今回は社会契約説について。契約とは互いが合意して成り立つ約束ですよね。ここでは国民と統治者の約束であり、互いが合意したうえで国づくりを進める必要性を説いたのが、社会契約説です。ここで登場する3人の思想は超頻出なので、それぞれの主著やキーワード、思想が与えた影響などを抑えていきましょう。順番にポイントを解説します。
社会契約説の主張は3段階!
3人の思想家に共通して言えるのが、3段階で主張をまとめられるということです。
1→人間はどんな存在か(人間観)
2→そんな人間が集まるとどんな国になるか(自然状態)
3→いい国にするためにはどうすればいいか(理想国家)
この3段階で思想を整理していくと、わかりやすいのでおすすめです。2のように、放置した場合に国がどうなるかを表したものを自然状態と呼ぶので、知っておいてください。それでは、始めていきましょう!
ホッブズの思想
ホッブズはイギリスの思想家です。彼の主張を上の3段階で表すとこうなります。

彼は人間とは攻撃的で、自分勝手だと考えます。そんな人間が自由に生きれば、争いの絶えない社会になるとして、これを「万人の万人に対する闘争」と表現しました。これを防ぐためには、強い権力者による統制が、最も国を安定させると考え、結果的に、当時の絶対王政を認める形になりました。
従来は王権神授説のもとで「王は神様同然だ!」という強引な主張であったのに対し、ホッブズは理論的に王による支配を正当化している点が、決定的に異なります。「色々考えたけれど、1周回って王政がベストだ」という結論に至ったということなので、王権神授説と区別するようにしましょう。
彼の主著である『リヴァイアサン』とは強大な海の怪物のことで、強い王を例えたものです。自然状態を表現した「万人の万人に対する闘争」というキーワードと合わせて頻出となっているので、確実に抑えましょう。
ロックの思想
次に、同じくイギリスの思想家であるジョン・ロックについてです。ホッブズと同様に3段階でまとめていきます。

ここからわかるように、そもそも人間に対する考え方がホッブズとは真逆となっていますね。人間そのものの分析が違うので、当然、自然状態の分析も大きく異なっています。
ロックのポイントは、理想的な国を目指すうえで、国民の代表となる機関を必要としたことで、それが議会です。権限を取りまとめる機関として議会を組織し、国民の総意の基で政治を行うことを理想としました。また、万が一議会が暴走した場合は、国民が抵抗権(革命権)を行使することができるとしたことも、大きなポイントです。この思想により、当時の市民革命も正当化されることになりました。具体的には、アメリカ独立革命に強い影響を与えたと言われています。以上のような、議会を通して政治を動かす「間接民主制」を推進した人物として有名です。
また、ロックは権力分立(二権分立)を唱えた人物としても知られています。三権分立のモンテスキューと併せて、覚えておきましょう!

ルソーの思想
最後にルソーの思想についてです。彼は先に紹介した2人とは異なり、フランスの思想家です。人間観はどちらかといえばロックに近いといえますが、理想とする政治に大きな違いがある点がポイントです。

彼は、争いが生まれる原因を文明の進化によるものとしました。逆に、人間が本来の在り方で生きることができれば、平和な世界が実現できるとして「自然に帰れ」という言葉を残しています。例をあげれば、田舎でみんなが自給自足の生活をしているような地域では、格差も争いも生まれず、助け合う社会ができるというイメージです。
人々が本来持っている素質を評価した彼は、人間には皆自分たちが幸せになりたいという共通の意思をもっていると考えました。これを一般意志と呼び、この意思が集まれば理想的な国が実現すると説きました。皆が集まって、皆で幸せを目指す。政治制度としては直接民主制を理想としており、その点に関してはロックとは正反対となっています。注意してください。
応用になりますが、ロックの主張は、後のアメリカ独立革命に影響を与え、ルソーの主張はフランス革命に影響を与えました。プラスαで覚えておきましょう!
最後に今日のまとめを載せておきます。3名の思想をそれぞれ説明できるよう、根本的な理解に努めてください!読んでいただきありがとうございました!

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