問1 古代インドで展開された思想についての記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① ウパニシャッド哲学は,真の自己とされるアートマンは観念的なものにすぎないため,アートマンを完全に捨てて,絶対的なブラフマンと一体化するべきであると説いた。
② バラモン教は,聖典ヴェーダを絶対的なものとして重視していたため,ヴェーダの権威を否定して自由な思考を展開する立場を六師外道と呼んで批判した。
③ ウパニシャッド哲学では,人間を含むあらゆる生きものが行った行為,すなわち業(カルマ)の善悪に応じて,死後,種々の境遇に生まれ変わると考えられた。
④ バラモン教では,唯一なる神の祀り方が人々の幸福を左右するという考えに基づいて,祭祀を司るバラモンが政治的指導者として社会階層の最上位に位置づけられた。
問2 文章中の[ A ]に入る語句として正しいものを,次のそれぞれの①~④のうちから一つ選べ。
(人類の歴史を振り返ると,古代の中国やローマのように占いが政治を左右した例も稀ではない。多くの文化では,占いはそれぞれの世界観に基づいた真剣な知の営みとみなされていたのである。例えば[ A ] の聖典ヴェーダには,夢占いや動物占いなどの記述がある。
① ジャイナ教 ② バラモン教 ③ マニ教 ④ ユダヤ教
問3 バラモン教についての記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 輪廻の循環から解放されて生死を超えた絶対の境地に至るあり方が理想であり,その手段として苦行が重要であるとされた。
② 宇宙の根源にある根本原理と自己の本質が一体であるという真理を悟ることによって,解脱できるとされた。
③ 実体のようなものは一つとして存在せず,この世のすべてのものは原因や条件が合わさって成り立っているとされた。
④ 命あるものは業を原因として生まれ変わり,生活における行為が積み重なって次の生活の形や運命が決定づけられるとされた。
問4 ブッダが説いたとされる教えについての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 全ての生き物は,生老病死の苦しみから逃れることはできない。よって,バラモン教の祭祀に基づき,苦しみを超克する道を歩むべきである。
② 自己の身体を含め,あらゆるものは自己の所有物ではない。よって,我執を断つことにより,それらへの執着を捨てる道を歩まなければならない。
③ ウパニシャッド哲学などで説かれた涅槃は認められない。人は,涅槃の境地ではなく,輪廻からの解脱を目指さなければならない。
④ 貪りと怒り,そして忍辱の三つの煩悩は,三毒と呼ばれる。人は,物事のあるがままの真理を見つめて,煩悩の炎を消さなければならない。
問5 仏教の実践としての慈悲の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 慈悲とは,四苦八苦の苦しみを免れ得ない人間のみを対象として,憐れみの心をもつことである。
② 慈悲の実践は,理想的な社会を形成するために,親子や兄弟などの間に生まれる愛情を様々な人間関係に広げることである。
③ 慈悲の実践は,他者の救済を第一に考える大乗仏教で教えられるものであり,上座部仏教では教えられない。
④ 慈悲の「慈」とは他者に楽を与えることであり,「悲」とは他者の苦を取り除くことを意味する。
問6 仏教の修行法である八正道についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 快楽と苦行を避け,中道に生きるための修行法が八正道であり,その一つである正業とは,悪しき行為を避け,正しく行為することを指す。
② 快楽と苦行を避け,中道に生きるための修行法が八正道であり,その一つである正業とは,人の行為と輸廻の関係を正しく認識することを指す。
③ 六波羅蜜の教えに由来する修行法が八正道であり,その一つである正業とは,悪しき行為を避け,正しく行為することを指す。
④ 六波羅蜜の教えに由来する修行法が八正道であり,その一つである正業とは,人の行為と輸廻の関係を正しく認識することを指す。
問7 次のア~ウは,人間の欲望をめぐる先哲たちの洞察についての記述である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。
ア ブッダによれば,人間が所有欲などの欲望から離れられない原因は,自己という不変の存在を正しく把握していないことにある。
イ プラトンによれば,不正な行為が生まれる原因は,魂のうちの欲望的部分が,理性的部分と気概的部分を支配してしまうことにある。
ウ 朱熹(朱子)によれば,人間が私欲に走る原因は,先天的にそなわっている理が,気の作用によって妨げられていることにある。
① ア 正 イ 正 ウ 誤
② ア 正 イ 誤 ウ 正
③ ア 正 イ 誤 ウ 誤
④ ア 誤 イ 正 ウ 正
⑤ ア 誤 イ 正 ウ 誤
⑥ ア 誤 イ 誤 ウ 正
問8 仏教における煩悩や苦についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 「無自性」とは,煩悩によって自分固有の本性を見いだせないでいる状態を指す。それを脱するためには,快楽にまみれた生活にも極端な苦行にも陥ることのない,正しい修行を実践すべきだとされる。
② 人間は現世で様々な苦しみにあうが,なかでも代表的な苦として,生きること,老いること,病になること,死を目の当たりにすることの四つが説かれた。それらは「四苦」と呼ばれる。
③ 「三帰」とは,人間の有する様々な煩悩のうち,代表的なものを指す。それらは,貪りを意味する「貪」,怒りを意味する「瞋」,真理を知らない愚かさを意味する「癡」の三つである。
④ 人間の身心を構成する,「色」という物質的要素と「受・想・行・識」という精神的要素は,それら自体が苦であると説かれた。そのことは「五蘊盛苦」と呼ばれ,八苦の一つに数えられている。
問9 大乗仏教についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 大乗仏教は,上座部仏教が自らを「小乗仏教」と名のったのに対して,自らを大きな乗り物に譬えてその立場の違いを鮮明にした。
② 大乗仏教で尊敬の対象とされる菩薩とは,在家の信者とは異なり,他者の救済を第一に考える出家修行者のことである。
③ 大乗仏教の代表的な経典の一つである『般若経』では,あらゆる事象には固定不変の本体がないと説かれている。
④ 大乗仏教は,スリランカから東南アジアへと伝えられ,その後,東アジア世界に広がっていったため,「南伝仏教」と呼ばれる。
問10 ブッダの教えを信奉する仏教教団の説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 在家信者になるための条件として,仏・法・僧の三宝への帰依を誓うことが必要とされる。
② 不殺生や不邪淫などの五戒は在家信者のためのものであり,出家修行者には適用されない。
③ 在家信者たちのなかには,ブッダの遺骨を納める仏塔(ストゥーパ)に集まり,供養を行う者たちがいた。
④ 出家修行者たちの間で,戒律の規定などをめぐり,保守的な上座部と改革派の大衆部への分裂が起きた。
問11 古代インドでは世界を貫く真理について様々な仕方で考えられてきたが,その説明として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 竜樹(ナーガールジュナ)は,存在するすべてのものには実体がないという思想を説いた。
② ウパニシャッド哲学では,人間だけでなくすべての生あるものが成仏できる可能性をもつと説かれた。
③ 世親(ヴァスバンドゥ)は,梵我一如の体得によって輪廻の苦しみから解脱することを説いた。
④ ジャイナ教では,世界のあらゆる物事は人間の心によって生み出された表象であると説かれた。
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