今回は環境問題についての解説。労働問題や社会保障と同様に、共通テストの頻出単元かつ小論文のテーマとしても重要な項目となる。共通テストだけに限れば、覚えておけば解ける問題も多いので、取りこぼしが無いように理解していきましょう。
▼日本の環境問題
日本における環境問題について、ポイントを紹介していきます。まずは年表でざっくりと流れを確認しましょう。
日本の環境問題の背景
まず環境問題が表面化したきっかけが、1960年代の四大公害訴訟。水俣病(熊本)・新潟水俣病(新潟)・四日市ぜんそく(三重)・イタイイタイ病(富山)を総称した四大公害は、工場廃水や有毒ガスが原因で多くの被害者を出した。当時、経済成長に集中していた日本であったが、この訴訟でいずれも患者側が勝訴し、公害に対して取り組む姿勢を大きく変えることになった。1967年に制定された公害対策基本法、1971年の環境庁設置などは、公害からの流れで覚えておきましょう。
ちなみに、環境庁は2001年の中央省庁再編により環境省へと格上げされている。
環境アセスメントについて
環境アセスメントとは、環境破壊を未然に防ぐために、環境破壊を引き起こす可能性のある事業の事前調査・評価をするというもの。この調査により環境への影響を分析し、場合によっては計画の変更を行っていく。ここで気を付けたいのが、日本では国全体より先に地方で導入されているという点。1976年に環境影響評価条例が川崎市で成立し、この市内限定の制度として始まっているが、国全体としては1997年の環境影響評価法(環境アセスメント法)からとなっている。
▼国際的な環境問題
続いて国際的な環境問題への動きについて。先ほどと同様にまずは年表から紹介します。
環境問題に関する条約
環境問題はある特定の地域に限定されず、地球全体に影響を及ぼすものが多い。そのため、多くの国が参加する形での条約がいくつか結ばれており、入試の頻出ポイントにもなっている。名前と内容を一致させられるように覚えていけば問題なしです!
環境問題へ取り組む国際会議
国連が主催する大規模な環境・開発を議題とする会議は、1972年の「国連人間環境会議」(ストックホルム会議)から、1982年の「ナイロビ会議」、1992年の「国連環境開発会議」、2002年の「環境開発サミット」(ヨハネスブルグ・サミット)というように、10年ごとに開催されている。
その中でも特に入試に頻出なのが、1972年の国連人間環境会議と1992年の国連環境開発会議である。それぞれのポイントを抑えていきましょう。
■国連人間環境会議(1972)
・ストックホルムで開催
・スローガンは「かけがえのない地球」
・国連環境計画(UNEP)を設立
■国連環境開発会議(1992)
・リオデジャネイロで開催
・「リオ宣言」採択
・「アジェンダ21」採択
・生物多様性条約調印
・気候変動枠組み条約(地球温暖化防止条約)調印
どの会議でどんな内容の議論がなされたか、区別ができるようにしておきましょう。
▼地球温暖化の対策
温暖化対策の歴史
地球温暖化は近年言われ始めたもので、本格的な温暖化対策の開始も1992年の気候変動枠組み条約からとなる。主要な会議は少ないので、各会議の細かい内容まで問われることが多いです。
京都議定書とパリ協定
温暖化対策のうち、特に比較して出題されるのが、京都議定書とパリ協定になる。それぞれの特徴を抑えながら、混同させないように覚えていきましょう。
排出権取引とは、目標の過不足分を取引で解決すること。例えば、目標まであと100トン足りない国があるとして、目標を超えている他国に対してお金を払い、その100トン分の枠を譲ってもらうというイメージ。そうすることで、地球全体としては目標を達成できるようになる。
京都議定書はアメリカが離脱しただけでなく、日本やロシアが延長をしなかったなど課題がが多く残った。それに代わる協定として結ばれたのがパリ協定である。
京都議定書との大きな違いは、先進国のみの目標だったのが、すべての国の目標へ変更となった点。2019年のデータでは中国(29.4%)やインド(6.9%)、南アフリカ(1.3%)、イラン(1.7%)などの新興国や途上国も二酸化炭素の排出量が多く、先進国が3割・発展途上国が7割という割合であった。この状況下で、先進国だけに削減を求めるのはどうか?となった。その分、途上国の目標達成は自主性に任せる形で、義務ではなかった。
また、アメリカについては、オバマ大統領時に加入を果たしたものの、後を継いだトランプ大統領は温暖化に対して懐疑的な立場であり、パリ協定の離脱を表明した。その後、バイデン大統領の就任に伴い復帰を果たしている。
▼まとめ
以上が環境問題についてのポイント。内容量は多い単元であるが、意外と覚えてしまえば解ける問題も多い。温暖化に対しての各国の立場なども、小論文のテーマとして理解しておくといいと思います。しっかり復習しておきましょう!読んでいただきありがとうございました。
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