このシリーズでは、単元別講義とは別に、入試によく出る部分をより深く掘り下げる記事を作成していきます。図解とともに根本的な理解ができるよう工夫していきます。今回は平和主義の範囲で登場する「存立危機事態」という語句についてピックアップしました。最後まで読んでください!平和主義を解説した記事はこちら↓

存立危機事態とは?
「存立危機事態」という言葉はややマニアックであり、その意味を正確に理解するのは難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。この言葉は、2015年に成立した安全保障関連法によって新しく導入された、日本の自衛隊が行動できる条件の一つです。「集団的自衛権」と密接にかかわる語句なので、根本的に理解しましょう!
存立危機事態を簡単に説明すると
一言でいえば、日本の平和と安全を脅かす、極めて危険な状況のことです。ただし、日本が直接攻撃された場合ではありません。以下の図を見てください。

図にあるように、「日本と非常に親しい国が攻撃され、もしその国が負けてしまうと、次に日本が攻撃される可能性が極めて高い」という状況を指します。直接攻撃されていなくとも、「日本の平和や国民の安全が根本から危険にさらされている」と判断されるときに、「存立危機事態」が認められます。
そして、この状況が起こった場合に、日本は集団的自衛権を行使して、攻撃を受けている親しい国を支援することができるようになりました。
従来の自衛権との違い
平和安全法制が成立する以前は、日本が武力を行使できるのは、日本が直接攻撃を受けた場合(「武力攻撃事態」ともいう)のみでした。これを個別的自衛権といいますが、もともと認められています。
しかし、現代の国際情勢は複雑で、他国への攻撃が間接的に日本に大きな危険をもたらす可能性が考えられます。このような状況を想定し、日本の安全を守るための手段を拡大するために、「存立危機事態」という概念が導入されました。そして、以下のような条件を満たすとき、集団的自衛権の行使が容認されるようになりました。

存立危機事態をめぐる論点
この概念の導入には、以下のような様々な議論があります。
- 憲法解釈の変更: 従来の「必要最小限度の実力行使」という憲法解釈を大きく変更した点の賛否。
- 海外での武力行使リスク: 直接攻撃を受けていない段階でも、他国の紛争に巻き込まれるリスクが高まる可能性が高まる。
- 判断の曖昧性: どのような状況が「日本の存立が脅かされる明白な危険」にあたるかの判断が、時の政権に委ねられること。
「存立危機事態」は、日本の平和主義のあり方や、国際社会における日本の役割について考える上で、非常に重要なキーワードです。自衛に関する立場は、これまで憲法の解釈を変えることで主張を変えてきました。しかし、それも現実とのギャップが大きく、限界に近付いていることは否めません。今後憲法改正の可能性もある中で、継続的な議論が求められています。
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