政経講義65 南北問題をわかりやすく

政経

本単元のポイント
⑴ 南北問題解決を目指す組織を抑える!
⑵ 近年の格差問題を理解する!

本まとめの用語表記

赤蛍光ペン…入試頻出の最重要事項
黄蛍光ペン…抑えておくべき重要事項

今回は南北問題のポイント解説です。入試にはやや出る程度ではありますが、基礎的な内容が多い分野なので、得点源にしやすいです。ポイントを確実に抑えていきましょう。

▼南北問題とは

南北問題とは、先進国と発展途上国の間にある大きな経済格差のことです。北米・欧州・日本・ロシアなどの先進国が北半球に、アフリカや南米、東南アジアなどの途上国が南半球にあることから、こう呼ばれるようになりました。

発展途上国の多くが、特定の一次産品生産に依存する「モノカルチャー経済」や、戦前まで欧米の植民地下にあり、特定の生産を強要されていた歴史的背景などが原因となっています。例えば、ザンビアという国は、銅の輸出が全体の7割以上を占めます。何かしらの要因で銅の需要が無くなれば、国の経済に多大な影響を及ぼしますし、先進国側も足元を見て安価な取引をする可能性もあります。一次産品は利益も少なく、価格も不安定であり、貧困から抜け出すことができません。

石油危機以降は、石油資源が豊富な産油国や、工業が発達した新興国が成長し、南側の国々でも格差が発生しました。経済発展が遅れ貧困から抜け出せない国を「後発発展途上国(LDC)」と呼び、南側での経済格差を「南南問題」といいます。LDCは1人当たりGNIや健康・教育水準などを根拠として、2022年時点でアフリカ33カ国、アジア9カ国、その他4カ国が指定されています。

この格差に対してどのような取り組みが行われているかという部分が頻出になるので、次の単元で説明していきます。

▼南北問題への対策

DACとUNCTAD

 まず南北問題に対して取り組む組織についてです。主にDACUNCTADがありますが、両者を区別できるようにしましょう。図を参照してください。

 抑えるべきポイントが2つあり、①組織の元が異なる点、②解決への目的手段が異なる点の2つです。DACは、開発援助委員会の略称で、1960年にOECDの下部組織として設立されました。OECDは先進国の集まりであり、その下部組織なので当然主体は先進国になります。つまり、先進国が集まって「途上国への援助をどうしよう?」と話し合うのがDACです。

これに対して、UNCTADは国連貿易開発会議の略称で、1964年に設立された国連総会直属の組織です。こちらの主導権は発展途上国が握っており、会議を通して先進国へ提言をしていきます。スローガンは「援助より貿易を」であり、貿易や開発を通して格差是正を目指しています。

このように、DACとUNCTADは組織の主導権が異なることと、目的手段が異なることを抑えておきましょう。

 DACが掲げる先進国のODA援助目標は、対GNI比0.7%ですが、加盟国の多くが未達成となっています。(例[2020年データより]:日本0.31%、アメリカ0.17%、イギリス0.70%、スウェーデン1.14%)ODAについては、次の単元で詳しく解説します。→ 政経講義66 ODAをわかりやすく

 UNCTADで抑えるべき出来事は、1964年のプレビッシュ報告1974年のNIEO樹立宣言の2点です。前者では一次産品の価格安定や特恵関税制度の実施を要求しました。また先ほど紹介した「援助より貿易を」というスローガンも、この会議で誕生したものです。後者では主に天然資源の管理について、先進国が有利な制度を改善するよう提言しました。

MDGsとSDGs

近年いたるところで聞くようになったSDGsも、入試でよく出るトピックとなりました。関連して、その前の目標であるMDGsについてもたまに問われるため、ざっと抑えておきましょう。

MDGs(ミレニアム開発目標)

「Millennium Development Goals」の略称で、2000年9月開催の国連で採択された「国連ミレニアム宣言」をもとにまとめられた国際的な目標。達成期限は2015年で、項目は以下の8つに分類されます。

SDGs(持続可能な開発目標)

MDGsから継続する形で2015年に国連で採択された目標で、2030年までに達成すべき17の項目に分けて設定されています。丸暗記する必要はありませんが、どんな目標があるのかざっと知っておくことは必要です。目標の中身については、何かしら学習したことがあると思いますので、本投稿では割愛させていただきます。関係サイトはたくさんありますので、各自で確認してください。

▼近年の格差問題

最後に、近年の格差問題を発端として生じている問題や、解決への取り組みなどをまとめて紹介します。

*累積債務問題

 発展途上国の中には、先進国から資金を借り入れ経済発展をめざした国がありましたが、不況により返済が困難になり対外債務が膨らんでいきました。これを累積債務問題といい、メキシコ・ブラジル・アルゼンチンなどの中南米や、アフリカ諸国で問題となりました。借金が返せない債務不履行という状態をデフォルト、返済の繰り延べをリスケジューリングという専門用語も、併せて覚えておきましょう。

*フェアトレード

 環境や人にやさしい方法で、途上国の人々が作った商品を公正な値段で継続的に購入し、自立を支援すること。冒頭に述べたモノカルチャー経済に該当する国でも、貧困から抜け出すチャンスとなります。日本ではまだまだ認知度が低く、市場規模も欧州各国と比べると5~20倍ほどの差があります。

*マイクロクレジット

 貧しい人に資金を無担保で少額融資し、自活を支援する活動のこと。有名なのはバングラデシュのグラミン銀行であり、元総裁のムハマド=ユヌスはノーベル平和賞を受賞しています。(2006年)

*新興国の台頭

 最後に、高成長を遂げた新興国を紹介します。最たる例が中国で、80年代以降高い経済成長を誇り、現在ではアメリカに次ぐ経済大国となりました。その中国も含む経済成長が期待される国を総称したものがBRICSであり、ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ共和国の5カ国を指します。しかし、これらの国々は貧富の差、資源輸出への依存、環境破壊など、経済成長の裏で生じる問題があることを抑えておきましょう。

 また、韓国・台湾・シンガポールなどはアジアNIES(新興工業経済地域)と呼ばれ、1970年代以降に急速な工業化と高い経済成長を果たした国・地域をさしています。近年はBRICSやアジアNIESに続く新興国として、「NEXT11」や「VISTA」などの新たな提唱もされていますが、評論家や情報誌が提示したものに過ぎないので明確な基準等はありません。あくまで参考程度に見てください。詳細は以下の図を参照してください。

▼まとめ

この単元は時事的な内容も多く、公共分野で出題されることも多いです。その場合、表や文章を読み取ればわかる問題もありますが、ある程度知識があることで解けるスピードも変わってきます。小論文や面接などでも必要になる知識なので、そのような入試を考えている場合はより深く学ぶ必要があります。読んでいただきありがとうございました。

過去問演習にチャレンジ!→ 政経演習49 南北問題とODA
一問一答問題にチャレンジ!→ 一問一答国際11南北問題
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