全』において,僧侶の腐敗を鋭く批判し,教会のもつ既存の権威や権力に対して抵抗しなければならないと主張した。

③ カルヴァンは,神の栄光を実現するために,神から与えられた神聖な義務としての職業に勤勉に励むべきであると主張した。

④ カルヴァンは,主著『キリスト教綱要』において,神に対する人間の絶対服従を強調し,厳格な神学に基づく教会改革が必要だと主張した。

解答解説 click↓
解答② 【解説】『神学大全』は、トマス・アクィナスが著したスコラ学の大著であり、ルターの主著ではない。ルターは「信仰義認説」を提唱し、信仰のみが救済をもたらすと説いた。③④カルヴァンは、勤勉な職業労働を神の栄光に貢献するものとし、厳格な倫理に基づく教会改革を主張した。

問8 ルネサンス期の説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① ルネサンス期には,古代ギリシア・ローマの文芸を再生し,古典を学び直そうという運動が広く展開した。古典を模範とすることで,人間性を解放し,新たな人間像を探究する人間中心の文化が花開いた。

② ルネサンス期には,古典研究を通して,キリスト教世界の根源にある古代の異教的世界を再興しようという考えが現れた。自然を再発見することで,古代の神々を中心とする神話的世界観が復活した。

③ ルネサンス期には,美術の世界でも,遠近法が確立し,人体の写実的な描写が始まるなどの革新がみられた。「最後の審判」など,絵画や彫刻作品を数多く制作したミケランジェロは,建築の分野でも活躍した。

④ ルネサンス期には,人間の本性はあらかじめ定まってはいないという考えが現れた。ピコ・デラ・ミランドラは,人間は自由意志に基づいて自分の本性を形成する存在であるとし,そこに人間の尊厳の根拠をみた。

解答解説 click↓
解答② 【解説】ルネサンスは古代ギリシア・ローマ文化を復興したが、キリスト教的世界観を否定し、異教的な神々を復活させることを目的としたわけではない。むしろ、キリスト教と人間性を融合させようとした。①③④はルネサンス期の特徴を正しく説明している。

問9 様々な思想家が責任や責務について論じてきた。その説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① マキァヴェリは,政治を道徳や宗教から分離し,あるべき理想ではなく,ありのままの現実を起点とする思考こそ,為政者の責務であると論じた。

② ウェーバーは,職業召命説に依拠し,神の道具として与えられた職業に励むことが,神を讃(たた)える我々の責務であると主張した。

③ エラスムスは,熱狂的な宗教改革を批判し,博愛精神に基づいて教会の現状を維持することが,神に対する我々の責任であると説いた。

④ ガリレイは,天動説に対する教会の弾圧に抵抗し,宗教裁判においても自説を曲げないことで,真理に対する科学者の責任を立証した。

解答解説 click↓
解答① 【解説】マキァヴェリは『君主論』で、政治と道徳・宗教を切り離し、権力維持のためには現実的な政治判断が重要だと説いた。②ウェーバーの職業召命説はプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神を論じたものだが、神を讃える責務という表現は不適切。③エラスムスは教会改革を訴えたが、博愛精神に基づいて現状維持を説いたわけではない。④ガリレイは地動説を主張したが、宗教裁判で一度は自説を撤回している。

問10 パスカルの思想の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 人間には外的なものから受ける影響で様々な情念が生じるが,人間は,自らの意志によってそれらの情念を支配し,自分の行動を決定していくことができる高邁の精神をもつと考えた。

② 考えることに人間の尊厳を見いだし,特に,人間のあり方や事柄の本質を捉えるためには,推理や論証を行う能力だけではなく,直観的に物事を把握する能力が必要であるとした。

③ 人間にはその本性や感覚によって誤謬や錯覚が生じるが,実験と観察を通じて得られた知識によって,それらを取り除き,自然の一般的な法則を捉えることで,自然を支配できると考えた。

④ 自己自身を形成することに人間の尊厳を見いだし,特に,人間が自分の生き方を選択し,自らの存在のあり方を決定するためには,各自の自由意志が必要であるとした。

解答解説 click↓
解答② 【解説】パスカルは『パンセ』で、人間を「考える葦」と呼び、考えることに人間の尊厳を見いだした。彼は、論証や推理だけでなく、直観的に真理を把握する「繊細の精神」の重要性を説いた。①はデカルトの思想。③はフランシス・ベーコンの経験論的な考えに近い。④はサルトルなどの実存主義思想と関連が深い。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公民担当の高校教員としてさまざまな学校を経験。学習意欲の湧く教材作りをモットーに、プリントを自作しています。高校生や先生方の参考になれば幸いです。Instagramではニュース動画の投稿をしています。※このサイトはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載しています。

コメント

コメントする

目次