はじめに
新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題に対応できる授業を考えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なのでできるだけ新たな挑戦を組み込んでいきたいとも思っています。
私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。
関連 : 授業プリントのページ
作業ネタの設定単元
今回の作業ネタは、公共の導入として議論しやすい題材をと思い選びました。東京書籍の教科書データを参考にしたものなので、それを持っている先生方は参考にしてみてください。導入ということで初回の授業で実施しています。そもそも議論とはどのようにすべきか、という話も兼ねて実施したので、併せてご紹介させていただきます。
作業の流れ
(ⅰ)善とは何か?
最初の問としては、選択式で易しいものから。
初めに「議論の注意点」を話して、一方的な主張のぶつけ合いにならないよう念押ししました。また、自分の考えをまとめる→グループ内で共有という流れを意識させて、自分→全体というメリハリをつけさせることも意識しました。
STEP1のような問いを通して、善いこと・悪いことの区別はどんな点にあるだろう…ということを考えさせます。多くの生徒は「悪」と答えることになると思いますが、プラスアルファとして「なぜそれは悪と判断されるのか?」という問で深掘りしてみてください。法律やルールに反するからという「社会的悪」、被害者が苦しむという「倫理的悪」「道徳的悪」が例に挙がってきます。
また、理由があれば許されると思うものは?と考えさせると、より考えを深めることができます。半数以上の生徒は(3)の嘘をつくことは該当すると判断しますが、(1)(2)は中々選びにくいかもしれません。その際には、「犯罪の容疑者から、証拠となりそうな所持品を盗むのはどうか?」「戦争を終結させるために首謀者を暗殺することは?」などと具体例を提示して、思考をかき回してみてください。
(ⅱ)許される嘘はあるのか?
STEP1を踏まえて、今回の本題に移ります。テーマは「許される嘘はあるのか?」というもので、サンタクロースの話題と共に考えさせていきます。
サンタクロースの話題は昔のことで忘れているかな…と思いながら聞いてみましたが、意外と根に持っている(?)生徒も多く、盛り上がっていました。そこで、欧米では「サンタがいる」という説が大人による集団的な嘘であるという主張を紹介します。
サンタがいるという嘘は許されるのだろうか?というテーマについて自分の意見をまとめ、議論をさせましょう。大きく分ければ、嘘をつくこと自体を否定する立場と、嘘をついてもその結果起こることがよければ良しとする立場に分かれます。前者は左の人物で「カント」の「義務論」という主張になります。「動機」を重視する考え方です。後者は「ベンサム」の「功利主義」という主張に近く、「結果」を重視する考え方です。
今回のサンタの話題に限らず、例えば「相手を救うための嘘はどうか?」「自分を守るための嘘はどうか?」という例も考えてみます。「相手を救う嘘はOK」と考える生徒が多くなるかもしれませんが、それが当たり前に起こる世の中になると、だれを信頼していいかわからない世界になってしまいます。ちなみに、どんな嘘であっても、その行為を認めないカントは「ダメだ!」と言うでしょう。
(ⅲ)授業のまとめ
今回の作業は、本格的に哲学をしていくというよりは、議論の練習の意味合いが強いです。深追いしすぎても答えが出る内容ではないので、きりの良いところで辞めさせることを薦めます。
落としどころとしては、「100%どちらかが正解という内容ではないので、両方からのものの見方が必要だね」とか、「常識を疑うことが哲学の面白いところだ」なんてまとめ方で着地すればよいと思います。もし盛り上がるようだったら、また別のテーマで哲学的な問いかけをしてもいいかもしれませんね。
実施した後の反省点
よかったら試してみてください!
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