公共授業ネタ04 沖縄の米軍基地問題を考える

教員向け投稿

はじめに

新たな教科として始まった公共。今後入試科目として組み込まれることが決まった以上、入試問題によって授業のあり方も変えていかなければならないとは思っています。しかし、せっかくの新科目なので新たな挑戦ができればとも思っています。

私の意識としては、1時間のうちに作業できる時間を10分~15分(50分授業のうち)確保したいという目標を持ちながら、授業作りを進めています。実践した中で手応えのあったものを、本サイトでも紹介していこうと思います。参考になれば幸いです。

作業ネタの設定単元

今回の作業ネタは、平和主義の授業で実施しました。授業プリントは別ページで公開しているので、そちらを参考にしてください。(公共14平和主義というプリントに掲載)

平和主義はスケールが大きな話なだけに、生徒は他人事として考えてしまいがちです。身近な話題でもないので難しい単元だな…と毎年思う訳ですが、沖縄の米軍基地問題くらいは知っておいてもらいたいと思い、この作業を考えていきました。

今回の作業は特段変わったものではなく、いわゆる王道な授業展開かもしれませんが、発問などが参考になればと思います。

作業の流れ

(ⅰ)沖縄の米軍基地に関する調べ学習

沖縄在日米軍 調べ学習シート

まず、在日米軍や沖縄についての基礎知識を身につけるところから始めました。教室を6つの班に分けた時、大体6人程度の班になることから、人数分の問を設定しています。すべてを浅く広く調べるのではなく、1つを深く調べて欲しいので、1人1項目を担当させて調べ学習を実施させました。

問➀日本の米軍基地数・沖縄の基地数・面積の割合など

どの程度沖縄に集中しているのかを知ってほしくて出題した問。しかし、米軍専用の基地数か、日本との共用施設かによってデータが異なったり、面積についても、「沖縄のうち何%が米軍基地なのか」と「全体の米軍基地のうち何%が沖縄に集中しているか」の異なるアプローチがあり、複数のデータが出てきてしまいました。かけられる時間が少ない場合は、もう少し問を限定した方が、想定通りの答えに近づきやすいかもしれません。

問➁米軍基地による事故や犯罪・問題点

米軍基地に対してなぜ反対意見が出ているのかの根拠となる部分。米兵による少女暴行事件や元米兵による女性殺害事件といった事件の他に、2004年の大学ヘリ墜落事故、騒音問題、環境破壊問題、基地移設による埋め立てなどが挙げられます。

問③沖縄県民の動き(反対運動・県民投票など)

実際に起こっている運動の規模や、県民投票の結果から、沖縄県民の実態を知る問題。1996年の県民投票では、基地反対派が89%。2019年の県民投票では、辺野古移転反対が78%となり、県民の賛同が得られないまま米軍基地が運営されていることをわかってもらいたい。

問④・問⑤米軍基地がなぜ沖縄にあるか・基地の意義

このあたりの設問は割と基本的な内容であり、授業の中ですでに紹介してある場合も考えられます。その場合は、先生方がより深掘りしたいテーマを設定してもいいかもしれません。辺野古移設問題についてや、過去の政府の見解などに注目してもいいと思います。

問⑥米軍基地が日本にあるメリット

最後にアメリカ側のメリットも抑えておく必要があります。なぜ日本に基地が必要なのか?という部分をしっかり調べてもらえると、アメリカ側の主張も考えるきっかけとなるはずです。

これらの項目を調べる時間を経て、それぞれの班内で発表させます。すべての項目を1つの班で完成させるイメージです。学力や実施できる時間に合わせて、質問のレベルや量を調整するといいでしょう。

(ⅱ)それぞれの立場からの主張

沖縄在日米軍 調べ学習シートⅱ

STEP2では、基礎を身につけた上で、それぞれの立場に立って考えていきます。ネットで調べてもいいですが、(ⅰ)での情報量が充実していれば自分たちでも考えられるはずです。多面的に物事を捉える作業は、以後小論文を書く際にも必要な力となります。社会系や政治系の進路を希望している生徒であれば、そのまま小論文を書かせてもいいかもしれません。

最後にSTEP3として解決案を出させる問を設定しましたが、これは少し難しかったかもしれません。この短時間での調べ学習だけでは、情報量が足りなさすぎる気がします。想像力やアイデア力を鍛えるトレーニングとしては良いかもしれませんので、生徒の様子を見て取り組ませてみてはどうでしょうか。無人島に基地を作るといったややツッコミどころのある解答や、高齢化が進む村や過疎地域などで米兵と共存する方針を目指すなど、さまざまな案が出て面白いと思います。

もちろん、答えが出る問題ならとっくに解決している訳で、簡単なことではありません。しかし、今起きている問題を自分なりに考えていく作業は重要だと感じます。

実施した後の反省点

かかった時間

調べ学習で10分程度、グループ内の共有で10分程度
STEP2~3までしっかりやれば追加で10~20分の時間がかかります。

反省点

テーマが難しいため、ネットで調べても難しい用語が多く、なかなか正答にたどり着けない生徒もいました。質問の内容を絞っていくと、たどり着いてほしい情報をスムーズにまとめられると思います。

よかった点

内容が濃いテーマではありますが、どの質問も大切なので、グループで分担して実施できたことはよかったと思います。

よかったら試してみてください!

授業プリントについては、本サイトの「授業プリントのページ」にて掲載されています。公共プリント14「平和主義」に載っていますので、よかったら参考にしてください。質問等ありましたら、お気軽にコメント欄へお書きください。

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